くしゃみをするとなぜ目を閉じる?体の反応
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くしゃみで目が閉じるのは、自分の意志とは関係なく起きる反射です。鼻への刺激が脳の延髄に届き、息を吐き出す筋肉と一緒に、まぶたの筋肉にも指令が出ます。
ただし「なぜ閉じるのか」は、まだ決着していません。よく聞く「目を守るため」も、有力な説の1つにとどまります。この記事では、くしゃみと目にまつわる疑問を順に取り上げ、最後に花粉の季節に使える道具を紹介します。
くしゃみで目が閉じるのは、自分の意志?
意志ではなく反射です。くしゃみの反射は、鼻から脳へ向かう信号と、脳から筋肉へ戻る指令の2段階でできています。
鼻の粘膜には、三叉神経という感覚の神経が伸びています。ほこりや花粉が粘膜を刺激すると、その信号は三叉神経を通って脳幹に届きます。受け取った延髄は、今度は体じゅうの筋肉へ指令を送り返します。
指令を受けた横隔膜や肋間筋が、息を大きく吸い込んでから一気に吐き出します。これが、くしゃみです。この流れの中で、まぶたの筋肉も勝手に縮みます。本人が「つぶろう」と思う前に目が閉じるのは、このためです。
まぶたを閉じているのは、どの筋肉?
目のまわりを輪のように囲む、眼輪筋(がんりんきん)です。この筋肉を動かしているのは、顔の表情をつくる顔面神経です。
まぶたを閉じられる筋肉は、眼輪筋だけです。普段のまばたきも、眠るときに目を閉じるのも、この筋肉の仕事です。くしゃみのときは、延髄から出た指令が顔面神経にも伝わり、眼輪筋が呼吸の筋肉とほぼ同時に縮みます。
くしゃみの前後に、顔全体がくしゃっと歪むのも同じ理由です。頬や鼻のまわりの筋肉も、同じ顔面神経につながっています。逆に、顔面神経がまひするベル麻痺などでは、まぶたを閉じられなくなることがあります。まぶたの開け閉めは、それほど顔面神経に頼っています。
なぜ目を閉じるのか、分かっている?
はっきりとは分かっていません。いくつかの説が並んでいる状態です。
岡山県立図書館がまとめた調査回答は、3つの説を並べて紹介しています。
- 強い息から目を守るための仕組み
- 目を閉じると頬が持ち上がり、鼻の通りが良くなる
- 刺激を受けた神経のつながりで、自然に連動しているだけ
アメリカのパデュー大学で看護学を教えるメグ・ソーグは、2021年の解説記事で「病原体が目に入る機会を減らす」という見方を紹介しています。ただし、くしゃみのたびに目を開けさせて比べた実験はありません。「目を守るため」は筋の通った説明ですが、確かめられた事実ではありません。
目を開けたまま、くしゃみはできる? 眼球は飛び出す?
目を開けたままでも、くしゃみは出せます。反射とはいえ、意識して力を入れればまぶたを開けておけます。百科事典やソーグの解説も、「目を開けたままでは不可能」という話は誤りだとしています。
「目を開けたまま、くしゃみをすると眼球が飛び出す」という話も根拠がありません。ソーグは、これをよく広まった俗説として挙げています。眼球は眼窩(がんか)という骨のくぼみに収まり、6本の外眼筋で支えられています。くしゃみの圧力で外れるような作りではありません。
裏を返せば、目を閉じる動きはくしゃみに欠かせない条件ではありません。体はなぜか毎回セットで動かしている。分かっているのは、そこまでです。
くしゃみの息は、どれくらい速い?
よく「時速160キロ(100マイル)」と言われますが、測り方で数字は大きく変わります。ソーグの記事は、飛沫が時速100マイルほどで飛ぶこともある、とする計算の研究を紹介しています。
一方、2013年にシンガポール国立大学病院などの研究チームが学術誌PLoS ONEで発表した実験では、値はかなり控えめでした。コショウでくしゃみを起こした6人を、空気の流れが見える特殊な撮影法で調べています。見えた息の広がりは最大0.6メートルで、そこから求めた速さは最大で秒速4.5メートル、時速にして約16キロでした。
どちらにしても、目のすぐ下にある鼻と口から、短い時間に強い息が出ることは変わりません。目を閉じる理由として「目を守る説」が根強いのは、この勢いを考えると自然です。
まぶしい光でくしゃみが出るのはなぜ?
暗い所から日なたへ出た瞬間に、くしゃみが出る人がいます。光くしゃみ反射と呼ばれ、英語では頭文字を取ってACHOO(アチュー)症候群という呼び名もあります。
珍しい体質ではありません。2019年に学術誌サイエンティフィック・リポーツに載った中国の研究では、3,417人のうち25.6%が「光でくしゃみが出る」と答えました。男性では30.1%、女性では21.1%です。
仕組みは、まだよく分かっていません。この論文は、鼻の刺激を伝える三叉神経が関わっている可能性を挙げる一方で、光は三叉神経を直接刺激できないとも書いています。目に入った光が、脳の中のどこかで鼻の反射に混線しているらしい。そこまでは言えても、混線の場所は特定されていません。
同じ論文は、アメリカ軍の研究も紹介しています。それによると、くしゃみの引き金になるのは光の色ではなく、明るさの変化です。暗い所から急に明るい所へ出るような、明るさが大きく変わる瞬間が引き金になります。
くしゃみの元を減らす道具は?
花粉の季節は、鼻と目の両方に花粉が入ってきます。環境省の「花粉症環境保健マニュアル」は、花粉を体に入れない工夫を、実験の数字とともに紹介しています。
| 工夫 | 減らせる量 |
|---|---|
| マスクをつける | 吸い込む花粉がおよそ3分の1〜6分の1 |
| ふつうのメガネをかける | 目に入る花粉がおよそ40%減 |
| 防御カバー付きの花粉用メガネ | 目に入る花粉がおよそ65%減 |
| 換気の窓を10cmほどにし、レースのカーテンを引く | 室内に入る花粉がおよそ4分の1 |
マニュアルは、マスクは顔にぴったり合うことが大事だとしています。一方で、さまざまな花粉症グッズについて「症状を改善する十分なデータは得られていない」とも書いています。道具で減らせるのは入ってくる花粉の量で、症状がどれだけ軽くなるかは人によって違います。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。
不織布マスク:アイリスオーヤマ ふんわりやさしいマスク ふつうサイズ 100枚入(PK-FY100L) 約1,551円。ポリプロピレンの不織布で、ノーズフィッターと立体ワイヤーで鼻まわりの形を合わせます。大きさは幅約17.5×高さ約9センチです。
向いている人:花粉の季節に毎日取り替えたい人。注意:顔が小さめの人は「小さめ」サイズを選ばないと、横に隙間ができます。
花粉対策メガネ:トーアボージン 保護メガネ TOA80シリーズ T81 PCF 約1,133円。フレームがしなる軽い保護メガネで、重さは27グラム。くもり止めのレンズで、マスクと一緒に使えます。
向いている人:ふだんメガネをかけない人。向かない人:度付きのメガネが手放せない人(度は入っていません)。ふつうのメガネでも目に入る花粉はおよそ40%減るので、まずは今のメガネで様子を見る手もあります。
まとめ
くしゃみで目が閉じるのは、延髄からの指令が呼吸の筋肉と眼輪筋に同時に届く反射です。目を開けたままでも、くしゃみは出せます。眼球が飛び出すこともありません。閉じる理由は「目を守るため」が有力ですが、確かめられた答えはまだありません。
次にくしゃみが出そうになったら、まぶたの動きに注意を向けてみてください。日なたに出た途端にくしゃみが出るなら、4人に1人ほどいる「光くしゃみ」の体質です。
参考にした資料
- レファレンス協同データベース(国立国会図書館) — くしゃみをする時に目を閉じてしまうのはなぜか。
- The Conversation — Why do we sneeze? Why do your eyes close? A pediatric nurse explains the science of sneezing
- 日本医事新報社 — 温度差によるくしゃみ誘発のメカニズムは?
- Wikipedia — Sneeze(反射の経路、目を開けたままのくしゃみ)
- Wikipedia — Orbicularis oculi muscle(眼輪筋と顔面神経)
- PLoS ONE(Tang ほか, 2013)— Airflow Dynamics of Human Jets: Sneezing and Breathing
- Scientific Reports(Wang ほか, 2019)— A genome-wide association study on photic sneeze reflex in the Chinese population
- 環境省 — 花粉症環境保健マニュアル Ⅲ 花粉症の予防と治療