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お腹はなぜ鳴る?あの「グー」の正体

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
お腹はなぜ鳴る?あの「グー」の正体

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お腹の「グー」は、胃や小腸の中の空気と液体が、筋肉の動きで押し流されるときの音です。空腹時には、90〜230分おきに強い収縮の波が胃から小腸へ走り、残った食べかすを先へ送ります。

中身が空のぶん音がよく響くので、お腹がすいたときに目立ちます。この記事では波の周期と引き金になるホルモン、食事で波が止まる時間を、数字で順に見ていきます。

数字で見るお腹の音

お腹が鳴る音には、ボルボリグミ(borborygmi)という医学用語があります。もとは古代ギリシャ語で、音をそのまま写した擬音語だと考えられています。日本語の「グー」と同じ発想です。

音のもとは、腸の筋肉が中身を押し流す動きです。この動きはぜん動と呼ばれます。筋肉が中身の後ろで縮み、前でゆるむことで、中身を先へ送ります。液体と気体が一緒に動くので、水道管の水の音のような音が出ます。この記事に出てくる主な数字を、先にまとめておきます。

お腹の音にかかわる主な数字
数字意味
1969年空腹時の収縮の波(MMC)が、イヌの腸で報告された年
90〜230分波がくり返す間隔
5〜10分最も強く収縮する第3相の長さ
71%第3相が胃の出口近くから始まる割合(1992年の研究)
約100分空腹時にホルモンのモチリンが出る間隔
213分450キロカロリーの朝食で波が止まった平均時間

90〜230分:空腹時の「お掃除の波」

空腹のときに胃と小腸を走る収縮の波を、伝播性消化管収縮運動(MMC)といいます。1969年、アメリカのメイヨー・クリニックのジョセフ・シュルシェフスキーが、絶食させたイヌの小腸で報告しました。波は消化の合間にだけ現れ、消化しきれなかった食べかすや細菌を、先へ先へと送り出します。

この働きが弱いとどうなるかを示す数字もあります。小腸で細菌が増えすぎる小腸内細菌増殖症(SIBO)の人では、第3相の回数が平均で3分の1しかなく、長さも約30%短いと報告されています。

MMCは4つの相をくり返します。

中身を一気に押し流すのは、第3相です。1周の長さは、人によっても日によっても大きく変わります。1992年に南カリフォルニア大学のチームが、健康な6人の消化管の圧力を、6日に分けて計255時間記録しました。この間に第3相は88回あり、1周の平均は人によって113分から230分まで違いました。同じ人でも日によって差が大きく、その幅(標準偏差)は58〜70分ありました。

波の出発点も1か所ではありません。この研究では、第3相の71%が胃の出口近く(前庭部)から始まりました。残りは十二指腸の入り口側が18%、十二指腸の奥が10%、その先の空腸が1%です。胃から離れるほど、波の進み方は遅く、第3相は長くなっていました。相の割合も場所で違い、胃の前庭部では第1相が平均55%を占めた一方、十二指腸と空腸では第2相が70〜80%を占めていました。

22個と28個:波にかかわる2つのホルモン

第3相の引き金を引くと考えられているのが、モチリンというホルモンです。アミノ酸22個がつながった小さなたんぱく質で、小腸の上の方、十二指腸や空腸の細胞から出ます。ブラウンらが1973年に論文で報告しました。きっかけは、イヌの十二指腸にアルカリ性の液を入れると、胃が強く収縮したことでした。空腹時の人では、約100分おきに血液中へ放出されます。MMCの周期と近い間隔です。抗菌薬のエリスロマイシンには、モチリンの受け取り口(受容体)に直接働く性質があることも知られています。

お腹がすいた感覚にかかわるのが、グレリンです。1999年に、国立循環器病センターの児島将康さんと寒川賢治さんらが発見しました。アミノ酸28個からなり、主に胃で作られます。名前は、成長を意味する英語growのもとになった古い語根「ghre」などにちなみます。血液中の量は絶食で増え、食べると減ります。

グレリンも、お掃除の波と関係があります。2006年に消化器の専門誌ガットに載った研究では、健康な9人にグレリン40マイクログラムを30分かけて点滴しています。すると、本来の周期を待たずに、胃から始まる第3相が約12分後に現れました。このときモチリンの量は変わっていません。1周の長さは、偽の点滴の103分に対して、グレリンでは66分に縮みました。

音の大きさは、ホルモンよりも胃腸の中の状態で決まります。胃が空になると中に空間が増え、空気が動く音がよく響きます。食後にも腸は動いていて、音は出ています。ただ、中身が詰まっていると、空のときほどは響きません。

213分:食事で波が止まる時間

食事をすると、MMCはいったん止まります。450キロカロリーの洋風の朝食では、波が平均213分止まったという報告があります。およそ3時間半です。人による幅はプラスマイナス48分あります。朝7時に食べ終えたなら、平均では10時半ごろまで波が止まっている計算です。止まる長さは食べた物でも変わります。脂質がいちばん長く、炭水化物、たんぱく質の順に短くなるとされています。

食べ物がなくなると波が戻り、お腹がまた鳴りやすくなります。英語版の百科事典ウィキペディアの記事は、胃が空になってから約2時間で、この波が再び始まると説明しています。

音のもとになる空気は、主に食事や会話のときに飲み込んだものです。炭酸飲料を飲むと、二酸化炭素のガスも加わります。空気を飲み込むのはごく普通のことで、誰にでも起きます。

夜も波は続いています。MMCによるお掃除の多くは、眠っている間に起きるとされています。一方で米国国立医学図書館のMedlinePlusによると、腸の音そのものは眠っている間は少なくなるのが普通です。

胃と十二指腸、小腸はお腹のどこにあり、どの順番で連なっているのか。波が通る道筋は、人体の図鑑で全体図を見ると位置関係がつかみやすくなります。

よくある疑問

お腹の音が大きいのは、体の調子が悪いからですか?
MedlinePlusは、お腹の音のほとんどは正常で、消化管が動いている証拠だと説明しています。下痢のときや食後には、聴診器なしでも聞こえるほど大きくなることがあります。ただし同じページは、医療者に連絡する目安も挙げています。血便や吐き気、続く下痢や便秘と嘔吐です。とても高い音は、腸閉塞の初期のサインのこともあるとしています。
お医者さんはお腹の音を聞けば、病気がわかりますか?
音だけでは決まりません。MedlinePlusは、音はガスや吐き気、便通の変化などの症状と合わせて判断すると書いています。お腹の音を聴診で聞くことに、はっきりした根拠は乏しいとする看護学の文献もあります。

まとめ

お腹の「グー」は、空気と液体が押し流される音です。空腹時には、90〜230分おきにMMCという収縮の波が走り、5〜10分続く第3相で中身を一気に送ります。第3相の7割は胃の出口近くから始まり、引き金はモチリンというホルモンです。モチリンは約100分おきに出ています。

450キロカロリーの朝食なら、波はおよそ3時間半止まります。次にお腹が鳴ったら、最後に食べた時刻から何時間たったか数えてみてください。

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