火はなぜ赤い?炎の色のひみつ
※この記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。リンク先の楽天市場で購入されると、紹介料が入ることがあります。
炎が赤や黄色に見えるのは、燃えきらずに残った「すす」の粒が、熱せられて光っているからです。熱で光る物の色は温度で決まり、温度が上がるほど赤から黄、白へと移ります。
ただし、ガスコンロの青い炎の青さは熱の色ではありません。炎の色は「すすの光」「分子の光」「元素の光」の3つが重なってできています。どれも、ろうそくとガスコンロがあれば家で確かめられます。
ろうそくで確かめる:色の層とすす
まず、いちばん身近な炎をじっくり見てみましょう。暗い部屋で、風の当たらない場所に、火を灯したろうそくを置きます。
- 炎の根元を見る。芯のすぐ下のあたりに、うっすら青い部分があります。
- 炎の中ほどを見る。ここが一番明るい黄色の部分です。
- 芯のすぐ周りを見る。暗く見える部分には、まだ燃えていないロウの気体があります。
- 金属のスプーンをトングで持ち、黄色い部分に1〜2秒かざして引き上げる。スプーンに黒い粉が付きます。
- 同じスプーンを、根元の青い部分にかざす。黒い粉はほとんど付きません。
スプーンに付いた黒い粉が、すす、つまり燃えきらなかった炭素の細かい粒です。黄色く光っていたのは、炎という気体そのものではありません。この粒が熱であぶられて光っていたのです。鍋の底が黒くなるのも、同じ粒がそのまま付いたものです。
すすができる理由は、ろうそくの燃え方にあります。炎の熱で溶けたロウは、芯を伝って吸い上げられ、炎の中で気体になります。この気体は周りの空気と混ざりながら燃えるので、炎の内側まで酸素が届きません。熱で分解したロウの炭素は燃えきれず、粒になって残ります。
炎の中の温度は場所で違います。英語版の百科事典ウィキペディアは、ろうそくの炎を5つの層に分けて説明しています。
- 芯の真上の暗い部分:約1,000℃。ロウの気体が熱で分解する
- 黄色く光る部分:約1,200℃。酸素が足りず、すすの粒を含む
- いちばん外側の薄い層:約1,400℃。完全に燃える最も熱い層で、ほとんど見えない淡い青
黄色い部分のすすの粒は、この熱で真っ赤に焼けた鉄と同じように光ります。熱で物が光るこの現象を白熱と呼びます。一番明るい部分が一番熱い部分ではない、というのが面白いところです。
スプーンの実験は、やけどと火事に注意して大人と一緒に行ってください。スプーンはすぐ熱くなるので、素手で持たないこと。終わったら、すすを紙で拭き取ってから洗います。
熱で光る色は、温度の目印
熱で光る物の色は、物の種類ではなく温度で決まります。光が最も強くなる波長と絶対温度をかけると、いつも約2.898×10⁻³メートル・ケルビンという同じ値になります。これをウィーンの変位則と呼び、温度が2倍になればピークの波長は半分になります。
温度の低いうちは、光の大部分が目に見えない赤外線です。私たちに届くのは、そのすそ野にあたる赤い光だけ。温度が上がると緑や青も混ざり、色は黄から白へ移っていきます。
物が暗い赤に光り始める温度は、約525℃です。1847年にアメリカの科学者ジョン・ドレイパーが確かめたことから、ドレイパー点と呼ばれます。
| 見える色 | 温度 |
|---|---|
| かすかに見える赤 | 約525℃ |
| くすんだ赤 | 約700℃ |
| サクランボ色の赤 | 約900℃ |
| 濃いオレンジ | 約1,100℃ |
| 白 | 約1,300℃ |
| まぶしい白 | 約1,500℃ |
星の色から表面温度が分かるのも同じ理屈です。太陽の表面(光球)はおよそ5,500℃。ろうそくのすすは、絶対温度で比べてその4分の1ほどの温度で光っています。だからろうそくの炎は、太陽より赤っぽく見えるのです。
ガスコンロで確かめる:青い炎の正体
ガスコンロの炎は、正常なら青です。この青は、白熱とは別の仕組みで生まれています。
コンロのガスは、火がつく前に空気とよく混ざります。酸素が足りているので完全に燃え、すすがほとんどできません。すすがなければ、白熱の光も出ません。
代わりに光っているのは、燃える途中で一瞬だけ生まれるCH(メチリジン)やC₂といった不安定な分子です。化学反応のエネルギーを受け取った分子が、自分で光を出します。CHの光は波長430ナノメートル付近で、ちょうど青の領域。C₂の光は青から緑にかけての色です。青い炎が高温なのは事実ですが、青さそのものを作っているのは温度ではありません。
理科室のガスバーナーで、空気の取り入れ口を閉じると炎が黄色くなるのも同じ理屈です。空気が足りずにすすができ、その粒が白熱して黄色く光ります。
家のコンロの炎が赤や黄色に揺れ続けるときは、空気が足りていないサインのことがあります。不完全燃焼では一酸化炭素が出るので、換気をして、続くようならガス会社に相談してください。
塩や加湿器で確かめる:元素ごとの色
温度とも空気の量とも関係なく、混ざった元素で色が決まる場合もあります。これが炎色反応です。
身近な例が、塩を入れたゆで汁の吹きこぼれです。コンロの青い炎に、ぱっとオレンジがかった黄色が混ざります。塩に含まれるナトリウムが、熱で決まった色の光を出すためです。銅なら青緑になり、花火の赤や緑もこの仕組みで色を付けています。
2022年には、加湿器を使うとコンロの炎が赤くなる、という投稿が話題になりました。神戸新聞の取材に大阪ガスが答えています。超音波式の加湿器は水道水を細かい粒にして飛ばすので、水に溶けたカルシウムなどのミネラルが炎に入り、炎色反応で赤やオレンジに見えるのです。
確かめ方は簡単です。
- 台所で超音波式の加湿器を使っているときに、コンロの炎の色を見る。
- 加湿器を止めて換気し、数分おいてから、もう一度炎を見る。
- 青に戻れば、赤みの原因は加湿器のミネラルです。戻らなければ、バーナーの汚れや空気不足を疑います。
大阪ガスは、加湿器とコンロを一緒に使うこと自体は問題ないとしています。ただし加湿器の本体を火に近づけすぎると、変形や火事のもとになります。
無重力では、ろうそくも青く燃える
すすが炎の色を決めていることは、宇宙でも確かめられています。NASAによると、地上のろうそくの炎がしずく形で黄色いのは、重力が生む上昇気流のためです。温められた空気が上へ流れ、すすを炎の先へ運びます。
上昇気流が起きない無重力では、炎は丸い球の形になり、すすのない青い炎になります。ろうそくも酸素も同じなのに、重力の有無だけで色と形が変わるのです。
よくある疑問
- 青い炎は、赤い炎より熱いのですか?
- 多くの場合はそうです。空気とよく混ざって完全に燃えるぶん、高い温度になりやすいからです。ただし青さそのものは分子の光で、温度の目印ではありません。炎の色から読める温度は、おおまかな目安にとどまります。
- コンロの炎が一瞬だけ赤くなるのは危ないですか?
- 吹きこぼれや加湿器による炎色反応なら、一時的なもので心配はいりません。いつまでも赤や黄色に揺れる場合は、空気不足の可能性があります。換気をして、変わらなければガス会社に点検を頼んでください。
まとめ
炎の色は、3つの仕組みの重なりで決まります。
- 赤・黄:すすの粒の白熱。温度が上がるほど白に近づく
- 青:CHやC₂など、燃える途中の分子が出す光
- オレンジ・赤・緑など:混ざった元素の炎色反応
次にろうそくを灯したら、根元の青と中ほどの黄色の境目を探してみてください。スプーンを1本かざすだけで、炎の色の正体がその場で見えてきます。
参考にした資料
- HyperPhysics(ジョージア州立大学) — Wien's Displacement Law
- NASA — Candle Flame: 1g vs Microgravity
- PubMed Central(米国国立衛生研究所) — Experimental Study on OH*, CH*, and CO2* Chemiluminescence Diagnosis of CH4/O2 Diffusion Flame
- Wikipedia — Candle(ろうそくの炎の層と温度)
- Wikipedia — Flame(炎の温度・すすの白熱・CHとC₂の発光)
- Wikipedia — Red heat(色と温度の対応表)
- Wikipedia — Draper point
- NASA Science — Sun: Facts
- 神戸新聞NEXT — 加湿器を使うとガスコンロの炎が赤くなる現象(大阪ガスの回答)