雑学

水をかけ合うタイの正月、ソンクラーンとは

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
水をかけ合うタイの正月、ソンクラーンとは

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ソンクラーンは水遊びの祭りではなく、タイの伝統的な正月です。毎年4月13日から15日までの3日間が祝日で、2023年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。

もとの形は、仏像や年長者の手にそっと水をそそぐ儀礼です。街じゅうの水かけ合戦は、その儀礼がにぎやかに広がった姿です。この記事では、いつ・なぜ・どう水をかけるのかを、疑問の順にたどります。

ソンクラーンはいつ?

祝日は毎年4月13日から15日です。2026年は11日と12日が週末だったため、11日から15日までの5連休になりました。地域によっては、祭りが1週間ほど続く所もあります。

名前は、サンスクリット語で「移動」「通過」を意味する語に由来します。指しているのは、太陽が十二星座の最初にあたる牡羊座に入る時期です。日付がほぼ毎年同じなのは、月の満ち欠けではなく、太陽の位置で年の区切りを決めているからです。ユネスコは、米の収穫が終わったあとの4月中旬に行われる行事と説明しています。

3日間には、それぞれ名前と役割があります。

ソンクラーンの3日間(タイの報道機関タイラットの解説をもとに作成)
日付呼び名主なこと
4月13日マハー・ソンクラーンの日(高齢者の日)太陽が牡羊座に入る日。家の掃除、仏像に水をそそぐ
4月14日ワン・ナオ(家族の日)家族で過ごす。寺へ砂を運び、砂の仏塔を作る
4月15日ワン・タルーン・ソック新しい年の始まり。托鉢、年長者に水をそそぐ儀礼

なぜ1月1日ではなく4月が正月なの?

タイの公式な元日は、いまは1月1日です。ただ、そうなったのは80年ほど前のことです。

1888年、ラーマ5世のもとで太陽暦が採り入れられ、年の始まりは4月1日になりました。その後1940年9月、首相ピブーンソンクラームが、1941年1月1日を新しい年の始まりとする決まりを出します。このため仏暦2483年(1940年)は、4月1日から12月31日までの9か月しかない年になりました。

それでもソンクラーンは祝日として残りました。人々が故郷へ帰り、家族と過ごす「暮らしの正月」であり続けたのです。制度上の元日と、暮らしの中の正月が、いまも別々にあります。

いまのソンクラーンは、宗教行事というより国民の祝日としての色が濃くなっています。ナショナルジオグラフィックが紹介する歴史家クレメンス・カールソンは、演出された遊び・地域の芝居・祭り・宗教の儀礼が混ざり合ったものだと表現しています。

本来の水はどうかけるの?

もともとの水は、勢いよく浴びせるものではありません。寺では、香りをつけた水を仏像にそそぎます。タイ国政府観光庁は、頭ではなく胴や体にかけるよう案内しています。寺へ行けなくても、ショッピングモールや商店が仏像と水の器を置いていることがあります。

家では、若い人が親や祖父母・先生の手に香りの水をそそぎ、許しと祝福を願います。この儀礼はロット・ナム・ダム・フアと呼ばれ、離れて暮らす家族が帰ってくる時期に行われます。

寺の境内では、家族や友人が砂を盛って小さな仏塔を作ります。寺に砂を返し、寺を保つのに役立てる、という意味があります。ユネスコは、水をそそぐ行為が「清め・敬意・幸運」を表すと説明しています。前の年の不運を洗い流し、新しい年の実りを願う水です。

水のほかにも、新しい年を迎える準備があります。祭りの前には家を大掃除して、過ぎた1年を洗い流します。鳥や魚を放して徳を積む人もいて、バンコク近郊サムットプラーカーン県のプラプラデーンがよく知られています。

なぜ街じゅうで水をかけ合うの?

ナショナルジオグラフィックによると、ソンクラーンは仏教の民間信仰に根ざした行事です。研究者の中には、インドのホーリー祭のようなヒンドゥー教の祭りに影響を受け、4月の米の収穫を祝う行事として発展したと考える人もいます。水を使う新年の祭りは、カンボジアやラオス、中国の一部などにもあります。

4月のタイは、暑い季節のさなかです。水を浴びること自体が心地よい時期で、儀礼としての水そそぎは、水鉄砲やバケツで浴びせ合う遊びにまで広がりました。屋台では水の入った袋や氷のバケツも売られます。

規模も大きく、ナショナルジオグラフィックは、祭りの期間にバンコクの水の使用量が1日あたり約10万立方メートル増えるという地元紙の数字を紹介しています。2024年には、水不足のため祭りを取りやめた地域もありました。

とりわけ盛大なのが、北部の古都チェンマイです。タイ国政府観光庁は、交通や宿が何か月も前から埋まると書いています。2021年には、国際フェスティバル・イベント協会(IFEA)がタイのソンクラーンを、アジアの三大祭りの1つに選びました。

水をかけるのを避けたい相手は?

はっきり決まっています。タイ国政府観光庁は、水かけを楽しむための心得を次のようにまとめています。

  1. バイクに乗っている人、僧侶、妊娠している人には水をかけない
  2. 加わりたくない人や、仕事へ向かう人を濡らさない
  3. 夕方になったらやめる(みんなが服を乾かして食事をする時間)
  4. きれいな水を使い、ケガのもとになる氷は投げない
  5. 白い粉(ディン・ソー・ポン)を塗るときは、顔と目を避け、相手の了解を得る

服装にも注意があります。タイは服装に保守的な国で、濡れると透ける薄い服や白っぽい服は避けるよう勧められています。下に水着を着ておくと安心です。

濡れても困らない持ち物は?

同じ観光庁の心得には、スマートフォン・財布・カメラをビニールで密閉しておくことや、着替えを1枚持っていくことも挙がっています。水かけの通りを歩けば、ほぼ確実に頭から濡れます。次の2点は、その備えとして選びました。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。

防水スマホケース:AZAMAR 防水スマホケース(IPX8・7.3インチ以下対応) 約750円。首から下げるストラップ付きで、ケースに入れたまま画面を操作できます。
向いている人:水かけの通りで地図や写真を使いたい人。注意:商品ページは、使う前に中身を入れずに防水テストをするよう案内しています。水没したときの補償があるかは書かれていません。

防水バッグ:BELLEMOND ドライバッグ(2L〜20L) 約1,180円から(容量で変わります)。口を3回巻いて閉じる袋で、肩かけのひもが付きます。
向いている人:財布や着替えをまとめて持ち歩きたい人。注意:防水の等級はIPX6で、水しぶきには強いものの、水に沈めて使う物ではありません。

ユネスコは何を評価したの?

ソンクラーンは2023年12月6日、ボツワナのカサネで開かれた政府間委員会で、無形文化遺産の代表一覧表に登録されました。タイからの登録は4件目です。先に登録されたのは、仮面舞踊劇のコーン(2018年)・タイ古式マッサージ(2019年)・南部の舞踊劇ノーラ(2021年)です。

ユネスコが挙げた理由は、家族の再会や、年長者・先祖への敬意を育む点です。ソンクラーンが孤独や社会からの孤立を和らげる働きをしている、という点も評価されました。行事は、親から子へ、日々の暮らしの中で口伝えに受け継がれています。日付の根拠となる暦の知識は、タイの占星術師たちも守り伝えています。

まとめ

ソンクラーンは、太陽が牡羊座に入る4月13日から始まるタイの正月です。1941年に公式な元日が1月1日へ移っても、家族が集まる祝日として残りました。水かけ合戦の根っこには、仏像や年長者の手に香りの水をそそぐ、静かな儀礼があります。

4月にタイを訪れるなら、水鉄砲を買う前に近くの寺をのぞいてみてください。仏像の胴に静かに水をそそぐ人の姿に、この祭りのもとの形が残っています。

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