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シロナガスクジラは地球史上最大の動物って本当?

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
シロナガスクジラは地球史上最大の動物って本当?

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シロナガスクジラは、地球の歴史上で最も大きな動物です。アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、全長は最大でおよそ33メートル、体重は150トンを超えます。

ただし「心臓は自動車ほどの大きさ」という有名な話は、実物とはかなり違います。体・食べる量・心臓・数の移り変わりを、数字で順に確かめます。

全長33メートル、体重150トン超

NOAAはシロナガスクジラを、地球にこれまで生きた中で最大の動物と説明しています。南極海に暮らす亜種は全長およそ33メートル(110フィート)、体重は150トン(33万ポンド)を超えます。10トントラック15台分を上回る重さです。

シロナガスクジラは5つの亜種に分けられ、大きさには差があります。北大西洋や北太平洋の群れは全長27メートルほどで、南極海の亜種がとりわけ大型です。

33メートルという長さは、東京・上野の国立科学博物館で実感できます。屋外に置かれた実物大の模型は全長30メートルで、1994年に国内の専門家の協力で作られました。

シロナガスクジラを数字で見る(NOAAの資料などをもとに作成)
項目数字
全長最大約33メートル
体重150トン超
1日に食べるオキアミ最大約6トン
心臓の重さ約180〜200キロ
1回の拍動で送る血液約230リットル
潜水中の心拍毎分4〜8回(最低2回)
泳ぐ速さふだん時速約8キロ、短時間なら時速32キロ超
寿命推定80〜90年

1日6トンのオキアミと、1,600キロ先に届く声

これほどの体を支えているのは、体長数センチのオキアミです。シロナガスクジラに歯はなく、口の中に並ぶヒゲ板が、ふるいのように働きます。

海水ごと一気に口に入れ、水だけを押し出して餌をこし取る仕組みです。NOAAによると、大きな個体は1日に最大6トンのオキアミを食べます。体重150トンなら、毎日その4%ほどを食べている計算です。

泳ぐ速さは、餌を探して移動するときで時速約8キロ(5マイル)。人が小走りするくらいの速さです。短い間なら、時速32キロ(20マイル)を超えることもあります。小さな餌をけた外れの量で集める。この効率のよさが、巨体を支えています。

体が大きいぶん、声も大きく低い動物です。NOAAはシロナガスクジラを、地球で最も大きな音を出す動物の一つとしています。条件がそろえば、その声は最大1,000マイル、約1,600キロ先のクジラにまで届きます。東京から那覇までとほぼ同じ距離です。

歌うのはオスだけで、繁殖相手を呼ぶ声だと考えられています。その音は、88鍵のピアノのいちばん低い音よりもさらに低いものです。NOAAによると、この50年ほどで歌の高さはだんだん低くなってきました。

心臓180キロ、潜ると心拍は毎分2回

よく語られる「心臓は小型自動車ほど」は誇張です。NOAAは心臓の重さを約400ポンド、およそ180キロとし、スタジオ用のピアノ1台と同じくらいだと説明しています。

実物を測った記録もあります。2014年、カナダのニューファンドランド島に全長24メートルの個体が打ち上げられました。取り出された心臓は、シロナガスクジラの心臓として初めて保存に成功し、カナダの王立オンタリオ博物館で展示されています。ギネス世界記録によると、重さは199.5キロ、長さは約1.5メートルでした。「フォルクスワーゲン・ビートルほど」という昔からの話は、この標本で見直されています。

それでも性能はけた外れです。1回の拍動で約60ガロン、230リットルほどの血液を送り出します。NOAAによると、ヒトの心臓が1回に送るのは2.4オンス、約70ミリリットル。3,000倍以上の差です。

2019年、スタンフォード大学などの研究チームが、自由に泳ぐシロナガスクジラの心拍を初めて記録しました。体に付けた心電図の記録計によると、深く潜っている間の心拍は毎分4〜8回で、最も低いときは毎分2回まで下がりました。記録した潜水は、最大で水深184メートル、16.5分です。

浮上して呼吸した直後は、逆に毎分25〜37回まで上がります。潜る間は心拍を落として酸素を節約し、息つぎの間に一気に取り戻しているのです。

拍動と拍動のあいだが30秒も空くと、血の流れが止まりそうに思えます。研究チームは、心臓から出てすぐの太い血管(大動脈弓)が大きく、よく伸び縮みする点に注目しました。この血管がふくらんで血をため、少しずつ押し出すことで、長い間合いのあいだも血を送り続けられると説明しています。

捕鯨前の約30万頭から、いまは1万〜2万5千頭

大きな体は、20世紀の捕鯨で狙われる理由にもなりました。NOAAによると、捕鯨が始まる前の海には約30万頭がいて、そのうち24万頭が南極海で暮らしていました。

シロナガスクジラの数の移り変わり(NOAA「The Big-Hearted Blue Whale」より)
時期・地域頭数
捕鯨前の世界全体約30万頭
捕鯨前の南極海約24万頭
現在の世界全体約1万〜2万5千頭
現在のカリフォルニア沖捕鯨前の約97%まで回復

世界全体では、捕鯨前の10分の1にも届いていません。回復に時間がかかるのは、子を産むペースがゆっくりだからです。NOAAによると、妊娠期間は10〜12か月で、子は生後6〜7か月で乳離れします。大人になるまでに5〜15年かかり、出産は2〜3年に1回です。アメリカは1970年に、シロナガスクジラを絶滅危惧種に指定しました。数は世界的に増えつつありますが、いまの大きな脅威は船との衝突と漁具への絡まりです。

一方、カリフォルニア沖の群れは捕鯨前の約97%まで戻ったとされます。海と餌が守られれば、回復できる動物でもあるのです。

ほかのクジラとの姿の違いを写真で見比べたり、打ち上げられたクジラを調べる研究者の仕事を知ったりするには、本のほうが詳しく追えます。

よくある疑問

シロナガスクジラより重い古代のクジラが見つかったのでは?
2023年、イタリアのピサ大学などのチームが、ペルーで見つかった古代クジラ「ペルケトゥス・コロッスス」の体重を約180トン(85〜340トン)と推定しました。しかし2024年には、カリフォルニア大学デービス校とスミソニアン協会の研究者が反論します。骨の重さから全身を見積もる前提に無理があるとして、全長17メートルの個体で60〜70トンに下方修正しました。20メートルまで育っても110トンほどで、最大級のシロナガスクジラの270トンには遠く及びません。
日本の近くにもいますか?
いますが、岸で見つかることはまれです。2018年8月、神奈川県鎌倉市の由比ガ浜に全長10.52メートルのオスが打ち上げられました。国立科学博物館は、写真や映像で確かめられる国内のストランディング(打ち上げ)として事実上初めての例としています。生まれて数か月の子どもで、10メートルを超えていました。

まとめ

シロナガスクジラは全長約33メートル、体重150トン超。1日に最大6トンのオキアミを食べ、180キロ前後の心臓が1回に230リットルの血液を送ります。潜れば心拍は毎分2回まで下がります。一方で数は、捕鯨前の約30万頭から1万〜2万5千頭に減り、ゆっくり回復している途中です。

上野の国立科学博物館に行く機会があれば、屋外の30メートルの模型を端から端まで歩いてみてください。その長さの生き物が、いまも1万頭以上、海を泳いでいます。

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