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クマノミは全員オスで生まれてくるって知っていますか?

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
クマノミは全員オスで生まれてくるって知っていますか?

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クマノミは、群れの全員がまずオスとして育ち、その中で最も大きな1匹だけがメスになります。メスがいなくなれば、相手だったオスがメスに変わって後を継ぎます。

性別が遺伝子ではなく、群れの中の順位で決まる魚です。この記事では、クマノミの性別について浮かぶ疑問を順に取り上げます。

クマノミは、生まれたときからオスなの?

正確には、オスにもメスにもなれる体で育ちます。岡山理科大学の岩田惠理教授によると、成熟する前のクマノミ類の生殖腺は、1つの臓器の中に卵巣の部分と精巣の部分の両方を持っています。

群れで2番目の順位になると精巣の部分が増え、オスとしてはたらき始めます。1番になると精巣の部分は縮み、卵巣の部分だけが残ってメスになります。成熟するときはオスが先なので、こうした性質を「雄性先熟」と呼びます。フロリダ自然史博物館も、すべての個体はまずオスとして育ち、のちにメスになる可能性があると説明しています。

岩田教授は、クマノミ類の性別は遺伝情報ではなく、群れの中の社会順位で決まると書いています。人のように、生まれる前から性別が決まっている魚ではありません。

クマノミの仲間は世界に28種が知られ、2025年にはポリネシアで新しい種が報告されました。日本の沿岸には、そのうち6種がすんでいます。映画で有名なカクレクマノミは、琉球列島から東南アジア、オーストラリア北西部までの暖かい海にすむ種です。水深3〜15メートルほどのサンゴ礁で暮らし、体長は最大でも11センチほど、野生での寿命は6〜10年と考えられています。

イソギンチャクの中では、だれが何をしているの?

クマノミは、イソギンチャクを住みかにします。体を覆う粘液のおかげで、触手の毒針に刺されません。住みかにするときは、まわりを泳ぎながら腹や鰭を触手にこすりつけて、少しずつ慣らしていきます。宿主になるイソギンチャクは、10種ほどに限られます。

この同居は、イソギンチャクの側にも得があります。クマノミは、イソギンチャクを食べに来る魚を追い払い、付いた寄生虫を取り除きます。鰭の動きで触手のまわりの水が入れ替わり、酸素も届きやすくなります。2005年の研究では、クマノミのふんに含まれるアンモニウムが、イソギンチャクの成長と再生を早めることも報告されました。

1つのイソギンチャクには、数匹のクマノミがまとまって暮らします。役割は体の大きさの順に決まっています。

1つのイソギンチャクに暮らすクマノミの役割(フロリダ自然史博物館などの資料をもとに作成)
順位性別役割
1番(最も大きい)メス卵を産む。1回に100〜1,000個
2番オス卵を受精させ、ふ化まで守る
3番以下(0〜4匹)成熟していないオス繁殖しない。上の席が空くのを待つ

メスは、イソギンチャクの近くの岩に長さ3〜4ミリのオレンジ色の卵を産みます。卵の世話はオスの仕事です。鰭であおいで新しい水を送り、受精しなかった卵やカビの生えた卵を食べて取り除きます。卵は6〜8日でふ化し、子どもは8〜12日ほど海を漂ってから、自分の住むイソギンチャクを探します。

メスがいなくなったら、どうなるの?

相手だったオスがメスに変わります。同時に、3番目だった個体が急に体を大きくして、繁殖するオスの席に就きます。カリフォルニア大学バークレー校の解説も、メスを取り除くと相手のオスがメスに性転換し、次に大きな個体が急に成長して成熟したオスになると説明しています。

順位が1つずつ繰り上がるので、群れはペアを失っても続きます。上の席が空くまで待っていた個体にとっては、この時が出番です。それまで抑えられていた成長が、席が空いたとたんに始まります。

ただし、オスからメスへの切り替えはすぐには終わりません。卵巣だけの体に作り替えるのには、数か月から数年かかることがあるとされています。岩田教授の解説では、ハゼの仲間のオキナワベニハゼは4日ほどで性転換します。それと比べると、クマノミはゆっくり変わる側の魚です。

下の順位のクマノミは、なぜ大きくならないの?

えさが足りないからではありません。自分で成長を抑えていると考えられています。

研究者のピーター・ブストンは、2003年に科学誌「ネイチャー」で、クマノミが群れの順位に合わせて体の大きさと成長の速さを調整していると報告しました。下の個体は、すぐ上の個体との体格差を一定に保ちます。同じ年の別の論文では、混み合ったイソギンチャクでは、上の個体が下位の個体を追い出すことも示されています。

下の個体が大きくなりすぎると、住みかを追われるおそれが高まると考えられています。小柄な体のまま過ごすのは、追い出されずに順番を待つ作戦です。

群れの中では、音のやりとりもあります。順位の高い個体は長く続く音を出しながら下の個体を追いかけます。下の個体は、短い音を出しながら頭を振って従う姿勢を見せます。音は顎と歯で鳴らし、浮き袋で大きくしています。

なぜ、大きいほうがメスなの?

卵は精子よりずっと大きく、作るのに体の大きさが要るからです。体が大きいメスほど、たくさんの卵を産めます。一方でオスは、体が小さくても卵を受精させるのに足りる精子を作れます。

そのため、群れで最も大きな1匹がメスになったほうが、ペアが残せる子の数は多くなります。この考え方は「サイズ有利性モデル」と呼ばれ、1969年の生物学者マイケル・ギゼリンの論文が出発点とされています。

実は、魚の性転換ではクマノミのほうが少数派です。性転換する魚は約500種が知られていますが、そのおよそ75%はメスからオスに変わる「雌性先熟」です。ベラの仲間がその代表で、大きなオスが縄張りを守って繁殖します。北米の太平洋岸にすむカリフォルニアシープヘッドというベラは、全員がメスとして生まれ、4〜6年をメスとして過ごしてからオスに変わります。オスどうしの縄張り争いで体の大きさがものを言う魚では、大きいほうがオスになると有利です。クマノミのようにペアで暮らす魚では、卵の数が効くので、大きいほうがメスになります。

この仕組みは、いつ分かったの?

1977年です。ハンス・フリッケとシモーネ・フリッケが、科学誌「ネイチャー」にクマノミの研究を発表しました。論文の題名は「サンゴ礁の魚における一夫一妻と、攻撃的な優位による性転換」です。メスが下の個体を攻撃して順位を保ち、群れに2匹目のメスを生まれさせない。この仕組みを示した研究です。

2003年には、カクレクマノミが主人公の映画「ファインディング・ニモ」が公開されました。映画では、母親を失った父親が息子を育てます。現実のクマノミの仕組みに当てはめると、母親がいなくなった時点で、父親はメスに変わる立場です。

生殖腺が作り替わる様子や、ほかの性転換する魚との違いは、写真や絵で見比べると分かりやすくなります。クマノミの暮らしを順を追って描いた絵本や、魚の図鑑が手がかりになります。

まとめ

クマノミは卵巣と精巣の両方のもとを持って育ち、群れで1番大きくなるとメス、2番目ならオスになります。メスがいなくなると、オスがメスに、3番目がオスにと順位が繰り上がります。大きいほうがメスなのは、体が大きいほど多くの卵を産めるからです。

水族館でクマノミの水槽を見たら、イソギンチャクのまわりにいる個体の大きさを比べてみてください。いちばん大きな1匹がその群れのメスで、2番目がその相手のオスです。

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