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雲はなぜ落ちてこない?空に浮かぶしくみ

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
雲はなぜ落ちてこない?空に浮かぶしくみ

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雲が落ちてこないのは、雲をつくる水の粒がとても小さく、1秒に1センチほどしか沈まないからです。この遅さなら、下から上がってくる空気の流れに押し戻されます。

雲1つが500トン近い水を抱えていても、粒の1つずつは空気に負けるほど軽いのです。この記事では仕組みを数字で確かめたうえで、ペットボトルで雲を作る実験と、空の雲を観察する方法を紹介します。

雲1つに約500トンの水

アメリカ地質調査所(USGS)は、1立方キロメートルの積雲を例に、雲の重さを計算しています。積雲の中の水は、1立方メートルあたり約0.5グラム。体積は10億立方メートルなので、水の粒だけで約50万キログラム、およそ500トンになります。

それでも落ちてこない理由は2つあります。1つは、水が1つの塊ではなく、目に見えないほど小さな粒に分かれていること。もう1つは、雲を含んだ空気のかたまりが、まわりの乾いた空気より密度が小さいことです。USGSはこれを、油が水に浮くのと同じだと説明しています。

500トンという数字には、まわりの空気の重さは入っていません。雲の重さを聞かれたら「水の粒だけで」という前置きが付く、と覚えておくと正確です。

粒が小さいほど、落ちるのは遅い

雲の粒(雲粒)は、半径0.01ミリほどです。大阪市立科学館は、代表的な雲粒の大きさをこの値で紹介しています。1ミリの100分の1という、目では1粒ずつ見分けられない大きさです。

粒が落ちる速さは、大きさでまるで違います。アメリカのユタ大学の講義資料には、気象学の教科書『Atmospheric Science』の図が載っていて、粒ごとの速さが並んでいます。

粒の大きさと落ちる速さ(ユタ大学の講義資料に載る教科書の図をもとに作成)
粒半径落ちる速さ空気1リットル中の数
雲粒の芯になるちり0.0001ミリ毎秒0.0001センチ約100万個
ふつうの雲粒0.01ミリ毎秒1センチ約100万個
大きめの雲粒0.05ミリ毎秒27センチ約1,000個
雲粒と雨粒の境目0.1ミリ毎秒70センチ―
ふつうの雨粒1ミリ毎秒6.5メートル約1個

ふつうの雲粒は、1秒に1センチしか沈みません。高さ1,000メートルの雲の底から地面までまっすぐ落ちるとすると、10万秒、つまり28時間近くかかる計算です。半径が100倍の雨粒なら、同じ道のりを3分足らずで落ちてきます。

実際には、雲粒がそこまで長く旅をすることはまずありません。ハワイ大学で公開されている気象学の教科書によると、雲の下の空気が乾いていれば、粒は地面に届く前に蒸発します。

さらに、空気は止まっていません。地面で温められた空気は、あちこちで立ちのぼっています。上がる速さが毎秒1センチを超えていれば、粒は沈むどころか持ち上がります。雲ができる場所は、もともと空気が上がっている場所です。同じ教科書によると、粒が育って落ちる速さが上昇気流を上回ったとき、初めて雨になります。

ペットボトルで雲を作って確かめる

雲ができる条件は、家でも再現できます。兵庫県立大学の学術情報リポジトリで公開されている中学生向けの授業案では、炭酸飲料の気が抜けるのを防ぐ、ポンプ付きのキャップ(炭酸キーパー)を使います。

  1. 500ミリリットルほどのペットボトルに水を入れてよく振り、中を濡らしてから水を捨てる
  2. 火をつけた線香の煙を、逆さにしたボトルの中に5秒ほど入れる
  3. 炭酸キーパーを閉め、ポンプを200回押す
  4. キャップを一気に開け、ボトルの中を見る

キャップを開けた瞬間、ボトルの中が白く曇ります。これがボトルの中の雲です。押し込まれていた空気が一気に膨らむと、温度が下がります。冷えた空気に入りきらなくなった水蒸気が、煙の粒を芯にして水の粒に変わるのです。

授業案では、煙を入れない場合や、ポンプを20回にした場合とも比べます。煙を入れたほうが雲はできやすく、ポンプの回数が少ないと雲は薄いか、すぐに消えます。空では、煙の代わりに海の塩の粒や土ぼこりが芯になります。線香の火は大人が扱ってください。

空の雲で確かめる3つの観察

ボトルの雲で仕組みをつかんだら、本物の雲でも確かめられます。どれも晴れた日の昼に、空を見上げるだけでできる方法です。

  1. 雲の底の高さを計算する:もくもくした積雲なら、地上の気温と露点温度の差に125メートルを掛けると、雲の底のおよその高さが出ます。カナダのブリティッシュコロンビア大学の講義資料にある式で、気温20℃・露点14℃なら、差の6℃×125メートルで約750メートルです。露点温度は、空気を冷やしたときに水滴ができ始める温度で、気温と湿度から計算サイトで求められます。平たく広がった雲には使えません。
  2. 小さな積雲を5分おきに撮る:同じ場所から同じ方向に向けて、同じ雲を何枚か撮ります。ふちが崩れて薄くなる所と、盛り上がる所が見つかるはずです。粒が蒸発して消える場所と、新しく生まれる場所が、1つの雲の中に並んでいます。
  3. 雲の形で見分ける:気象の観測では、雲を10種類(十種雲形)に分けます。羽田空港の東京航空地方気象台によると、積み重なった「積雲」の仲間と、平らに広がった「層雲」の仲間が大きな2つの系統です。①の式が使えるのは、積雲の仲間だけです。

雲粒が100万個集まると雨になる

雲粒が雨粒になるまでには、2つの段階があります。大阪市立科学館によると、粒がまだ小さいうちは、まわりの水蒸気を取り込んで少しずつ育ちます(凝結過程)。ある程度育って落ち始めると、落ちる速さの違う粒とぶつかって合体し、どんどん大きくなります(併合過程)。

ふつうの雨粒は半径1〜2ミリで、雲粒の100倍以上あります。体積は半径の3乗で増えるので、半径1ミリの雨粒1個には、雲粒がおよそ100万個必要です。同館は、半径2ミリの雨粒なら体積で800万倍になると書いています。

育った雨粒は、絵本に出てくるしずくの形をしていません。小さい雨粒は球形ですが、少し大きい雨粒は空気の抵抗を受けて、下が平らな「お饅頭」の形になります。半径4ミリほどまで育つと、それ以上は割れて小さな粒に戻ります。

雲の種類の見分け方や、雨や雪になるまでの道筋は、写真と図で追うほうが分かりやすい話です。空の雲の名前をその場で確かめたいなら、雲の図鑑が手元にあると便利です。

よくある疑問

空気が澄んでいると、雲はできませんか?
芯になる粒がなければ、雲はほとんどできません。NASAの解説によると、ちりなどが全くない空気では、相対湿度が数百パーセントに達するまで水滴ができません。『最新 地学事典』は、その目安を400%としています。実際の空には塩の粒や土ぼこりが漂っているので、湿度100%をわずかに超えたところで雲粒が生まれます。日本大百科全書は、実際の大気で起きる湿度の超え方は、高々1%ほどだとしています。
雲の粒は、全部が水なのですか?
高いところの雲には、氷の粒も混ざります。ただし、0℃を下回ってもすぐには凍りません。凍るきっかけになる粒がないと、水の粒はマイナス40℃近くまで液体のままでいられます。NASAによると、そうした粒は数が少なく、凍り始めるのはマイナス15℃前後からのことが多いとされます。

まとめ

雲が落ちてこないのは、半径0.01ミリの粒が1秒に1センチしか沈まず、上がってくる空気に押し戻されるからです。500トンの水も、数え切れないほどの小さな粒に分かれていれば、空に浮いていられます。

粒が合体して半径1ミリほどまで育つと、落ちる速さは毎秒6メートルを超え、雨になって地上に届きます。次に晴れた日には、積雲を1つ選んで5分ごとに撮ってみてください。崩れていくふちと、盛り上がるふちが見えたら、そこが粒の消える場所と生まれる場所です。

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