木の葉はなぜ緑?葉緑素のしくみ
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葉が緑に見えるのは、葉緑素(クロロフィル)が赤と青の光を強く吸い、緑の光を吸いにくいからです。吸われずに葉の外へ漏れ出た緑の光が、目に届きます。
ただし「緑はまったく使われていない」わけではありません。ふつうの葉は、赤や青の光の約90%に対して、緑の光も70〜80%を吸収しています。葉の色を、数字で順に見ていきます。
葉緑素が吸う光の数字
人の目に見える光は、波長がおよそ400〜700ナノメートルの範囲です。短い側が青紫、長い側が赤で、そのあいだに緑や黄があります。
葉緑素にはaとbの2種類があり、それぞれ吸いやすい波長が決まっています。溶かした液で測った吸収のピークは、次のとおりです。
| 色素 | 青い側のピーク | 赤い側のピーク |
|---|---|---|
| クロロフィルa | 約430ナノメートル | 約662ナノメートル |
| クロロフィルb | 約453ナノメートル | 約642ナノメートル |
どちらも、2つの山のあいだに深い谷があります。500〜600ナノメートル付近、つまり緑から黄の光です。溶かした葉緑素はこの光をあまり吸わないので、液は鮮やかな緑に見えます。
葉緑素は、葉の細胞にある葉緑体という器官に詰まっています。分子の形は、中心にマグネシウム原子を1個抱えた構造です。クロロフィルaの化学式はC55H72MgN4O5で、炭素だけで55個あります。研究の歩みも、数字で並べるとよく分かります。
- 1817年:フランスのペルティエとカヴァントゥが、葉から緑の色素を取り出して名づける
- 1906年:葉緑素にマグネシウムが見つかる。生き物の体からマグネシウムが見つかった最初の例
- 1940年:ドイツのハンス・フィッシャーが、クロロフィルaの大まかな構造を明らかにする
- 1960年:アメリカのウッドワードが、人工的に合成した結果を発表する
名前の由来は、ギリシャ語の「緑」と「葉」です。名づけから構造の解明まで、120年あまりかかりました。
葉は緑の光も7〜8割吸っている
よく「葉緑素は緑の光を使わない」「葉は緑をはね返す」と説明されます。これは、溶かした葉緑素の話としては正しい説明です。ところが、生きた葉の中では事情が変わります。
東京大学の寺島一郎教授の解説によると、ふつうの緑の葉は、赤や青の光を約90%吸収します。緑の光も、70〜80%ほど吸収しています。差は10〜20ポイントほどしかありません。
差が小さくなるのは、葉の中の構造のためです。赤や青の光は葉緑素に強く吸われるので、多くが表側の柵状組織で吸収されます。緑の光は吸われにくいぶん、葉の奥まで入り込みます。そして裏側の海綿状組織で、細胞にぶつかって向きを変えながら行き来し、葉緑体に何度も当たって少しずつ吸われていきます。
それでも、行き来するうちに外へ漏れ出る光には、緑が多く残ります。さらに人の目は、緑の光にいちばん敏感です。そのため、実際にはかなり吸われているのに、葉は「緑を使っていない」ように見えます。吸収された緑の光が光合成を進める効率は、青い光より高く、赤い光と同じくらいとされます。
緑を少し残すのにも理由がある
では、葉が全部の光を吸う黒色でない理由は何でしょうか。手がかりになる数字が2つあります。
1つ目は、光合成の酵素ルビスコです。二酸化炭素を取り込む役目ですが、働きが遅く、たくさん用意しないと間に合いません。しかも二酸化炭素の代わりに酸素を取り込む失敗も起こし、その後始末にもエネルギーを使います。寺島教授によると、ルビスコは葉のタンパク質の30〜50%を占めることもあります。大量の酵素に光のエネルギーを行きわたらせるには、葉緑体を薄く広げ、葉の奥まで光を届ける必要があります。奥まで入り込める緑の光は、その役に立っています。
2つ目は、太陽の光の強さです。2016年、九州大学と筑波大学の研究グループが、太陽から直接届く光と空から届く光を分けて測りました。晴れた日に直接届く光は、550ナノメートル付近の緑がいちばん強くなります。葉緑体の光を吸う仕組みは、この最も強い緑を避けるように組み立てられていました。葉緑体のレベルで比べると、直接届く光の吸われ方は、空から届く光より1割以上小さくなっていました。強すぎる光を吸って熱をため込まないための性質と考えられています。
この測定は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国立環境研究所、高層気象台との共同研究です。イネとミズナラの葉でも、同じ傾向が確かめられました。同じ研究は、葉全体としては、緑も含めてすべての色を効果的に使えていることも示しました。緑を「捨てている」のではなく、強い光は避けつつ、葉の奥で拾い直していることになります。
秋に色が変わる3つの色素
葉の色を決める色素は、主に3つです。秋の色づきは、この3つの増え減りで説明できます。
| 色素 | 色 | 秋の動き | 代表的な木 |
|---|---|---|---|
| クロロフィル | 緑 | 分解されて減る | (夏の葉の色) |
| カロテノイド | 黄 | 夏からあり、緑が抜けると見える | イチョウ |
| アントシアン | 赤 | 秋に新しく作られる | モミジ |
黄色は、もともと葉にあった色です。夏のあいだは緑が濃すぎて見えず、葉緑素が分解されると表に出てきます。
赤は成り立ちが違います。森林総合研究所の解説によると、古くなった葉の付け根に離層という仕切りができ、葉と枝のあいだで物が行き来しにくくなります。葉にたまった糖などを材料に、赤いアントシアンが作られます。日本植物生理学会の解説では、アントシアンがたまり始めるのは、葉緑素が減るよりも前です。晴れた日の強い日ざしと、凍らない程度の低温が重なると、赤みが進むとされます。
カキノキの葉は、緑と赤と黄がまだらになることがあります。3つの色素が、1枚の葉の中にそろって見える例です。
なぜわざわざ赤を作るのかは、まだ決着していません。有力な説の1つは、弱った葉を強い光から守るためです。柵状組織にたまったアントシアンが青から緑の光を吸い、葉緑体に届く光を減らします。ハナミズキの実験では、赤くならない黄色の葉の葉緑体のほうが、光で傷みやすいと示されました。
光合成の詳しい流れや、ルビスコが二酸化炭素を取り込む仕組みは、図で追うほうが分かりやすい話です。葉の中で光がどう使われているかを順に知りたいなら、光合成を扱う新書が役に立ちます。
よくある疑問
- 同じ木でも、色づく葉と緑のままの葉が残る理由は何ですか?
- 赤い色素を作るには光が必要だからです。日本植物生理学会の解説によると、紅葉は日の当たる側から先に進みます。木の南側と北側、外側と内側を見比べると、日当たりの差が色の差として表れます。
- 常緑樹の葉は、色が変わらないのですか?
- 変わる葉もあります。森林総合研究所の解説によると、常緑樹のモッコクでは、1年中どこかの枝に赤や黄の葉が見られます。カナメモチの新しい葉が赤いのも、紅葉と同じアントシアンによるものです。この赤は、紫外線から若い葉を守る役目があると考えられています。
まとめ
葉緑素は、約430ナノメートルの青と約662ナノメートルの赤を強く吸い、そのあいだの緑を吸いにくい色素です。ただし生きた葉の中では、緑の光も70〜80%が吸われ、光合成に使われています。葉が緑に見えるのは、それでも漏れ出る光に緑が多く、人の目が緑に敏感だからです。
秋になったら、同じ木の日なた側と日陰側を見比べてみてください。赤の濃さの違いは、そのまま日当たりの違いです。
参考にした資料