砂糖はなぜ水に溶ける?水の分子のはたらき
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砂糖が水に溶けるのは、水の分子が砂糖の分子を1つずつ引きはがし、まわりを取り囲んで運び去るからです。砂糖の分子そのものは壊れていないので、姿が消えても甘さは残ります。
20℃の水100ミリリットルには、砂糖が約200グラムも溶けます。水の2倍の重さです。この記事では「どこへ消えたのか」「塩とはどう違うのか」「冷やすと結晶は戻るのか」など、7つの疑問に1つずつ答えていきます。
溶けた砂糖はどこへ消えたの?
コップの水に砂糖を入れてかき混ぜると、白い粒はすっと見えなくなります。それでも甘さが残るのですから、砂糖は水の中にいます。
見えなくなったのは、粒がばらけて分子1個ずつになったからです。水の分子が砂糖の分子同士を引き離し、1個ずつ取り囲みます。このように溶けた粒が水の分子に囲まれることを「水和」と呼びます。
分子1個は、目で見るにはあまりに小さい粒です。光を遮るほどの固まりが消えるため、砂糖水は透明に見えます。ただし分子の中のつながりは切れていません。水の中を漂っているのは、元のままの砂糖の分子です。だから甘さは失われないのです。
ただし、砂糖の分子が分かれることもあります。レモン汁のような弱い酸や、スクラーゼという酵素がはたらくと、ショ糖はブドウ糖と果糖に分かれます。これは溶けるのとは別の、分子そのものが変わる化学変化です。
水の分子はなぜ砂糖をはがせるの?
グラニュー糖の粒は、ショ糖(スクロース)という分子が規則正しく積み重なった結晶です。ショ糖はブドウ糖と果糖が1つずつ結びついた分子で、分子式はC12H22O11。分子1個に炭素12個、水素22個、酸素11個が含まれます。
ショ糖には、酸素と水素が組になった水酸基(-OH)が8個あります。結晶の中では、この水酸基同士が水素結合という弱い力で引き合い、分子を並べています。結晶の密度は1立方センチあたり約1.59グラムで、同じ体積の水より6割ほど重くなります。
水の分子も、酸素と水素でできた同じ種類の「手」を持っています。そのため水の分子は、砂糖同士がつないでいた手を次々に横取りできます。結晶の表面から分子が1個ずつはがれ、水に囲まれたまま散っていく。これが「溶ける」の正体です。
砂糖が水によく溶けるのは、手の数が多いからでもあります。8個の水酸基の水素と、11個すべての酸素が、それぞれ水の分子と引き合えます。水と引き合う場所が多いほど、水の中にいるほうが安定するのです。
塩の溶け方とはどう違うの?
同じ「溶ける」でも、食塩は事情が違います。食塩は水の中で、ナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれます。プラスの電気を帯びたナトリウムイオンには、水の分子の酸素の側が引き寄せられます。
電気を帯びた粒が水の中を動けるので、食塩水は電気を通します。いっぽう砂糖は分子のまま散らばるだけで、イオンを作りません。砂糖水に電池と豆電球をつないだ電極を入れても、豆電球はつきません。こうした物質は「非電解質」と呼ばれます。
舌で味わえばどちらも水に溶けて消えますが、水の中の姿はまったく別物です。食塩はばらばらのイオンに、砂糖は丸ごとの分子のままになっています。
砂糖はどれくらいまで溶けるの?
溶ける量にも大きな差があります。水100ミリリットルに溶ける量を、温度ごとに並べました。
| 水温 | 砂糖(ショ糖) | 食塩 |
|---|---|---|
| 0℃ | 約182グラム | 約35.7グラム |
| 20℃ | 約202グラム | 約35.9グラム |
| 40℃ | 約236グラム | 約36.4グラム |
| 60℃ | 約289グラム | 約37.0グラム |
| 80℃ | 約365グラム | 約37.9グラム |
| 100℃ | 約476グラム | 約39.0グラム |
20℃で比べると、砂糖は食塩の5倍以上溶けます。しかも温度を上げると、砂糖は0℃から100℃で2.6倍に増えるのに、食塩は1割ほどしか増えません。熱い湯に大量の砂糖を溶かせるのは、砂糖ならではの性質です。20℃で溶けるだけ溶かした砂糖水は、重さの約3分の2が砂糖。液体というより、砂糖に少し水が混ざったものに近い状態です。
お湯やかき混ぜで早く溶けるのはなぜ?
温度が上がると、水の分子は激しく動き回ります。結晶の表面にぶつかって砂糖の分子をはがす回数が増えるので、お湯のほうが早く溶けます。
かき混ぜると早いのは、結晶のすぐ周りにたまった濃い砂糖水を押しのけ、新しい水を触れさせるからです。粒の細かい粉砂糖が早く溶けるのも、水に触れる表面が広いためです。
アイスコーヒーにガムシロップが添えられるのも、この「速さ」の問題です。表のとおり、0℃の水でも溶ける限界は100ミリリットルあたり約180グラムあります。冷たい飲み物で困るのは溶ける量ではなく、分子の動きが鈍くて溶けるのに時間がかかることです。砂糖を使うなら、少量のお湯で先に溶かしてから注ぐと早く混ざります。
冷やすと砂糖は戻ってくるの?
戻ってきます。熱い湯に溶けるだけ砂糖を溶かしてから冷ますと、溶けきれなくなった分が結晶になって出てきます。表で計算すると、80℃の水100ミリリットルに溶かした約365グラムのうち、20℃まで冷ませば約160グラムが溶けきれなくなります。
水の分子の動きが鈍くなると、砂糖の分子はふたたび互いに手をつなぎ、規則正しく並び直します。夏休みの自由研究で人気の砂糖の結晶づくりは、この温度差を利用したものです。
お店で売られている氷砂糖も、同じ原理で作られます。農畜産業振興機構によると、氷砂糖には2つの形があります。凹凸のある「ロック型」は明治時代の初めから伝わる製法で、浅い金属の皿に濃い砂糖液を張り、種の結晶を入れて育てたあと砕いたものです。粒のそろった「クリスタル型」は16面体で、円筒形の機械の中で砂糖液と種の結晶を温めながら回して作ります。
溶けやすさは料理でどう役立つの?
水と引き合う力が強いことは、台所でも役に立っています。農畜産業振興機構の解説では、ココアを作るときに粉と砂糖を先に混ぜておくと、湯や牛乳に溶けやすくなるとされています。砂糖が水を呼び込み、粉を水になじませるからです。
保存にも効きます。微生物が使えるのは、食品の成分と結びついていない水だけです。砂糖を多く加えると、その水を砂糖が抱え込み、微生物が使える水が減ります。イチゴジャムなどに、ジャムの重さの50〜65パーセントほどの砂糖を入れるのはこのためです。
水を引きつける力は、食感も変えます。同じ解説によると、肉に砂糖を揉み込んでから煮ると軟らかく仕上がります。甘い卵焼きは甘くないものより固まるのに時間がかかりますが、そのぶん、ふんわり焼き上がります。すし飯に砂糖を入れると、ご飯が時間とともに硬くなるのを遅らせる効果もあります。どれも、砂糖が水を抱え込んで手放さない性質によるものです。
砂糖液を煮詰めていくと、水が減るにつれてシロップから飴へと姿を変えます。砂糖が170〜185℃まで熱せられると、淡い褐色で香ばしいカラメルになります。水に溶けた砂糖は、温度しだいで料理の色や香りまで生み出すのです。
まとめ
砂糖が溶けるのは、水の分子が砂糖の分子を1つずつ横取りして取り囲むからです。分子そのものは壊れないので甘さは残り、イオンにならないので電気も通しません。20℃で水の2倍の重さが溶け、温度を上げるほど溶ける量は大きく増えます。
次に砂糖を溶かすときは、冷たい飲み物なら先に少量のお湯で溶かしてみてください。量ではなく速さの問題だと分かっていれば、底に残る砂糖はぐっと減ります。
参考にした資料