生き物

テントウムシはどうやって身を守っているのか

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
テントウムシはどうやって身を守っているのか

※この記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。リンク先の楽天市場で購入されると、紹介料が入ることがあります。

テントウムシの守りは、苦い体液と目立つ赤色の二段構えです。強い刺激を受けると、脚の関節から黄色い液をにじませます。これは特別な毒液ではなく、人でいう血液にあたる体液そのものです。

鮮やかな色は、その体液のまずさを敵に思い出させる看板として働いています。この記事では守りの仕組みを確かめたうえで、庭や公園でできる観察の方法を紹介します。

守りの仕組み:苦い体液と赤い看板

テントウムシは敵に襲われたり、指で強く摘まれたりすると、脚の関節から黄色い体液を出します。この反応は「反射出血」と呼ばれます。カリフォルニア大学の広報ブログによると、反射出血は成虫だけでなく幼虫も行います。

体液には強いにおいと苦味があります。ナナホシテントウの体液に含まれるのは、コクシネリンと呼ばれるアルカロイドの一種です。口に入れた敵は、苦さで吐き出してしまいます。さらに強い刺激を受けると、幼虫も成虫も脚を縮めて動かなくなる「擬死」、つまり死んだふりをします。

体液の守りを支えるのが、赤や黒の目立つ模様です。こうした色は「警戒色」と呼ばれ、一度まずい思いをした鳥は、色と味を結びつけて覚えます。日本語版ウィキペディアでも、鳥はテントウムシをあまり食べないとされています。英語版によれば、ナナホシテントウでは紋の大きさが毒の強さの目安になるそうです。

基礎生物学研究所の発表資料も、テントウムシの斑紋は「苦くてまずいので食べられない」ことを捕食者に知らせる警告色だと説明しています。テントウムシは飛ぶのが特別に速いわけでも、硬い殻で身を固めているわけでもありません。それでも昼の葉の上を堂々と歩けるのは、この看板が先に効いているからです。

守りが効かない相手もいる

この守りは万能ではありません。英語版ウィキペディアは、ナナホシテントウの天敵として鳥や小さな哺乳類、クモを挙げています。ほかのテントウムシに食べられることもあります。卵はクサカゲロウの幼虫に食べられます。

カリフォルニア大学の広報ブログは、庭でユウレイグモがテントウムシを糸で巻いて食べた場面を紹介しています。話を聞いた大学の研究者は、このクモの「味覚」が鈍かったのだろう、と冗談まじりに答えました。

体の中から食べる敵もいます。寄生バチの一種ディノカンプス・コクシネラエは、メスのナナホシテントウの体内に卵を産みます。かえった幼虫はテントウムシの卵を食べて育ち、やがて外へ出てきます。苦い体液も、内側からの攻撃は防げません。警戒色は、色を見て学ぶ鳥のような相手にこそ効く仕組みなのです。

観察1:名前の由来を指先で確かめる

「天道虫」という名前は、行動から付きました。枝の先などで行き場がなくなると上へ飛び立つ習性を、「お天道様に飛んでいった」と見立てたと言われています。この習性は、指1本で確かめられます。

  1. 葉の上を歩くテントウムシの前に、人さし指の先をそっと置く
  2. 指に乗ったら、指先を上に向けて立てる
  3. テントウムシが指先まで登るのを待つ(無理に押さない)
  4. てっぺんで止まったら、翅を広げて飛び立つまで見守る
  5. 割りばしや細い枝でも試し、何秒で飛ぶか比べる

テントウムシは上へ上へと登り、行き止まりで硬い前翅を開きます。その下にたたんだ薄い後ろ翅を広げて飛ぶ様子も、近くでよく見えます。つまんで指に乗せると体液を出すことがあるので、乗せるときは指を差し出すだけにしてください。

観察2:模様と大きさで種類を見分ける

日本には約180種のテントウムシがいて、世界では約6000種が知られています。ただし日本の種の半数以上は体長5mmに届かない小さな種です。庭や公園で見つけやすい種類を、見た目と食べ物で整理します。

見つけやすいテントウムシ(日本語版ウィキペディア、基礎生物学研究所の資料をもとに作成)
種類見た目の手がかり食べ物
ナナホシテントウ約8mm。名前のとおり黒い紋が7つアブラムシ
ナミテントウ約7mm。同じ種で200以上の模様アブラムシ
キイロテントウ名前のとおり黄色いうどんこ病の菌
ニジュウヤホシテントウ名前は28の星からナスやウリの仲間の葉

見分けるときは、次の順で見ると迷いにくくなります。まず大きさ、次に地の色と紋の数、最後にいた場所です。アブラムシが群がる茎にいれば肉食の種類、白い粉のようなうどんこ病が出た葉にいればキイロテントウの可能性があります。ナスの葉を食べているのは、葉を食べるニジュウヤホシテントウの仲間です。

いちばん迷うのがナミテントウです。基礎生物学研究所などのチームは2018年、黒地に赤い紋が2つの型から赤地に黒い紋が並ぶ型まで、200以上ある模様が「パニア」という1つの遺伝子で決まることを突き止めました。模様だけで別の種類と決めつけないのが、見分けのこつです。

同じ研究では、パニアが模様を決める働きはナナホシテントウにも残っていると分かりました。この仕組みは、2種の祖先が分かれた少なくとも3390万年前には既にあったと推測されています。

探す場所に迷ったら、アブラムシのついた植物を見て回るのが近道です。ナナホシテントウは少なくとも24種のアブラムシを食べます。アブラムシがいないと花粉や蜜でしのぎますが、それでは卵を産めません。メスは一生に250〜500個の卵を産むので、アブラムシの多い株には幼虫も集まりやすくなります。

観察3:死んだふりと冬の集団を見る

死んだふりは、葉ごと観察すると見やすい行動です。テントウムシのいる葉を、指で軽くはじいてみます。刺激を受けると、脚を縮めて動かなくなることがあります。そのまま、動き出すまでの時間を数えてみてください。何度も刺激すると体液を出させてしまうので、1匹につき1回までにします。

冬は、集まって休む姿を探す季節です。テントウムシの多くは成虫で冬を越し、石や倒木の陰で数匹から数十匹の集団を作ります。ナナホシテントウは、仲間を呼び寄せるにおいの物質を出して集まることが知られています。見つけても石を戻し、集団は崩さずにそっとしておきましょう。

季節を通して見ると、テントウムシの一生も追えます。ナナホシテントウは卵が約4日でかえり、さなぎの期間は約8日、卵から成虫までは約6週間です。成虫は冬を越せれば1〜2年生きます。テントウムシは卵・幼虫・さなぎ・成虫と姿を変える完全変態の昆虫で、幼虫やさなぎは成虫と似ていません。見つけた幼虫やさなぎの正体は、写真の載った図鑑と見比べると確かめやすくなります。

よくある疑問

星の数で年齢が分かるって本当?
分かりません。星の数や模様は種類ごとの特徴で、さなぎの中で決まります。基礎生物学研究所によると、ナミテントウのさなぎの期間は約108時間で、色が付き始めるのは蛹化から80時間後です。成虫になったあとで星が増えることはありません。
テントウムシは畑の役に立つの?
アブラムシを食べる種類は役立ちます。農研機構は、飛ぶ力の弱いナミテントウを選んで品種改良し、2014年にアブラムシ退治用として商品化しました。放した場所から飛び去りにくいように、飛ぶ力の弱い系統を選んだものです。

まとめ

テントウムシは、脚の関節から出す苦い体液と、それを知らせる目立つ色で身を守っています。ただしクモや寄生バチのように、苦味が効かない相手もいます。模様は種類の手がかりですが、ナミテントウのように1つの種で200以上の模様を持つものもいます。

庭で見つけたら、つまみ上げずに指を差し出し、てっぺんから飛び立つまで見守ってみてください。名前の由来になった行動を、自分の目で確かめられます。

← 記事一覧へ戻る