雪の結晶はなぜ六角形?水の分子が決めていた
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雪の結晶が六角形になるのは、水の分子が凍るときに六角形の格子を組むからです。形を決めているのは水そのものの性質で、雪だけの特別な事情ではありません。
一方で、板になるか柱になるか、枝がどこまで伸びるか。こちらは上空の気温と湿り気で変わります。この記事では六角形の仕組みと、降ってきた雪を家の前で観察する方法を紹介します。
六角形を決めているのは水の分子
水は、酸素1個と水素2個がくっついた小さな分子の集まりです。凍るとき、分子どうしは水素結合という結びつきで、決まった角度につながります。
その並びを上から見ると、六角形が敷き詰められた格子になります。この氷は六方晶の氷(氷Ih)と呼ばれ、地上で見られる自然の氷や雪は、ほぼすべてこの形です。
カリフォルニア工科大学で雪の結晶を研究するケネス・リブレクト氏は、氷の結晶の基本形を「六角柱」と説明しています。鉛筆を短く切ったような形で、上下の面が六角形です。この六角柱の6つの角は、水蒸気を受け取りやすい出っ張りです。そこから枝が先に伸びるので、腕も6本になります。
雪の六角形は、目に見えない分子の並び方が、数ミリの大きさまで育って見えるようになった姿です。
板か柱かは、気温で決まる
格子は同じでも、育つ形は1つではありません。リブレクト氏の解説によると、結晶が育つときの気温によって、板と柱が入れ替わります。
| 気温 | 育ちやすい形 |
|---|---|
| マイナス2度あたり | 薄い板 |
| マイナス6度あたり | 細長い柱 |
| マイナス15度あたり | 大きな薄い板。シダの葉のように枝分かれした星形も育つ |
| さらに低い気温 | 板と柱のどちらも出る |
形を左右するもう1つの条件が湿り気です。湿り気が少ないとゆっくり育って単純な形になり、多いと速く育って複雑に枝分かれします。枝分かれした星形は最も大きく育つ形で、直径5ミリに達するものもあります。反対に最も小さいのはダイヤモンドダストと呼ばれる結晶で、多くは人の髪の毛の太さほどしかありません。
この関係を初めて突き止めたのが、物理学者の中谷宇吉郎(1900〜1962年)です。中谷は1936年3月12日、北海道帝国大学の低温研究室で、世界で初めて人工の雪の結晶を作りました。ビーカーの水を温めて水蒸気を立ちのぼらせ、装置の上につるしたウサギの毛に結晶を育てる方法です。
気温と水蒸気の量を変えながら形を記録し、条件と形の対応を1枚の図にまとめました。これが中谷ダイヤグラムです。逆に読めば、地上に落ちてきた結晶の形から、それが育った上空の気温と湿り気が分かります。中谷はこれを「雪は天から送られた手紙である」という言葉で表しました。
結晶の分け方も、観察が進むたびに細かくなりました。中谷が1954年の本で示した分類は41種類。1960年代には孫野長治らが80種類にまとめ、2011年には菊地勝弘らが北極圏での観測も加えた121種類の「グローバル分類」を発表しています。
「同じ結晶は二つとない」は本当?
枝が細かく分かれた複雑な結晶では、自然に降る雪でぴったり同じものが見つかることはまずありません。落ちてくる道すじが一粒ごとに違い、そのたびに気温と湿り気が変わるからです。
ただし、同じ条件で育てれば話は変わります。リブレクト氏は実験室で、2つの結晶を並べて同じ条件で育て、見分けの付かない「双子」を作りました。大きさはどちらも先端から先端まで2.0ミリで、育つのにかかった時間は16分です。条件がそろえば形もそろう。この実験は、形を決めるのが育った環境だということを示しています。
もう1つの誤解が、写真集のような左右対称の結晶が普通だという思い込みです。リブレクト氏は7,000枚以上の写真を撮ってきましたが、実際に降る雪では不揃いな結晶が圧倒的に多いと書いています。きれいな一粒を探すのに、何時間もかけて何千もの結晶に目を通すそうです。
6本の腕が同じ形にそろうのは、6本とも同じ環境で育ったときだけです。腕ごとに違う空気に触れれば、それぞれ違う育ち方をします。
降ってきた雪で確かめる
雪の結晶は、特別な装置がなくても家の前で観察できます。自然学校の協力でまとめられた観察の手順をもとに、流れを整理しました。
- 雪が降り始めたら、黒い布を外に出しておく
- 布が外の気温と同じくらいに冷えるまで待つ(冷えていないと結晶がすぐ溶ける)
- 日陰で、降ってくる雪を布で受ける
- ルーペで形を見て、観察ノートにスケッチし、その日の気温を書き添える
- 雪がやんでいたら、積もった雪の表面をハケで軽く掃き、布にそっとのせる
黒い布を使うのは、白い結晶の輪郭が浮かんで見えるからです。溶けやすいので、見るのは手早く済ませます。防寒着の袖や手袋に付いた雪でも、条件が合えば結晶が見えます。
形が分かったら、上の表と見比べてみてください。薄い板ならマイナス2度前後、細長い柱ならマイナス6度前後、枝の多い星形ならマイナス15度前後の空で育ったと読めます。地上の気温ではなく、雲の中の気温だという点がポイントです。
観察に使える道具
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ルーペ:Phoenix Loupe スタンドルーペA(3倍・10倍) 約1,598円。3倍と10倍のレンズが付いた、折りたたみ式のスタンドルーペです。手で持っても、布の上に立てても使えます。
向いている人:まず肉眼より一段大きく見たい人や、子どもと一緒に観察したい人。注意:LEDライトは電池式で、電池の付属は商品ページで確かめてください。息がかかると結晶が溶けるので、顔を近づけすぎないようにします。
スマホ用マクロレンズ:ファンクスストア スマホ用 100mmマクロレンズ(クリップ式) 約3,460円。スマホのカメラにクリップで留める接写用のガラスレンズです。商品ページでは、ピントが合う距離を40〜70ミリとしています。
向いている人:形を写真に残して、あとで表と見比べたい人。向かない人:カメラ部分が盛り上がった機種や、ケースを付けたままの機種では留めにくい場合があります。自分のスマホで使えるかを、商品ページで確かめてください。
結晶の大きさは数ミリなので、まずはルーペで十分に楽しめます。写真に残したくなったら、マクロレンズを足す順番で足ります。
よくある疑問
- 腕が12本ある結晶を見ました。六角形の決まりに反していませんか?
- 反していません。リブレクト氏の解説によると、12本の枝を持つ結晶は、6本の枝の結晶2つが空中でぶつかってくっついたものです。1つ1つの結晶は、やはり六角形の決まりに従っています。
- 溶けた結晶をもう一度凍らせたら、元の形に戻りますか?
- 戻りません。リブレクト氏は、溶けて凍り直した雪が元の形を取り戻すという話を、昔から出回る作り話だとはっきり否定しています。形は水蒸気から少しずつ育つ過程で決まるので、水が凍っただけでは六角形の枝は生まれません。
まとめ
雪の結晶の六角形は、水の分子が水素結合で組む六角形の格子から生まれます。板になるか柱になるかは育つときの気温で、枝の多さは湿り気で決まります。1936年に中谷宇吉郎が人工雪でこの関係を確かめ、結晶の分類はいま121種類まで増えました。
次に雪が降ったら、冷やした黒い布で一粒受け止めてみてください。板か、柱か、枝の多い星か。形が読めれば、その一粒が育った雲の中の気温まで見当がつきます。
参考にした資料
- SnowCrystals.com(カリフォルニア工科大学 Kenneth Libbrecht) — Snow Crystal Morphology
- California Institute of Technology — Snowflake Myths and Nonsense
- 中谷宇吉郎 雪の科学館 — 中谷宇吉郎について
- SnowCrystals.com(Kenneth Libbrecht) — A Guide to Snowflakes
- SnowCrystals.com(Kenneth Libbrecht) — Identical-Twin Snowflakes
- 北海道大学 CoSTEP — 雪の結晶のグローバル分類(菊地勝弘 名誉教授)
- いこーよ — 雪の結晶を観察しよう(蓼科・八ヶ岳国際自然学校 取材協力)