雑学

子どもの深夜ゲームを止める法律があった?韓国のルール

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
子どもの深夜ゲームを止める法律があった?韓国のルール

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韓国には2011年から10年間、16歳未満の子どもが深夜にオンラインゲームへ接続できなくなる法律がありました。午前0時でゲームが切れることから「シンデレラ法」とも呼ばれた、通称「シャットダウン制」です。

この制度は2021年の年末で廃止され、本人や保護者が遊ぶ時間を選ぶ仕組みに置き換わりました。韓国の2つの制度を比べ、さらに中国と日本の香川県のルールと並べると、子どものゲーム時間を「だれが決めるか」の違いが見えてきます。

午前0時に切れるゲーム

シャットダウン制は、青少年保護法の改正として2011年5月に公布され、同じ年の11月20日に施行されました。担当したのは、青少年の保護を受け持つ女性家族部です。

中身は単純でした。16歳未満は午前0時から6時までの6時間、パソコン向けのオンラインゲームに接続できません。ゲーム会社は会員登録のときに年齢を確かめ、時間になったら接続を止める必要がありました。仕組みを作る手間と費用を負ったのは、遊ぶ側ではなく会社の側です。

背景には、深夜までゲームを続ける子どもの睡眠不足と、のめり込みを心配する保護者の声がありました。ゲーム会社側は憲法違反だと訴えましたが、2014年4月24日、憲法裁判所は規制を合憲と判断しています。ゲームへの過度な依存は健康を損なうおそれがあり、保護者の権利も無制限ではない、という理由でした。

韓国には「選べる」制度も並んでいた

実は韓国には、もう1つの仕組みがありました。文化体育観光部が2012年7月1日に本格的に始めた「ゲーム時間選択制」です。同じ年の6月に1か月の試行期間を置いています。

こちらは一律に止めるのではなく、本人や保護者が申し出た時間だけ接続を止めます。平日の夜は遊ばない、テスト前の週は控える、といった決め方ができるわけです。同じ国で、同じ子どものゲームについて、性格の違う2つのルールが約10年並んでいました。

韓国の2つの制度の比較(各国報道・韓国政府の発表をもとに作成)
項目シャットダウン制ゲーム時間選択制
始まり2011年11月20日2012年7月1日
担当の役所女性家族部文化体育観光部
対象16歳未満18歳未満
止まる時間午前0時〜6時に一律本人や保護者が選んだ時間
決めるのは法律本人と家族
その後2021年12月31日で廃止廃止後の中心の仕組みに

表の「決めるのは」の行が、2つの違いをよく表しています。シャットダウン制は家庭の事情に関係なく線を引き、選択制は線を引く役目を家庭に預けました。2014年9月からは、シャットダウン制にも保護者が申請すれば解除できる例外が設けられています。強制の制度も、少しずつ家庭の判断を取り込んでいったことになります。

パソコンだけ止めても、遊びは手元へ移った

シャットダウン制の弱点は、対象がパソコンのオンラインゲームに限られていたことです。韓国政府の「2019大韓民国ゲーム白書」によると、2018年の国内ゲーム市場は約14兆2900億ウォン。そのうちモバイルゲームが46.6%、パソコンゲームが35.1%を占めていました。モバイルがパソコンを上回ったのは2017年が初めてです。

つまり施行から数年で、深夜に止めるはずの遊び方が、規制の外にあるスマートフォンへ移っていきました。親の身分証の番号を借りたり、海外のアカウントを作ったりして、規制をすり抜ける子どもがいたことも報じられています。

効き目を数字で確かめた研究もあります。2018年に医学誌「Journal of Adolescent Health」に載った延世大学などの研究は、2011年から2015年の青少年健康行動調査のデータを使い、規制の対象だった年齢層とそれ以外を比べました。ネットの利用時間は施行直後に減ったものの、その差は年を追うごとに薄れました。ネット依存の割合と睡眠時間には、意味のある変化は見つかっていません。

中国と香川県のルールと比べる

子どものゲーム時間に線を引いた例は、韓国のほかにもあります。中国では2019年の通知で、18歳未満のゲーム時間を祝日は1日3時間、それ以外の日は1時間半までとしました。2021年8月30日には国家新聞出版署がさらに締め付け、9月1日から未成年者がオンラインゲームで遊べるのは金・土・日曜と祝日の午後8時から9時の1時間だけになりました。実名での登録とログインも、すべてのゲームに義務づけられています。

日本では香川県が「ネット・ゲーム依存症対策条例」を作り、2020年4月1日に施行しました。18歳未満のゲームは1日60分(学校が休みの日は90分)まで、スマートフォンの使用は中学生以下が午後9時まで、それ以外の子どもは午後10時までを「目安」としています。

子どものゲーム時間をめぐる3つのルール(各政府・自治体の資料と報道をもとに作成)
項目韓国中国日本・香川県
期間2011〜2021年2021年9月〜2020年4月〜
決まりの形法律(青少年保護法)国の役所の通知県の条例
対象16歳未満18歳未満18歳未満
中身深夜6時間、パソコンのゲームに接続できない週末と祝日の夜1時間しか遊べない1日60分、夜9時か10時までが目安
守る役目ゲーム会社(法律上の義務)ゲーム会社(通知による義務)保護者(努力義務・罰則なし)

並べると、強さの差がはっきりします。いちばん強いのは中国のルールです。遊べる時間そのものを、祝日のない週なら3時間に絞っています。韓国は禁止する時間帯を決め、香川県は家庭への目安を示すにとどめました。

違いは「だれに守らせるか」

3つのルールの差は、時間の長さより、守る役目をだれに負わせたかにあります。韓国と中国はゲーム会社に止めさせる方式です。確実に効く反面、韓国では年齢確認のすり抜けや対象外の機器への移動が起きました。香川県の条例は保護者の努力義務で、罰則はありません。家庭の事情に合わせやすい一方、守られているかを確かめる手段もありません。

その代わり香川県の条例は、効果を確かめる仕組みを条文に入れています。施行後3年間は毎年、その後は2年ごとに県が子どものネット・ゲーム依存の実態を調べると定めました。附則では、施行から2年をめどに見直しを検討するとしています。韓国の研究が示したように、ルールは作っただけでは効いたか分かりません。数字で追い続ける仕組みは、どの方式を選んでも欠かせません。

韓国が最後に選んだのは、選択制に一本化する道でした。2021年11月、国会が青少年保護法の改正案を可決し、シャットダウン制は12月31日の深夜で終わりました。韓国の女性家族部は、廃止にあわせて、ゲームとの付き合い方を学ぶ教育の場を増やすと説明しています。止める仕組みより、使い方を身につける支えに力を移したわけです。

ゲームへののめり込みが心配なとき、家でどう声をかけ、どこで線を引くか。制度の比較では分からない、こうした具体的な対応は、子どもの依存の相談を受けてきた専門家の本のほうが詳しく書いています。

10年の実験が残したもの

韓国のシャットダウン制は、法律で深夜のゲームを一律に止める試みでした。10年続けた結果、パソコンを止めても遊びはスマートフォンへ移り、睡眠時間にもはっきりした効果は出ませんでした。そして韓国は、遊ぶ時間を本人と家族が選ぶ形に落ち着いています。

家庭でゲームの時間を決めるなら、表の香川県の目安(1日60分)や、韓国の選択制のように「どの時間帯は遊ばないか」を子どもと一緒に書き出すところから始めてみてください。ルールが続くかどうかは、決めた本人の納得で変わります。

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