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セミは土の中で17年?一生の大半を過ごす場所

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
セミは土の中で17年?一生の大半を過ごす場所

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セミの一生の大半は、土の中です。ただし「17年」という数字は、日本のセミの話ではありません。アメリカ東部にすむ周期ゼミ(素数ゼミ)の幼虫期間で、日本のセミの幼虫期間は2〜3年から7〜8年ほどとばらつきます。

17年ゼミの不思議は、300年以上かけて少しずつ解かれてきました。この記事では、人々がこのセミの周期に気づき年を数える仕組みに迫るまでを、時代順にたどります。

17世紀:「イナゴの大発生」として記録される

周期ゼミの古い記録は、北アメリカに渡ったヨーロッパの人々が残しました。害虫学者チャールズ・マーラットは、1666年にイギリス王立協会の学術誌『フィロソフィカル・トランザクションズ』に載った報告を、最も古い記録と考えました。

1669年に出た本『ニューイングランドの記録』には、プリマス植民地で1633年に病気がはやる前、虫の大群が現れたと書かれています。ただし昆虫学者ジーン・クリツキーは、周期から計算すると発生は1631年か1634年のはずで、1633年という年は誤りだろうと指摘しています。

周期ゼミは、アメリカでは今も「ローカスト(イナゴ)」と呼ばれることがあります。セミはカメムシの仲間で、バッタの仲間のイナゴとは別の虫です。

18世紀:17年ごとに戻ってくることに気づく

1749年、フィンランド出身の博物学者ペール・カルムがペンシルベニアとニュージャージーで大発生を観察し、スウェーデン王立科学アカデミーに報告しました。この群れは、今「ブルードX(第10群)」と呼ばれているものです。

周期をはっきり書き残した1人が、アメリカの天文学者で暦の作者でもあったベンジャミン・バネカーです。1800年4月の記録では、1749年と1766年と1783年に「イナゴの大きな年」があったと振り返っています。そして、次は1800年に戻ってくると予想しました。3つの年は、ちょうど17年ずつ離れています。

学名を付けたのは、スウェーデンの博物学者カール・リンネです。1758年の『自然の体系』第10版で、このセミを「キカダ・セプテンデキム」と名づけました。セプテンデキムは、ラテン語で17を意味します。

20世紀:群れに番号を振る

周期ゼミは、地域ごとにそろって同じ年に出てきます。マーラットは1907年の論文で、この群れ(ブルード)にローマ数字を割り当てました。17年周期にIからXVII、13年周期にXVIIIからXXXまで、合わせて30の番号です。ただし30は理屈の上の数で、今も確認できる群れは15ほどです。XIとXXIの2つの群れは、すでに絶えました。

周期ゼミは7種が知られ、17年周期が3種、13年周期が4種です。幼虫は、東部の広葉樹の根から道管液を吸って育ち、一生のおよそ99.5%を土の中で過ごします。多い場所では、1エーカー(約4,000平方メートル)あたり150万匹を超える幼虫がいます。鳥などに食べられても食べきれないほどの数で一度に出るのが、この虫の生き残り方です。

2000年代以降:年を数える仕組みに迫る

土の中で、どうやって17年を数えているのか。2000年、カリフォルニア大学デービス校の生態学者リチャード・カーバンが実験をしました。15歳の幼虫を、1年に2回花を咲かせるよう操作したモモの木の根に付けたのです。すると幼虫は、ふつうより1年早く地上に出てきました。木の季節の変化を手がかりに年を数えている、という考えを支える実験です。

周期が13と17という素数なのはなぜか。静岡大学の吉村仁教授らは、10年から20年までの周期をもつ11種のセミを仮定して計算し、2009年5月に米国科学アカデミー紀要で発表しました。13年と17年の群れが同じ年に出るのは、ふつうは221年に1度です。しかし交雑で14年や16年の子が生まれると、その間隔は約112年に縮まり、群れの数が減っていきます。素数の周期は、ほかの周期の群れと重なりにくいのです。

2025年8月には、曽田貞滋・京都大学名誉教授らのチームが「4年ゲート仮説」を野外で確かめた成果を、英国王立協会の学術誌に発表しました。2019年から2022年に、11歳から17歳の幼虫を調べています。

仮説では、終齢幼虫が羽化を決めるのは4の倍数の年です。その年に一定の体重を超えていれば変態が決まり、冬を越した翌年の春に地上へ出ます。調査では、秋までに16歳のほぼ全個体と、12歳で体重の重い一部の個体で変態が決まっていました。16年目に決めて17年目の春に出る、という計算です。遺伝子の働きの変化からは、冬の休眠によって羽化が春まで持ち越されることも示唆されました。

2024年には、17年周期のブルードXIIIと13年周期のブルードXIXが、イリノイ州の一部でそろって地上に出ました。この2つが同じ年に出るのは1803年以来で、次は2245年になります。

いっぽう、日本のセミは?

日本の林で鳴くアブラゼミやクマゼミは、周期ゼミとは別のグループで、決まった周期を持ちません。産業技術総合研究所(産総研)の森山実さんは2025年の取材で、幼虫期間は7年と決まっておらず、2〜3年のものから7〜8年以上のものまで混じっていると話しています。

メスは木の幹や枝に針で穴を開けて卵を産みます。卵は梅雨や秋雨のころにかえり、幼虫は土にもぐります。そこから何年もかかる理由は食べ物です。道管液はほとんどが水で、栄養はわずかしかありません。セミの腹部にはブドウの房のような共生器官があり、中の微生物が、道管液に少し含まれるアミノ酸などを不足する栄養素に作りかえていると考えられています。アブラゼミなどでは、この微生物の一部が冬虫夏草の仲間の菌に置き換わっていることも分かりました。

「成虫は1週間の命」という話も、正確ではありません。国立国会図書館のレファレンス協同データベースにある回答は、野外調査から推定したクマゼミの寿命として「オスで約17日、メスで約30日」という例を紹介しています。網をかけた飼育下では、30日以上生きた記録もあります。

周期ゼミの3つの謎や、日本のセミの一生の各段階は、絵や写真で追うと分かりやすい話です。素数ゼミの謎解きや、幼虫が地上に出るまでの姿を詳しく見たいなら、本で読むのが近道です。

周期ゼミの研究の年表(京都大学、英語版ウィキペディア「Periodical cicadas」などをもとに作成)
年できごと
1666年英国王立協会の学術誌に、周期ゼミとみられる報告
1749年ペール・カルムがブルードXの大発生を観察
1758年リンネが「17」を意味する学名を付ける
1800年バネカーが17年ごとの発生を記録し、再来を予想
1907年マーラットが群れにローマ数字の番号を振る
2000年カーバンが、木の変化で年を数える可能性を実験で示す
2009年吉村仁らが、素数周期が交雑を避ける効果を計算で示す
2024年ブルードXIIIとXIXが1803年以来そろって発生
2025年京都大学などが4年ゲート仮説を野外で検証

夏の声を聞き分ける

17年は、北アメリカの周期ゼミの数字です。日本のセミは2〜3年から7〜8年ほどを土の中で過ごします。地上での命も1週間ではなく、クマゼミではオスで約17日、メスで約30日という推定があります。

周期ゼミの謎は、移民の記録から天文学者の観察やモモの木の実験を経て、遺伝子の分析へと受け継がれてきました。次にセミの声を聞いたら、その1匹が地面の下で過ごした年月を思い浮かべてみてください。

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