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縁起の悪い数字は国によって入れかわるという話

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
縁起の悪い数字は国によって入れかわるという話

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数字の縁起は世界共通ではありません。日本で避けられるのは四と九です。中国語圏や韓国では4、英語圏では13、イタリアでは17が嫌われます。同じ9や13が、国が変われば縁起の良い数になることさえあります。

しかも13を不吉とする考えは意外に新しく、由来としてよく語られる説には裏づけがありません。数字そのものではなく、その土地の言葉と歴史が「不吉」を決めています。

嫌われる数字を国ごとに比べる

まず、どの国でどの数が避けられ、どう避けられているかを並べます。

地域ごとの「不吉な数」と避け方(各資料から作成)
地域避ける数理由避け方の例
日本4・9(42・49)「死」「苦」と同じ音車のナンバーの下2桁で42と49を割り当てない。病院や集合住宅で部屋番号を飛ばす
中国語圏4「死」とほぼ同じ音ビルの4階を飛ばす。香港には40〜49階をまとめて飛ばす建物もある
韓国4「死」とほぼ同じ音病院や葬儀場で4階・4号室を飛ばす。エレベーターで4階を「F」と表示
マレーシア4中国語の発音から4階を「3A」と呼ぶ
アメリカなど英語圏13はっきりした起源はない13階を「12A」「14」、または13番目のアルファベット「M」と表示
イタリア17XVIIを並べかえると「VIXI(私は生きた)」アリタリア航空の機内で17列目を欠番にする

日本で四と九が避けられるのは、音が「死」と「苦」に通じるからです。連想は一けたにとどまりません。42は「死に」、49は「死苦」と読めます。

車のナンバーでは、下2桁の42と49がふつうの割り当てから外されています。全国自動車標板協議会によれば、欠番は通達などで決まっており、理由は明記されていません。希望ナンバー制度で申し込めば取れるので、「46-49(ヨロシク)」のような番号は実在します。用途を表すひらがなでも「し」は使われず、死を連想させるためと説明されています。

おもしろいのは、日本のナンバーで13が欠番になる場面もあることです。下2桁の13は、日本に駐留する軍人・軍属の私用車にあたる番号で使われていません。

英語圏の13階を飛ばす習慣も根強く、エレベーター大手オーチス社の担当者は2002年に、同社のエレベーターを使う対象のビルの85%に「13階」がないと見積もっています。2007年のギャラップ社の調査では、アメリカの成人の13%がホテルの13階の部屋は気になると答え、9%は別の階を頼むと答えました。

建物の外でも、4は気をつかわれます。携帯電話のノキアは、アジアの利用者への配慮から4で始まる版を避けたと伝えられます。カナダのサスカチュワン州の電話会社は、新しい市外局番に474ではなく639を求めました。台湾と韓国の海軍は艦船の番号に4を使いません。一方、中国軍は「東風4」というミサイルの名前に平気で4を使っています。アメリカのラスベガスにも、40〜49階を飛ばすホテルがいくつかあります。

理由が意味ではなく音にある点は、東アジアの4に共通しています。西洋で13階を飛ばすのと、やっていることは同じです。

国が変われば縁起物になる

不吉な数の裏返しを見ると、言葉の影響がもっとはっきりします。

日本で「苦」に通じる9は、中国語では「久(長く続く)」と同じような音です。そのため結婚式で好まれ、昔は皇帝と結びつく数でもありました。皇帝の衣には9匹の竜がよく描かれています。

英語圏で嫌われる13も、広東語では「確実に生きる」に似た音になり、縁起の良い数とされます。同じ数字でも、聞こえる言葉が変われば評価は逆転します。

中国語圏で最も好まれるのは8です。「発(栄える)」に音が近いからです。2008年の北京オリンピックは、8月8日の午後8時8分8秒に開会式を始めました。2003年には、「8888 8888」で終わる電話番号が233万元(約28万ドル)で四川航空に売れています。

反対に、上海には4階・13階・14階をすべて飛ばしたエレベーターもあります。4を嫌う中国の習慣と、13を嫌う西洋の習慣が一つの建物で重なった例です。

不吉な日も国ごとに違う

数と曜日が組み合わさると、不吉な日の顔ぶれもまた国ごとに変わります。

地域ごとの「不吉な日」(NPR系列局KNKXの記事などから作成)
地域不吉な日よく語られる理由
英語圏13日の金曜日金曜はキリストが十字架にかけられた曜日。13は由来不明
スペイン語圏13日の火曜日火曜日(martes)が戦いの神マルスに通じるという推測がある
イタリア17日の金曜日聖金曜日の金曜と、VIXIと読める17の組み合わせ

「最後の晩餐に13人いたから」「テンプル騎士団が13日の金曜日に処刑されたから」。13についてよく語られる説ですが、アメリカ議会図書館の民俗学者スティーブン・ウィニックは、専門家にもそれが事実かどうか分からないと述べています。

民俗学の研究者モイラ・マーシュによれば、13を不吉とする考えが記録に現れるのは17世紀ごろ。それ以前はむしろ、良い数とみなされることもありました。13日の金曜日を不吉とする記録はさらに新しく、イギリスで印刷物に初めて現れるのは1913年です。ウィニックが見た最も古い例はフランスのもので、1834年の芝居に「13日の金曜日に生まれたことが不幸の始まり」という意味のせりふがあります。

13の不吉さは、由来が後から語り足されてきた俗説です。とくに13日の金曜日が不吉の代名詞になったのは、ここ100年ほどのことです。

「4」への恐れは統計に現れたのか

2001年、カリフォルニア大学サンディエゴ校のフィリップスらが、1973年から1998年までのアメリカの死亡票を調べました。中国系・日系アメリカ人約21万人分の死亡を見ると、慢性心疾患による死亡が毎月4日に13%多く、カリフォルニア州に限ると27%多くなっていました。

白人約4,700万人分の死亡には、同じ偏りがありません。研究チームは、心理的ストレスが死期に影響する例だと報告しました。論文の題名は、恐怖で心臓発作を起こす人物が出てくるコナン・ドイルの小説『バスカヴィル家の犬』にちなんでいます。

ただし、この結果で決着がついたわけではありません。翌2002年、医療統計の研究者ロバート・ニューカムが反論を寄せています。

1か月28日分を並べて比べれば、その中で最大の差が出る日は当然あります。日数の多さを補正すると4日の結果はぎりぎり有意で、特別に珍しいとは言えない、という指摘です。研究チームは「4日の山は事前に予想していたので補正は要らない」と応じました。別の研究者からは「死亡が少ない日もあるなら、縁起の良い日の効果はないのか」という問いも出ました。チームは、12日・20日・26日の低い値は統計的に意味のある差ではないと答えています。恐れが体に影響するかどうかは、いまも議論の途中にあります。

欠けた階は土地の言葉を映す

数字そのものに力はありません。「四」が「死」に聞こえる言語でだけ四は不吉になり、XVIIをVIXIと読める文化でだけ17が避けられます。13ですら、広東語の中では縁起物です。

避け方には実害もあります。ロシアの住宅の研究では、13階の部屋は12階や14階より売れにくく、その差は10%以上値引きすると消えました。迷信が値段にまで表れる例です。

旅先のエレベーターで欠けている階を見つけたら、その土地が何を怖がってきたかの手がかりです。ボタンが「F」なら韓国、「3A」ならマレーシア、「12A」なら英語圏の習慣が隠れています。

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