5000万年前から続く、世界最古級のナミブ砂漠
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ナミブ砂漠は、アフリカ南西部の大西洋岸に沿って南北約1600キロのびる砂漠です。5500万〜8000万年前から乾燥または半乾燥の状態が続き、世界で最も古い砂漠の候補とされています。
雨はほとんど降りませんが、海から流れ込む霧が生き物の命をつないでいます。この記事ではナミブを、よく似た南米のアタカマ砂漠や世界最大のサハラ砂漠、日本の鳥取砂丘と比べていきます。
ナミブとアタカマ、大陸の西岸に並ぶ2つの砂漠
地図を見ると、ナミブ砂漠とよく似た場所にある砂漠がもう1つあります。南米チリの太平洋岸に広がるアタカマ砂漠です。どちらも南半球の大陸の西岸にあり、海岸線に沿って細長くのびています。
| 項目 | ナミブ砂漠 | アタカマ砂漠 | サハラ砂漠 |
|---|---|---|---|
| 場所 | アフリカ南西部の大西洋岸 | 南米チリの太平洋岸 | アフリカ北部 |
| 広さ・長さ | 南北約1600km、幅50〜160km | 約10万5000km²、長さ約1600km | 約920万km²(アフリカの約31%) |
| 年降水量 | 最も乾いた所で2mm、内陸の崖で200mm | 平均約15mm、1〜3mmの地点も | 大部分が20mm未満 |
| 乾いてきた期間 | 5500万〜8000万年 | 超乾燥は少なくとも中新世の中ごろから | 今の砂漠になったのは約5400年前から |
| 沖を流れる海流 | ベンゲラ海流(冷たい) | フンボルト海流(冷たい) | — |
| 霧 | 海岸部で年180日以上 | カマンチャカと呼ばれる海霧 | — |
2つの砂漠に共通するのは、沖を冷たい海流が流れていることです。冷たい海の上では空気の下のほうが冷やされ、上昇気流が起きにくくなります。雨雲は育たず、そのかわり海岸には霧が立ちこめます。ナミブの海岸では、年に180日以上も濃い霧が出ます。
冷たい海の影響は気温にも表れます。ナミブの海岸部の気温は1年を通じて9〜20度ほどで安定しています。一方、海から離れた内陸では夏の昼に45度を超え、夜は氷点下まで下がることもあります。濃い霧の出る北部の海岸は「スケルトン・コースト(骸骨海岸)」と呼ばれ、1000隻を超える難破船が残るとも言われます。
違いもあります。アタカマはアンデス山脈と海岸山脈にはさまれ、東西どちらから来る湿った空気もさえぎられています。そのため乾き方はアタカマのほうが極端で、雨を一度も記録したことのない観測点まであります。1570年から1971年まで、まとまった雨が降らなかった可能性も指摘されています。
「最も乾いた砂漠」と言えば、極地を除けばアタカマです。一方、「最も長く乾いてきた砂漠」の候補として名前が挙がるのがナミブです。アタカマも一部の地層からは非常に古い乾燥の跡が見つかっていますが、乾燥が途切れず続いたのかには疑問も出ています。
サハラとの違いは「古さ」
面積で比べると、ナミブはサハラの足元にも及びません。サハラは約920万平方キロメートルで、アフリカ大陸の約31パーセントを占めます。日本の国土の約24倍にあたる広さです。
ところが、今のような砂漠になってからの時間で比べると、立場は逆転します。北アフリカは過去800万年のあいだに、230回を超える湿った時期を経験してきました。約2万1000年ごとに雨の多い時期がめぐってくる計算です。
最後の湿った時期には、サハラにも緑が広がっていました。紀元前8000〜6000年ごろに雨が増え、紀元前4200年ごろまでに雨季をもたらす風が南へ退いていきます。乾燥が急に進んだのは約5400年前とされています。
つまりサハラは、広さでは世界最大級でも、砂漠としての今の姿は比較的新しいものです。ナミブは、恐竜が絶滅した約6600万年前の前後から乾いた状態を保ってきました。広さのサハラ、古さのナミブ、と覚えると違いがつかめます。
長く環境が変わらなかった影響は、生き物にも表れています。ナミブには、世界のどの砂漠よりも多くの固有種がすんでいる可能性があるとされます。
霧で生きる生き物たち
雨の少ない2つの砂漠では、生き物の多くが霧を水源にしています。ただ、霧の使い方には違いがあります。
ナミブの代表は、ゴミムシダマシの仲間オニマクリス・ウングイキュラリス(Onymacris unguicularis)です。霧の夜に巣穴から出て砂丘を登り、風上に向かって頭を下げ、背中を高く上げた逆立ちの姿勢をとります。体に付いた霧がしずくになり、背中を伝って口へ流れ込みます。記録では、体重の34パーセントにあたる水を一度に取り込んだ個体もいます。
植物では、ウェルウィッチアが知られています。ナミブ砂漠だけに自生し、アンゴラからナミビアの海岸沿いに1000キロ以上の範囲に分布します。生涯で葉は2枚だけで、その2枚が根元から伸び続けます。長いものでは2000年ほど生きると考えられています。生えている場所の特徴から、霧だけでなく地下水にも頼っていると見られています。
アタカマでは、カマンチャカと呼ばれる海霧のおかげで一部の地域に藻類や地衣類、コピアポア属のサボテンなどが生えています。霧が届かない内陸は生き物がきわめて少なく、土が火星に似ていることから、NASAが火星探査の機器を試す場所にもなっています。
鳥取砂丘と比べる
ナミブ砂漠の中でも、砂丘が集まった「ナミブ砂海」は約3万4000平方キロメートルあります。日本で砂丘と聞いて思い浮かぶ鳥取砂丘と並べると、意外な共通点が見えてきます。
| 項目 | ナミブ砂海 | 鳥取砂丘 |
|---|---|---|
| 広がり | 約3万4000km² | 東西約16km・南北約2km |
| 砂の出どころ | オレンジ川が大西洋へ運んだ土砂 | 千代川が日本海へ運んだ花こう岩の砂 |
| 砂を陸へ運ぶもの | 北へ向かう海流と風 | 沿岸流と季節風 |
| 年降水量 | 2〜200mm(ナミブ全体) | 約1931mm(鳥取市の平年値) |
| 保護の指定 | 2013年 世界自然遺産 | 1955年 天然記念物、1963年 国立公園 |
どちらの砂も、川が海へ運び出した土砂がもとになっています。それを海の流れが岸沿いに運び、風が陸へ吹き上げて砂丘をつくりました。仕組みは同じで、違うのは規模と時間です。
雨の量を見ると、鳥取はナミブの10倍以上の雨が降ります。砂丘は雨の少なさで生まれるのではなく、砂を運ぶ川と風がそろえば生まれます。
ナミブの砂丘には300メートルを超えるものがあり、最も高い「ビッグダディ」は約325メートルです。海岸近くには三日月形のバルハン砂丘、内陸には細長い線状砂丘、その間にはあらゆる方向の風でできる星形砂丘が並びます。
赤い砂丘とデッドフレイ、いま残っているもの
ナミブの砂丘は、ピンクから鮮やかなオレンジまで色に幅があります。赤みのもとは、砂に含まれる鉄分が長い年月をかけて酸化したことです。鉄が錆びるのと同じ現象が砂粒の表面で起きていて、古い砂丘ほど赤みが濃くなります。
砂丘のあいだには、粘土質の白い谷が点在します。ここに水が入るのはまれで、次の洪水まで何年も空くことがあります。
有名なのがデッドフレイです。かつてこの谷を潤していた川が流れを変えたため、ラクダトゲの木が立ったまま枯れました。黒く焦げたような幹と白い塩の地面、背後の赤い砂丘。この3色が、ナミブを代表する風景になっています。
霧の影響を受ける大規模な砂丘地帯を持つ海岸砂漠は、世界でここだけです。その価値が認められ、ナミブ砂海は2013年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。
ナミブの赤は、5500万年ぶんの錆の色です。写真を見るときは、色の濃い砂丘ほど年季が入っているという目で眺めてみてください。鳥取砂丘を歩くときも、足元の砂がどの川から来たのかを考えると、同じ景色が違って見えてきます。
参考にした資料