科学

どんな三角形でも角度の和が必ず180度になる

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
どんな三角形でも角度の和が必ず180度になる

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紙にでたらめな三角形を描いても、3つの角を足すと180度ちょうどになります。細長くても、ゆがんでいても答えは同じです。理由は、三角形の頂点に平行線を1本引くと、3つの角が一直線の上に並ぶからです。

この決まりは約2300年前の数学書『原論』で、すでに証明されていました。ただし成り立つのは、平らな面に描いた三角形だけです。地球のような曲がった面では、和が270度になる三角形も描けます。

紙をちぎれば確かめられる

特別な道具はいりません。紙に三角形を描いて切り抜き、3つの角を1つずつちぎります。

そして、とがった部分の頂点をそろえて横に並べてください。すき間も重なりもなく、きれいな一直線になります。

まっすぐな線の角度は180度です。分度器で測らなくても、3つの角の合計が180度だと目で確かめられます。直角三角形・細長い三角形・正三角形と形を変えて試しても、結果は変わりません。分度器で測った値が1〜2度ずれても、それは線の太さや目盛りの読み方による誤差です。

平らな面に描いた三角形なら、3つの角を合わせるとどれも180度になります。大きさにも形にもよりません。

理由は平行線を1本引くこと

この証明を書き残したのは、紀元前300年ごろのギリシャの数学者ユークリッドです。数学書『原論』の第1巻には48の命題があり、その32番目がこの話です。

命題32は「三角形の1辺を延長してできる外角は、隣り合わない2つの内角の和に等しい。そして3つの内角の和は2直角に等しい」と述べます。2直角とは直角2つ分、つまり180度です。

証明の手順は次のとおりです。三角形ABCの辺BCを、Cの先のDまで延ばします。そして点Cを通り、辺ABと平行な直線CEを引きます。

  1. ABとCEは平行なので、ACが横切ってできる錯角は等しくなります。角BACは角ACEと同じです。
  2. 同じくBDが横切ってできる同位角も等しくなります。角ABCは角ECDと同じです。
  3. 点Cのまわりには、角ACB・角ACE・角ECDが並びます。この3つで直線BDの上の角になるので、合計は180度です。

3の角ACEと角ECDを、1と2で角BACと角ABCに置き換えます。すると、三角形の3つの角の和が180度になります。紙をちぎって並べた作業を、平行線で言い直したのがこの証明です。

命題32は、第1巻の中ではその後の証明に使われません。それでも、第2巻から第13巻までのうち7つの巻で、図形の性質を導く土台として何度も使われています。三角形の角の和は、ユークリッド幾何学の柱の1本なのです。

よくある誤解:「平行線は1本だけ」はユークリッドの言葉ではない

この証明の土台には、『原論』の5番目の公準、いわゆる平行線公準があります。公準は、証明せずに認めるルールのことです。

平行線公準は、よく「直線の外の1点を通る平行線は1本だけ引ける」と紹介されます。しかし、ユークリッド自身の書き方は違います。原文は、おおよそ次のような内容です。

「平行線は1本だけ」という言い方は、プレイフェアの公理と呼ばれます。スコットランドの数学者ジョン・プレイフェアが1795年の教科書で広めた形で、アイデア自体は5世紀のプロクロスにもさかのぼります。2つの言い方は、ほかの公理と組み合わせれば互いに導けますが、文として同じではありません。

そして「三角形の内角の和は180度」も、平行線公準と同じ重さを持つ言い方の1つです。片方を認めればもう片方が導け、片方を捨てればもう片方も崩れます。

曲がった面では180度にならない

平行線公準を捨てると、どうなるのか。この問いには、2000年以上も答えが出ませんでした。1733年、イタリアのサッケーリは平行線公準を捨てると矛盾が出ることを示そうとして、実は新しい幾何学の結果を積み重ねていました。ただ、それを正しい幾何学だとは認めませんでした。

答えが出たのは19世紀です。ロシアのロバチェフスキーが1829〜1830年に、ハンガリーのボヤイが1832年に、それぞれ独立に非ユークリッド幾何学を発表しました。ガウスも同じ考えに先にたどり着いていましたが、公表はしませんでした。1854年には、リーマンが球面のような幾何学を含む、より広い枠組みを示しています。

面の形と三角形の内角の和(Wikipedia・Wolfram MathWorldをもとに作成)
面内角の和例
平面ちょうど180度紙、黒板
球面180度より大きく、540度未満地球儀の上の三角形
双曲面180度より小さく、0度に近づくこともある馬の鞍のように反った面

球面の例は、地球儀で作れます。北極から経線に沿って赤道まで下り、赤道に沿って4分の1周だけ東へ進み、そこから経線をまっすぐ北極へ戻ります。できた三角形の角は3つとも直角で、合計は270度です。

180度からはみ出した分は球面過剰と呼ばれ、三角形の面積に比例します。ジラールの定理と呼ばれる関係で、球の半径をrとすると、はみ出した角度(ラジアン)は面積÷r2です。

身近な例:地球の上の三角形

ジラールの定理を地球に当てはめてみます。地球の平均半径は約6371キロメートルです。

1辺100キロメートルの大きな三角形でも、180度からのずれは1度の約160分の1しかありません。紙の上の三角形では、ずれは測れないほど小さくなります。教科書の180度は、身の回りの大きさなら事実上そのまま使えるのです。

宇宙全体についても、同じ問いが立てられます。NASAの探査機WMAPは、宇宙の空間の曲がり具合を、平らなユークリッド空間から0.4%以内に絞り込みました。いま分かっている範囲では、宇宙は大きく見てもほぼ平らです。

正三角形の性質や三角形の中心など、内角の和の先にも三角形の話はたくさんあります。図を描きながらじっくり追うなら、三角形だけをテーマにした新書が向いています。

よくある疑問

四角形や五角形の内角の和は、いくつですか?
四角形は360度、五角形は540度です。n角形は対角線でn−2個の三角形に分けられるので、内角の和は180度×(n−2)になります。『原論』の注釈を書いたプロクロスも、命題32から導ける系としてこの関係を挙げています。
外角の和はどうなりますか?
へこみのない多角形なら、何角形でも360度です。これもプロクロスが命題32の系として示しています。多角形の周りを1周歩くと、曲がった角度の合計がちょうど1回転になる、と考えると覚えやすい関係です。

まとめ

三角形の内角の和が180度になるのは、平行線を1本引くと3つの角が一直線に並ぶからです。この証明は約2300年前の『原論』第1巻命題32にあり、土台には平行線公準があります。

平行線公準を捨てると、内角の和が180度より大きい球面の幾何学や、小さい双曲面の幾何学が生まれます。地球儀と糸が手元にあれば、北極と赤道を結んで直角3つの三角形を作ってみてください。教科書の180度が「平らな面かぎり」の話だと、手を動かすとすぐに納得できます。

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