ナイアガラの滝が少しずつ後退しているって知ってた?
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ナイアガラの滝は、今も1年に約30センチずつ上流へ下がっています。硬い岩の下にある柔らかい岩が先に削られ、支えを失った縁が崩れ落ちるからです。
約1万2500年前に生まれてから、滝は約11キロ移動しました。かつては年に1メートル以上下がっていましたが、20世紀に入って水力発電に水を回すようになり、後退は大きく遅くなっています。この記事では、滝の過去と未来を数字で追います。
1万2500年で11キロ、今は年に数十センチ
約1万8000年前、今のナイアガラ一帯は厚さ2〜3キロの氷に覆われていました。氷が退いたあと、エリー湖からオンタリオ湖へ流れ出る水は、ナイアガラ断崖と呼ばれる長い崖の低い所を見つけて落ち始めます。これが滝の始まりです。
ニューヨーク州立博物館によると、生まれたときの滝は約7マイル(約11キロ)下流、今のニューヨーク州ルイストンとオンタリオ州クイーンストンのあたりにありました。アメリカとカナダの国際合同委員会(IJC)は、約1万2500年前に滝がこの位置にあったとしています。
ヨーロッパ人による最初の記録は1604年です。フランスの探検家サミュエル・ド・シャンプランが、先住民から聞いた話として「幅1リーグほどの滝」を書き残しました。現存する最古の絵は、宣教師ルイ・エヌパンの説明をもとに1698年に描かれたものです。
滝が上流へ下がった跡が、今のナイアガラ峡谷です。峡谷は滝から下流へ11キロ続いています。長さ11キロの谷そのものが、滝が通ってきた道のりの記録です。
今の滝の大きさも数字で押さえておきます。ナイアガラ公園委員会によると、カナダ側のホースシュー滝は落差が平均57メートル、縁の幅が約670メートルです。アメリカ滝は縁の幅が約260メートルで、足元に積もった岩くずの山までの高さは21〜34メートルあります。観光シーズンの昼間には、1分間に16万8000立方メートルを超える水が縁を越えていきます。
後退の速さは、資料によって幅があります。ただ、どの資料も「昔は速く、今は遅い」という向きでは一致しています。
| 時期 | 1年あたりの後退 | 資料 |
|---|---|---|
| 過去500年あまりの平均 | 約0.9〜1.5メートル | ニューヨーク州立博物館 |
| 少なくとも過去560年 | 約1〜1.5メートル | ナイアガラ公園委員会 |
| これまでの平均 | 約1メートル | IJC |
| 現在 | 約30センチ | ニューヨーク州立博物館 |
| 現在 | 約10センチ | IJC |
今の速さを年30センチとしても、昔の3分の1から5分の1です。IJCの数字なら、10分の1まで落ちたことになります。
遅くなった最大の理由は、水の量です。ニューヨーク州立博物館は、水力発電のために川の水を取り分けたことが主な原因だと説明しています。岩を削る水そのものが減れば、削れる速さも落ちます。
崩れ方は少しずつです。IJCの委員会は、ホースシュー滝の縁から岩の塊が落ちたのを2009年・2012年・2013年の3回確認しました。どれも、ゆっくりした浸食と合う規模だったとしています。
硬い岩と柔らかい岩の重なり
滝の縁を作っているのは、ロックポート層群の硬いドロストーン(苦灰岩)です。その下には、ずっと柔らかいロチェスター頁岩があります。どちらも約4億4000万〜4億2500万年前、北アメリカ東部を覆っていた浅い海の底にたまった地層です。ロチェスター頁岩からは、腕足類や三葉虫などの化石がたくさん見つかります。
落ちる水の渦としぶきは、下の頁岩を先に削ります。すると、滝の裏側に洞穴のようなえぐれができます。上のドロストーンは下の支えを失い、やがて自分の重さで崩れ落ちます。滝の縁が上流へ一歩下がるのは、この瞬間です。
縁の形も速さを左右します。IJCによると、縁が馬蹄形のときは水が長い縁に広く分かれるので、浸食は遅くなります。反対に縁がV字に切れ込むと、水が1か所に集まり、川底を強く削ります。1678年、1764年、1842年の縁は馬蹄形でした。一方、1819年の縁はV字に近い形をしていました。
滝が今のように2つに分かれたのは、1678年より前です。川がゴート島の両側に分かれて流れるようになり、ホースシュー滝とアメリカ滝ができました。上流へ削り進んでいるのは、主に水量の多いホースシュー滝のほうです。
昼と夜で、滝の水量は2倍違う
滝に流す水の量は、アメリカとカナダが1950年2月27日に結んだナイアガラ条約で決まっています。条約は、滝の景観を守ることを両国の第一の務めとし、そのうえで水を発電などに使うと定めています。
| 期間 | 時間帯 | 滝に流す水の下限 |
|---|---|---|
| 4月1日〜9月15日 | 午前8時〜午後10時 | 毎秒2,832立方メートル |
| 9月16日〜10月31日 | 午前8時〜午後8時 | 毎秒2,832立方メートル |
| 上記以外のすべての時間 | ― | 毎秒1,416立方メートル |
下限を上回る水は両国で半分ずつ分けられ、発電所へ回されます。観光客の少ない夜や冬は、滝の水量が観光シーズンの昼の半分まで減ってよいわけです。時刻はアメリカ東部標準時で決められています。
夜に水を発電へ振り向ける運用は、そのまま岩を削る力を弱めています。ニューヨーク州立博物館が後退の遅くなった主な原因に挙げるのも、この水の取り分けです。
1万5000年後と5万年後
ニューヨーク州立博物館は、今の速さが続けば約1万5000年後に、滝が上流の柔らかい地層に届くと見ています。頁岩や岩塩を含む層です。そこに達すると削れ方が変わり、大きな滝という形は保てなくなります。ナイアガラ公園委員会は、それまでにホースシュー滝がさらに約4マイル(約6.4キロ)下がると見積もっています。
さらに先の見通しもあります。約5万年後には、川がエリー湖まで削り進み、湖の水を少しずつ抜き始めるという試算です。ナイアガラ公園委員会は、水量の少ないアメリカ滝はそれより早く、約2000年後に干上がるおそれがあるとしています。
ただし、この数字は今の条件が続いた場合の話です。気候の予測では五大湖の流域は今後乾燥すると見込まれていて、そうなれば川の水はさらに減り、後退も遅くなります。
滝の縁に見える岩の層は、4億年以上前の海の記録でもあります。地層の重なり方や、柔らかい岩から先に削れる仕組みは、写真の多い地層の図鑑で見比べると頭に入りやすい話です。
よくある疑問
- ナイアガラの滝の水が止まった例はありますか?
- アメリカ滝で一度あります。1969年6月から11月にかけて、アメリカ陸軍工兵隊が上流をせき止めて水を止めました。足元に積もった岩くずの山を調べ、滝が段々の早瀬に変わってしまうのを防げるか検討するためです。水は12月には戻りました。その後1970年代半ばに、岩には手を加えず自然に任せると決まっています。
- ナイアガラの滝は、アメリカとカナダのどちらの国の滝ですか?
- 両方にまたがっています。大きなホースシュー滝は約9割がカナダのオンタリオ州、約1割がアメリカのニューヨーク州にあります。アメリカ滝はアメリカ側です。IJCによると、川の水のうちアメリカ滝に流れるのは1〜2割で、残りはホースシュー滝を落ちます。
まとめ
ナイアガラの滝は約1万2500年で11キロ上流へ下がり、その跡が今の峡谷になりました。後退は昔の年1メートル以上から、今は年10〜30センチほどに落ちています。理由の多くは、1950年の条約に基づいて水を発電に回していることです。
今の速さなら、1万5000年ほどで滝は柔らかい地層に届きます。滝を見る機会があれば、水のカーテンの裏のえぐれと、縁の硬い岩の厚みを見比べてみてください。そこが、次の一歩を準備している場所です。
参考にした資料