炭酸はなぜシュワシュワする?泡の正体
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炭酸のシュワシュワの正体は、圧力で水に押し込まれた二酸化炭素です。フタを開けると圧力が下がり、溶けきれなくなったガスが泡になって出てきます。
この仕組みは、家にあるグラスやキッチンスケールで確かめられます。泡の出発点・抜けていくガスの重さ・温度による違い・舌が感じる刺激の正体の4つを、順に観察していきます。
泡の正体は押し込まれた二酸化炭素
気体が水にどれだけ溶けるかは、水面にかかるその気体の圧力に比例します。ヘンリーの法則と呼ばれる関係です。炭酸飲料はこれを利用して、高い圧力の二酸化炭素を水に溶かし込み、そのまま密封して作られます。
どれくらい溶けているのか。フロリダ大学の手引きによると、多くの清涼飲料は「3〜3.5ボリューム」で作られています。1ボリュームは、液体と同じ体積の二酸化炭素が溶けている状態で、重さにすると1リットルあたり1.96グラムです。同じ手引きは、人が炭酸を感じ取れる下限を約0.6ボリューム、勧められる上限を8ボリュームとしています。
計算すると、500ミリリットルのペットボトル1本に約3〜3.4グラムの二酸化炭素が入っています。気体に戻せば、常温でおよそ1.7〜1.9リットル。ボトルの3倍以上の量のガスが、水の中に押し込まれているわけです。
フタを開けると、上の空間の圧力が外の空気と同じまで下がります。すると水は、抱えていたガスを溶かしておけません。この「溶ける限界を超えて溶けている」状態を過飽和と呼び、余ったガスが抜けきるまでシュワシュワが続きます。
確かめる1:泡の出発点を見つける
注いだ炭酸をよく見ると、泡は液の中のあちこちから出るのではなく、グラスの決まった点から列になって立ちのぼります。泡が育つには、足場が必要だからです。
- 透明なグラスを2つ用意し、1つは布巾で拭き、もう1つは水ですすいで自然に乾かす
- 同じ炭酸飲料を、2つのグラスに静かに注ぐ
- 横から明かりを当て、泡の列が何本あるかを数える
- スマートフォンのスロー撮影で、1本の列から1秒に何個の泡が出るかを数える
- 最後に、片方のグラスに塩をひとつまみ入れて泡の変化を見る
2002年、リジェ=ベレールらの研究チームは、シャンパンのグラスを高速度カメラで調べました。泡の出発点のほとんどは、グラスの壁に貼りついた長さ約100マイクロメートルの中空の繊維でした。布巾や空気中から来たセルロースの繊維とみられます。
繊維の内側に閉じ込められた小さな空気だまりにガスが集まり、直径14〜31マイクロメートルまで育つと離れて浮き上がります。注いで3分後、1つの出発点から出る泡は1秒に1個未満から30個近くでした。布巾で拭いたグラスのほうが泡の列が多ければ、この研究の結果と合っています。
塩を入れると一気に泡立つのも、同じ理由です。粒の表面が新しい足場になります。2008年にアメリカのアパラチアン州立大学のトーニャ・コフィーらは、ダイエットコークにメントスを入れて噴き上がる現象を調べました。塩や砂でも噴き出しは起きましたが、表面がでこぼこのメントスほど勢いはありませんでした。
確かめる2:抜けたガスの重さを量る
ガスが抜けていくなら、その分だけ重さが減るはずです。0.1グラム単位のキッチンスケールがあれば、確かめられます。
- 未開封の500ミリリットルの炭酸飲料を、キャップごと量る
- 流しの上でキャップをゆっくり開け、キャップと一緒にもう一度量る
- キャップを閉めて軽く振り、流しの上でそっと開けてガスを逃がす。泡がほとんど出なくなるまで繰り返す
- キャップと一緒に量り、最初の重さと比べる
先ほどの計算どおりなら、減る重さは最大で3グラムほどです。空気中の二酸化炭素はごく少量です。時間をかければ溶けていたガスのほとんどが抜けていきます。目に見えない気体にも重さがあることが、数字で分かります。吹きこぼれた分も減った重さに数えられてしまいます。キャップは、ゆっくり回して開けてください。
確かめる3:冷えた炭酸とぬるい炭酸を比べる
気体が水に溶けていられる量は、温度が上がるほど減ります。1気圧の二酸化炭素に触れた水に溶ける量を並べると、差ははっきりしています。
| 水温 | 溶ける量 |
|---|---|
| 0℃ | 約3.3グラム |
| 5℃ | 約2.8グラム |
| 10℃ | 約2.3グラム |
| 20℃ | 約1.7グラム |
| 30℃ | 約1.3グラム |
| 40℃ | 約1.0グラム |
表の値は1気圧のときの量です。炭酸飲料の1リットルあたり6〜7グラムは、20℃なら表の4倍近くにあたります。ヘンリーの法則で計算すると、未開封のボトルの中は二酸化炭素がおよそ3.5〜4気圧で押さえている状態です。30℃では同じ量を押さえるのに4.7〜5.5気圧が必要になり、ぬるいボトルほど中の圧力が高くなります。
冷蔵庫の5℃なら、30℃のときの2倍以上を溶かしておけます。同じ炭酸飲料を2本用意し、1本は冷蔵庫に、もう1本は常温に半日置きます。それから流しの上で同時に開けてみてください。常温のほうが勢いよく泡が出て、吹きこぼれやすいはずです。水が抱えておけるガスが少ないぶん、余ったガスが一度に出てくるからです。
飲み残しを長持ちさせるコツも、ここから分かります。開けたら早めに冷蔵庫へ戻し、キャップをしっかり閉めること。上の空間にたまった二酸化炭素の圧力が、残りのガスを水の中に押しとどめます。
確かめる4:気の抜けた炭酸を味わう
最後は舌で確かめます。同じ炭酸飲料を開けたてと、半日置いて気の抜けたものとで飲み比べてみてください。気の抜けたほうは、ただ甘く感じられるはずです。
理由を示したのが、2009年に科学誌サイエンスに載った研究です。アメリカ国立衛生研究所(NIH)とカリフォルニア大学サンディエゴ校のチームは、二酸化炭素を受け取るのが酸っぱさを感じる味細胞だと突き止めました。
この細胞の表面には、炭酸脱水酵素4という酵素があります。酵素が二酸化炭素を炭酸に変え、そこから出る水素イオンを細胞が酸っぱさとして受け取ります。酸っぱさを感じる細胞を持たないマウスは二酸化炭素に反応せず、酵素を持たないマウスもほとんど反応しませんでした。
二酸化炭素は、口の中の触覚や温度の感覚も刺激します。シュワシュワの刺激は、味覚とこうした感覚が重なってできているのです。気が抜けると両方が同時に弱まるため、甘さだけが残ったように感じます。
よくある疑問
- シュワシュワは、泡が舌の上ではじける感覚ですか?
- それだけではありません。研究チームのニコラス・ライバ氏によると、泡がはじけない高い圧力の部屋で飲んでも、感じ方は同じでした。刺激の大部分は、溶けている二酸化炭素そのものが味細胞などに働きかけて生まれています。
- 開けたあとキャップを閉め直せば、炭酸は元に戻りますか?
- 抜けたガスは戻りません。キャップを閉めると、上の空間にたまる二酸化炭素の圧力が上がり、それ以上抜けるのを遅らせるだけです。冷蔵庫で冷やせば溶けていられる量も増えるので、閉めて冷やすのが一番の対策です。
まとめ
炭酸のシュワシュワは、圧力で押し込まれた二酸化炭素が、フタを開けたとたんに溶けきれなくなって出てくる現象です。500ミリリットル1本には約3グラムのガスが溶けていて、泡はグラスに付いた繊維などを足場に生まれます。冷たいほど長く溶けていられ、舌は酸っぱさの細胞でその刺激を受け取っています。
次に炭酸を注いだら、グラスの内側から立ちのぼる泡の列を探してみてください。途切れずに続く一列の根もとには、目に見えないほど細い繊維が1本、貼りついているかもしれません。
参考にした資料
- Chemistry LibreTexts — Solutions of Gases in Water: How Soda Pop Gets Its Fizz
- American Journal of Enology and Viticulture — Close-up on Bubble Nucleation in a Glass of Champagne
- PubMed(Science 2009)— The taste of carbonation
- フロリダ大学 UF/IFAS — A Guide to Carbonating Beverages at Small Scale
- Wikipedia — Carbon dioxide (data page)
- ScienceDaily — Students explore the physics of fizz(American Journal of Physics 2008)
- FoodNavigator — Taste receptor for carbonation discovered, claim scientists