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世界一のエベレストが今も高くなり続けている理由

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
世界一のエベレストが今も高くなり続けている理由

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エベレストの標高は8848.86メートルです。2020年12月8日にネパールと中国が共同で発表した数字で、山は今も1年に数ミリずつ高くなっています。

押し上げているのは、地下でぶつかり続けるプレートと、近くを流れる1本の川です。この記事では、測量の歴史から伸びる速さまで、エベレストの高さを数字で追います。

8848.86メートルに決まるまで

エベレストの高さは、170年以上かけて何度も測り直されてきました。ネパールの英字紙カトマンズ・ポストが、おもな値をまとめています。

エベレストの標高の移り変わり(The Kathmandu Post の記事をもとに作成)
年測った機関標高
1847年イギリスの測量隊8,778メートル
1849〜1855年インド測量局8,839.80メートル
1954年インド測量局8,848メートル
1975年中国8,848.11メートル
1999年アメリカのGPS測量8,850メートル
2005年中国(岩の高さ)8,844.43メートル
2020年ネパール・中国の共同発表8,848.86メートル

表に載せなかった値もあります。1987年にイタリアが衛星で測った8,872メートルは、疑問が出て定着しませんでした。1999年のアメリカの8,850メートルには、プラスマイナス2メートルの幅がありました。中国の登山許可証の表記も、2007年は8,844.57メートル、2016年は8,848.13メートルと変わっています。

1847年の時点では、まだ「ピーク15」という番号で呼ばれていました。長く使われたのは、1954年にインド測量局が出した8,848メートルです。ネパールはこの値を使い続けました。

数字が割れた大きな理由は、頂上の雪と氷を高さに含めるかどうかです。中国は2005年に、氷を通り抜けるレーダーで雪の下の岩を測り、8,844.43メートルと発表しました。ネパールの8,848メートルは、雪の表面までの高さです。

2020年12月8日、ネパールのギャワリ外相と中国の王毅外相が、カトマンズと北京で同時に新しい値を発表しました。科学ニュースサイトのScienceAlertによると、8,848.86メートルは頂上の雪と氷まで含めた高さです。ネパールが使ってきた値より86センチ高く、中国の2005年の値より4メートル以上高くなりました。

共同発表は、2019年10月に中国の習近平国家主席がネパールを訪れた際に決まったものです。2つの国の境に立つ山の高さが、ようやく1つの数字にそろいました。

頂上で1時間16分、衛星の電波を受けた

ネパールが測り直しを急いだのは、2015年の大地震で高さや位置が変わったのでは、という憶測が広がったからです。計画は2011年に発表されましたが、政治の混乱や資金不足で止まり、2017年にようやく始まりました。

ネパールの測量隊は、キム・ラル・ゴータムさんの率いる隊が2019年5月22日に頂上へ立ちました。作業は5種類です。

頂上では衛星測位の受信機で1時間16分データを集め、地中レーダーで雪の厚さも調べました。中国の測量隊は2020年5月27日に登頂し、独自の測位衛星「北斗」を使っています。ネパール側の担当者は、精度は数センチの範囲だと述べています。

プレートが押し上げる、年に数ミリ

山が伸びる一番の理由は、インドプレートがユーラシアプレートにぶつかり続けていることです。米国地質調査所(USGS)によると、2つのプレートは年に40〜50ミリずつ近づいています。そのうち約18ミリぶんが、ヒマラヤを押し上げる力になっています。

エベレスト自身の動きも測られています。USGSによると、山は1年に約4センチ北東へ動き、約3ミリ高くなっています。2005年に中国の研究者が頂上に設置した衛星測位の受信機が、こうした動きを記録してきました。

一方、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマシュー・フォックスさんは、GPSの観測で周辺の山が年に約2ミリずつ高くなっていると述べています。測った期間や方法が違うため、数字には幅があります。どちらにしても、伸びる速さは年に数ミリの単位です。100年続けば、数十センチになります。

エベレストとヒマラヤの動きを数字で見る(USGS・Sci.News などをもとに作成)
項目数字
インドとユーラシアのプレートが近づく速さ年に40〜50ミリ
そのうちヒマラヤを押し上げる分年に約18ミリ
エベレストが北東へ動く速さ年に約4センチ
エベレストが高くなる速さ(USGS)年に約3ミリ
周辺の山が高くなる速さ(GPS・フォックスさん)年に約2ミリ
2015年の地震で動いた量南西へ約3センチ(高さは変わらず)

川が押し上げた、15〜50メートル

エベレストには、もう1つ不思議な点があります。周りの高峰より飛び抜けて高いことです。2位のK2は8,611メートル、3位のカンチェンジュンガは8,586メートルで、差は25メートルしかありません。ところがエベレストは、K2より約240メートルも高いのです。

2024年9月30日、中国地質大学(北京)とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが、科学誌『Nature Geoscience』にその理由の一案を発表しました。鍵は、エベレストから約75キロ東を流れるアルン川です。

アルン川は、ヒマラヤの高い山並みを横切って流れる珍しい川です。フォックスさんは、この川がなぜ最も高い山脈を切って流れるのか、人々は100年も不思議に思ってきたと話しています。アルン川の谷は隣の川より急で、比較的新しい谷だと考えられています。

チームの計算では、約8万9000年前、アルン川が別の川の流れを奪う「河川争奪」を起こしました。水の量が増えた川は谷を深く削り、大量の岩を運び去ります。上に載っていた重さが減ると、地殻はゆっくり浮き上がります。この働きで、エベレストは15〜50メートル高くなったと見積もられています。

ただし、異論もあります。ポツダム大学のペーター・ファン・デル・ベークさんは、川の流れが変わった時期の推定は単純なモデルに頼っていると指摘しました。山の隆起と浸食の長い期間の速さはよく分かっておらず、直接の観測は数十年分しかないからです。

プレートがぶつかって山ができる流れや、地殻が浮き上がる仕組みは、図で追うと理解が早い話です。山の高さを地球全体の動きから考えたいなら、プレートテクトニクスの入門書が手がかりになります。

よくある疑問

2015年のネパール地震で、エベレストは低くなったのですか?
USGSの結論では、低くなっていません。マグニチュード7.8の地震で、エベレストは南西へ約3センチ動きましたが、高さは変わりませんでした。一方、ファン・デル・ベークさんによると、この地震ではヒマラヤの多くの峰が約1メートル低くなりました。大きな地震は、長い目で見ると山の高さにも関わります。

まとめ

エベレストの標高8848.86メートルは、雪と氷まで含めた高さで、2020年にネパールと中国が共同で発表しました。山はプレートに押されて年に数ミリずつ伸び、約8万9000年前の河川争奪で15〜50メートル持ち上げられたという説もあります。

伸びる速さが年3ミリなら、100年後には約30センチ高くなる計算です。次に「世界最高峰8848メートル」という数字を見たら、それが今の時点の値であることを思い出してみてください。

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