人類が掘った金は、全部でプール数杯分しかない
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人類がこれまでに掘り出した金は、およそ22万2600トンです。重さだけ聞くと膨大ですが、すべて溶かして1つの塊にすると、一辺22.6メートルほどの立方体にしかなりません。競泳用の50メートルプールに換算すれば、4杯半ほどの量です。
数千年ものあいだ金が高い値打ちを保ってきた理由は、この少なさにあります。この記事では地上の金の量とその行き先、毎年掘られる量と地下に残る量を数字で順に見ていきます。
全部集めても一辺22.6メートル
金の統計をまとめているワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、有史以来掘り出された金は、2026年6月末時点で約22万2600トンです。その価値は約29兆ドルにのぼります。
この量を、身近な大きさに置き換えると次のようになります。
- 重さ: 約22万2600トン
- 体積: 約1万1500立方メートル
- 1つの立方体にすると: 一辺約22.6メートル
- 50m×25m×深さ2mのプールなら: 約4.6杯分
一辺22.6メートルは、ビルの7階ほどの高さです。世界中の指輪も延べ棒も、すべてこの箱1つに収まる計算になります。
1人あたりに直すと、さらに身近な量になります。国連によると、2024年の世界人口は約82億人。地上の金を全員で等しく分けると、1人あたり約27グラムです。体積にすれば約1.4立方センチメートルで、一辺1.1センチほどのサイコロ1個分にしかなりません。金額にすると、1人あたり約3500ドルです。
しかも、その量の大半は最近のものです。WGCによれば、掘り出された金の約3分の2は1950年以降に掘られました。人類が金を掘ってきた数千年のうち、最後の70年余りで大半が積み上がったことになります。
少なく見えるのは、金が重いから
金は1立方センチメートルあたり19.3グラムという、とても密度の高い金属です。鉄のおよそ2.5倍、水の19倍以上の重さがあります。
500ミリリットルのペットボトルに金を詰めれば、それだけで約9.7キログラムになります。1トンの金でも、一辺37センチほどの箱に収まってしまいます。
「22万トン」という重さと「プール4杯半」という見た目が食い違って感じられるのは、量が少ないからではありません。同じ重さでも、金がほとんど場所を取らないからです。
地上の金はどこにあるか
金はさびず、腐らず、何度溶かしても性質が変わりません。そのため古代に掘り出された金の多くが、形を変えながら今も地上に残っています。WGCの集計では、その内訳は次のとおりです。
| 用途 | 量 | 割合 |
|---|---|---|
| 宝飾品 | 約9万9700トン | 45% |
| 地金・金貨 | 約4万7800トン | 21% |
| 各国の中央銀行 | 約3万9000トン | 18% |
| 店頭取引(OTC) | 約1万トン | 4% |
| 金のETF | 約4000トン | 2% |
| その他(産業用など) | 約2万2100トン | 10% |
いちばん多いのは宝飾品で、ほぼ半分を占めます。地金・金貨・ETF・店頭取引を合わせた投資用の金は約6万2000トンで、全体の27パーセントです。中央銀行の分まで加えると、約10万トンになります。
「その他」には工業製品の中の金が含まれます。米国地質調査所(USGS)によると、金は電気をよく通し錆びにくい金属です。そのためコンピューターや通信機器、宇宙船、ジェット機のエンジンで重要な役割を果たしています。
ただ、年ごとの使い道で見ると工業用は多くありません。ETFなどを除く世界の金の消費(USGS推計)は、宝飾品が40パーセントで最多です。続いて地金が24パーセント、中央銀行などが21パーセントです。電気・電子機器は7パーセントにとどまります。
国が持つ金の例も挙げておきます。米国財務省の保有量は8130トン。体積にすると約420立方メートルで、一辺7.5メートルほどの立方体に収まります。
日本の家電や携帯電話の中に眠る金も少なくありません。物質・材料研究機構(NIMS)は2008年、国内に蓄積された金を約6800トンと試算しました。当時の世界の埋蔵量4万2000トンの約16パーセントにあたる量で、こうした蓄積は「都市鉱山」と呼ばれています。
毎年掘られるのは一辺5.7メートル分
WGCによると、2025年に鉱山から掘り出された金は約3672トンでした。体積にすると約190立方メートルで、一辺5.7メートルほどの立方体です。地上にある金全体の60分の1ほどが、毎年新しく加わっています。
同じ年には、溶かして再利用された金が約1404トン市場に戻りました。合計の供給量は約5002トンで、そのうち約28パーセントがリサイクルです。掘るだけでなく、使い回す量も大きな柱になっています。
買う側を見ると、2025年は投資の勢いが目立ちました。WGCによると、中央銀行が863トンを買い増しました。金のETFには801トン、地金・金貨には1374トンが流れ込んでいます。中央銀行の買い増しだけで、1年分の採掘量の約4分の1にあたります。2026年1月には、金価格が初めて1トロイオンス(約31.1グラム)あたり5000ドルを超えました。
| 順位 | 国 | 産出量 | 埋蔵量 |
|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 380トン | 3200トン |
| 2 | ロシア | 310トン | 1万2000トン |
| 3 | オーストラリア | 280トン | 1万3000トン |
| 4 | カナダ | 200トン | 3200トン |
| 5 | アメリカ | 160トン | 3000トン |
USGSの推計では、2025年の世界の産出量は約3300トンです。WGCの数字と差があるのは、集計の方法が違うためです。上位5か国で、世界の産出量の約41パーセントを占めます。
産出量と埋蔵量の並びが一致しない点にも注目です。埋蔵量はオーストラリアの1万3000トンとロシアの1万2000トンが抜けていて、産出量1位の中国は3200トンにとどまります。今の産出量で単純に割ると、中国は約8年分、オーストラリアは約46年分です。
では、地下に残る量は何トンほどでしょうか。今の技術と価格で採算が取れると確認された埋蔵量は、WGCが約6万1000トン、USGSが約6万6000トンとしています。毎年の産出量で割ると、およそ16〜20年分です。
よくある疑問
- 20年ほどで金は掘り尽くされるのですか?
- すぐには尽きません。埋蔵量は「今の価格と技術で採算が取れる量」なので、金価格が上がったり技術が進んだりすると増えます。WGCは、まだ採算の確認されていない分も含めた資源量を約11万4400トンとしています。ただし、地上の量に比べて地下に残る量が限られていることは変わりません。
- 金は地球のどこで生まれたのですか?
- 地球の中でつくられたものではありません。米国エネルギー省(DOE)によれば、金や白金、ウランのような重い元素は中性子星どうしの合体や超新星爆発で生まれます。中性子が大量に飛び交う環境で、原子核が中性子を次々に取り込むためです。地球にある金は、太陽系ができる前の宇宙でつくられた材料が集まったものです。
まとめ
人類が掘った金は約22万2600トン。重さは大きく聞こえますが、体積にすれば一辺22.6メートルの立方体、プール4杯半ほどです。毎年加わるのは一辺5.7メートル分で、地下に確認されている分も、今の地上の量の3割に届きません。
金価格のニュースを見かけたら、その数字の裏に「プール4杯半」という量があることを思い出してみてください。値打ちの正体が、ぐっと身近に見えてきます。
参考にした資料
- World Gold Council — How much gold has been mined?
- U.S. Geological Survey — Gold Statistics and Information
- U.S. Department of Energy — DOE Explains...Nucleosynthesis
- World Gold Council — Gold Demand Trends Full Year 2025: Supply
- U.S. Geological Survey — Mineral Commodity Summaries 2026: Gold
- 物質・材料研究機構(NIMS) — Japan's "Urban Mines" are Comparable to the World's Leading Resource Nations
- United Nations — World Population Prospects 2024 press release
- World Gold Council — Gold investment rockets in 2025, setting a new high as uncertainty bites