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ウミガメの性別は砂の温度で決まるって本当?

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
ウミガメの性別は砂の温度で決まるって本当?

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本当です。ウミガメの性別は、染色体ではなく、卵が砂の中で育つときの温度で決まります。分かれ目はおよそ29度で、それより高いとメス、低いとオスが多くなります。

この記事では、人とウミガメ、ワニやトカゲの決まり方の違いを表で比べます。暑い砂浜と涼しい砂浜で生まれ方がどう違うかも見ていきます。

決め手は染色体か、温度か

人の性別は、受精した瞬間に染色体の組み合わせで決まります。哺乳類では、Y染色体にあるSRYという遺伝子が、オスになる引き金です。ウミガメは違います。産み落とされた時点では、その卵がオスになるかメスになるかは、まだ決まっていません。砂の中で温められている間に、体の中の器官が精巣になるか卵巣になるかが分かれていきます。

この仕組みを、温度依存型性決定と呼びます。ウミガメだけの特殊な話ではありません。7種いるウミガメのすべてとワニの仲間、多くの淡水ガメや一部のトカゲが、温度で性が決まります。ただし、温度と性別の結びつき方は、動物によって違います。

性別の決まり方を比べる(Wikipedia「温度依存型性決定」などをもとに作成)
動物決め手温度と性別の関係
人などの哺乳類染色体温度には左右されない
ウミガメ・多くのカメ卵の温度低いとオス、高いとメス
ワニ・一部のカメやトカゲ卵の温度中くらいでオス、低すぎても高すぎてもメスになる型がある
ムカシトカゲ・一部の魚卵の温度低いとメス、高いとオス(カメと逆)

温度が体の中で何を切り替えているのかも、少しずつ分かってきました。アメリカの淡水ガメであるアカミミガメの研究では、温度によって働き方が変わる遺伝子が、オスになる道筋のスイッチを入れていることが示されています。メスになる側では、男性ホルモンを女性ホルモンに変える酵素、アロマターゼが働きます。オスが生まれる温度の卵に女性ホルモンを与えると、メスが生まれることも分かっています。ただ、全体の仕組みは、まだ解明の途中です。

境目があいまいな動物もいます。オーストラリアのフトアゴヒゲトカゲは性染色体を持っていますが、ふ化の温度が極端に高いと、染色体の決まり方が上書きされます。染色体か温度か、という二択ではなく、両方が効く動物もいるのです。

ウミガメの分かれ目は、約29度

オスとメスがちょうど半分ずつになる温度を、ピボット温度と呼びます。ウミガメの研究者団体SWOTの解説によると、ウミガメではおよそ29度です。種によって少しずれます。

巣の平均温度が31度を超えると、生まれる子はすべてメスになりえます。27.7度を下回れば、すべてオスになりえます。性別を左右する幅は、わずか3度ほどしかありません。

しかも、効くのは卵が育つ全期間ではありません。卵がかえるまでの45〜70日のうち、まん中の3分の1の時期だけです。この時期に生殖腺が作られるためです。産みたてのころや、かえる直前に暑い日が続いても、性別そのものは変わりません。

同じ砂浜でも、日かげに掘られた巣と日なたの巣では、温度が変わります。1つの巣の中でも、中心と外側では温度に差が出ます。同じ巣からオスとメスが混ざって生まれるのは、このためです。

なぜ温度で性を決める動物がいるのかは、まだはっきりしていません。SWOTは淡水ガメの実験結果を紹介しています。全部メスや全部オスになる温度の巣から生まれた子のほうが、半々になる温度の巣から生まれた同じ性の子より元気だった、というものです。ただ、ウミガメでは確かめられていません。

1966年と1971年:常識がくつがえった

この仕組みが知られ始めたのは、半世紀あまり前のことです。長い間、動物の性別は、生まれる前から遺伝で決まっているものと考えられてきました。

最初の報告は1966年です。フランスの研究者マドレーヌ・シャルニエが、アフリカのトカゲであるアガマの卵を育てていて、温度によって生まれる性別が偏ることに気づきました。

カメで最初に報告したのは、同じフランスのクロード・ピューです。1971年、ヨーロッパヌマガメなどの卵を、温度を変えてふ化させる実験の結果を発表しました。その後の研究で、高い温度ではメス、低い温度ではオスが生まれることがはっきりしていきます。いまでは、ウミガメ7種すべてがこの方式だと分かっています。

暑い浜と涼しい浜を比べる

この仕組みが、いま保護の現場で問題になっています。舞台はオーストラリアのグレートバリアリーフです。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者マイケル・イェンセンらは、北部と南部の砂浜で生まれたアオウミガメを、餌場で数百頭調べました。ホルモンの検査で性別を判定し、遺伝子でどちらの浜の生まれかを見分ける方法です。結果は2018年1月、学術誌『カレント・バイオロジー』に発表されました。それまでの調査は、産卵地で子ガメを解剖して性別を調べる方法が中心で、大人を含めた群れ全体の割合は分かりにくかったのです。

グレートバリアリーフのアオウミガメに占めるメスの割合(NOAAの発表をもとに作成)
生まれた浜大人大人手前子ども
北部(暑い)86.8%99.8%99.1%
南部(涼しい)65〜69%

北部の浜では、若い世代ほどメスに偏っています。大人の世代が生まれたころより、砂浜が暑くなったことを示す数字です。NOAAは、この20年ほどの間に砂浜の温度が上がったと説明しています。NOAAによると、北部の浜には推定20万頭のメスが産卵に訪れ、その多くは2つの小さなサンゴの島に集まっています。その北部のレイン島では、1990年代からほぼすべての子がメスで生まれているとSWOTは書いています。

メスが増えれば、生まれる卵の数は一時的に増えます。問題はその先です。オスが足りなくなれば、受精しない卵が増え、群れそのものが続かなくなるおそれがあります。研究者は、巣に水をまいたり日よけを置いたりして、巣を冷やす方法も試しています。

日本の砂浜では

日本の砂浜も、この話の当事者です。環境省によると、日本はアメリカ南東部やオマーンに次ぐアカウミガメの産卵地で、北太平洋では唯一の産卵地です。なかでも鹿児島県・屋久島の永田浜には、日本全体の30〜40%のアカウミガメが上陸し、北太平洋で最大の産卵地になっています。

産卵は4月下旬ごろから始まり、7月上旬ごろから子ガメがかえり始めます。子ガメが大人になるまでには、約30年かかります。今年の夏の砂の温度が、30年後に戻ってくるウミガメのオスとメスの割合を左右するわけです。

温度依存型性決定は、カメのほかにワニやトカゲにもあり、決まり方の型も動物ごとに違います。ウミガメと、その親戚の爬虫類を姿や暮らしで見比べるなら、写真の多い図鑑が手がかりになります。

砂の下で決まること

ウミガメの性別は、卵が育つ期間のうち、まん中の3分の1にあたる時期の砂の温度で決まります。分かれ目は約29度で、幅は3度ほど。北部のグレートバリアリーフでは、若いアオウミガメの99%以上がメスになっていました。涼しい南部の浜で生まれた群れでも、メスは65〜69%と半分を超えています。

環境省は、ウミガメが光や人の気配にとても敏感で、夜の浜を歩く人やライトが産卵を妨げることがあると説明しています。砂を踏み固めると、下にいる子ガメが死ぬこともあります。夏の浜で立ち入りを控えるロープや、明かりについての呼びかけを見かけたら、その下で性別が決まりかけている卵のことを思い出してみてください。

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