生き物

昆虫が未来の食料として注目されているって本当か

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
昆虫が未来の食料として注目されているって本当か

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昆虫が未来の食料として注目されているのは本当です。国連食糧農業機関(FAO)が2013年に食用昆虫の報告書を出してから、世界的な議論が始まりました。たんぱく質が多く、牛や豚より少ない餌と場所で育つことが理由です。

ただし、明日から主食になるという話ではありません。アレルギーのように、残っている課題もはっきりしています。この記事では注目の理由を確かめたうえで、店で昆虫食を見かけたときに、表示から何が読み取れるかを順に紹介します。

きっかけは2013年のFAO報告書

話題の出発点は、FAOが2013年5月に出した報告書「Edible insects」です。国連のニュースによると、報告書は世界で約20億人がすでに昆虫を食事に取り入れていることを示しました。知られている約100万種の昆虫のうち、人が食べているのは1,900種です。

背景にあるのは人口の増加です。FAOは2050年に世界の人口が約90億人に達すると見こみ、限られた土地と水で必要なたんぱく質をまかなう方法を探しています。報告書は人が食べる話だけでなく、家畜や養殖魚の餌としての使い道も同じ重さで扱っています。FAOは、昆虫が栄養の足りない子どもの食事を補う食べ物として特に大切だとも説明しています。昆虫を採ったり育てたりする仕事が、途上国から先進国まで新しい商売の機会になるという見方も示しました。

少ない餌で育つのはなぜ?

FAOの解説では、同じ量のたんぱく質を作るのに必要な餌の量に、大きな差があります。コオロギを1とすると、次のようになります。

同じ量のたんぱく質を作るのに必要な餌(コオロギを1とした場合)
生き物必要な餌
コオロギ1
豚・肉用の鶏約2倍
羊約4倍
牛約6倍

体重を1キロ増やすのに、昆虫は平均で餌2キロ、牛は8キロほどが必要です。温室効果ガスも少なく、豚は体重1キロあたりでミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)の10〜100倍を出すと報告されています。アンモニアの排出も、一般に家畜より少なめです。必要な土地や水、餌が少なければ、農地や森林や漁業の資源への負担も和らげられる。FAOが昆虫に期待するのは、この点です。

差が付く理由として、FAOは昆虫が変温動物であることを挙げています。牛や豚は食べた物の多くを体温の維持に使いますが、昆虫にはその必要がありません。食べた分を、そのまま体を作ることに回せるのです。さらに生ごみなどの有機物を餌にできる種類が多く、人の食べ物と餌を奪い合いにくい利点もあります。

日本では伊那谷の郷土料理

昆虫食は新しい流行ではありません。農林水産省の「うちの郷土料理」は、長野県南部の伊那谷に古くから昆虫食の文化が根付いていると紹介しています。伊那谷で食べられてきたのは、いなごや蜂の子、かいこやざざむし(川にすむ虫の幼虫)などです。

同じページによると、昆虫は以前、少ない動物性たんぱく質をとるための栄養源として食べられていました。いなご(稲子)は稲刈りのころに採れることが名前の由来で、9月から10月に腰に下げた布袋へ手で捕まえて入れたそうです。一晩おいてから熱湯をかけ、足と羽を取る。それを砂糖としょうゆ、酒で煮るのが、いなごの佃煮の作り方です。

蜂の子は、長野県に限らず全国の山間部で食べられてきました。餌に糸を付けて蜂に運ばせ、土の中の巣を探し当てる昔ながらの方法も伝わっています。

店で見かけたら表示で確かめる4つのこと

コオロギ入りの菓子や、いなごの佃煮を見かけたら、袋の裏の表示を読んでみてください。次の4つを確かめると、その食品の中身がかなり分かります。

  1. 原材料名で、何の虫がどんな形で入っているかを見る:「コオロギパウダー」のように粉で混ぜた物か、いなごのように姿のまま煮た物か。原料の産地も、ここに書かれています。
  2. 栄養成分表示のたんぱく質を、100gあたりで比べる:同じ昆虫でも、乾かした物と砂糖で煮た物では数字が大きく違います。欧州食品安全機関(EFSA)の評価では、乾燥ミールワームのたんぱく質は100gあたり平均58.4gでした。楽天市場で売られている、ある商品のいなご甘露煮の表示は100gあたり18.1g(推定値)です。
  3. たんぱく質の数字は多めに出やすいと知っておく:たんぱく質は、食品に含まれる窒素の量から計算するのが一般的です。昆虫の殻にはキチンという窒素を含む物質があるため、その分だけ数字が大きくなります。EFSAは乾燥ミールワームに専用の換算の係数を使うと、約44.5gまで下がると示しました。
  4. アレルギーに関する注意書きを読む:日本の食品表示では、昆虫は表示が義務づけられた特定原材料にも、それに準ずる品目にも入っていません(2022年の政府答弁書)。えびやかにと違って表示の義務はないため、注意書きの有無は商品によって違います。

4つ目は、昆虫と甲殻類のアレルゲンが似ているためです。EFSAの評価書は、乾燥ミールワームが甲殻類やダニにアレルギーを持つ人にアレルギー反応を起こしうると明記しました。国立医薬品食品衛生研究所が2023年度に国内の市販品12点を調べた研究でも、すべての検体から、甲殻類の主なアレルゲンであるトロポミオシンの検査に反応するタンパク質が見つかっています。このアレルゲンは熱に強く、加熱しても残る可能性があると報告されています。

伊那谷の味を試すための食品

表示を自分で読み比べるには、まず1つ手に取ってみるのが早道です。郷土料理の2品を選びました。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。

いなごの佃煮:こんにゃく屋生田目屋 いなご甘露煮 100g 約1,000円。砂糖やしょうゆ、水あめ、みりんで煮た甘露煮です。常温で保存できます。
向いている人:まず少量で、昔ながらの佃煮の味を確かめたい人。注意:原料のいなごは中国産で、原材料の一部に小麦を含みます。100gあたりの食塩相当量は5.3gと表示されています。

蜂の子:須坂食品工業 蜂の子甘露煮 80g 2本セット 約4,650円。長野県の会社の瓶詰めで、クロスズメバチの幼虫を甘露煮にしています。
向いている人:いなごと食べ比べて、地域ごとの昆虫食の違いを知りたい人。向かない人:手ごろな値段で試したい人。原料の蜂の子は中国産で、小麦と大豆を含みます。

どちらの商品にも、甲殻類との交差反応についての表示があるとは限りません。上の4つ目の点は、買う前の表示の確認に役立ちます。

よくある疑問

ヨーロッパでは、昆虫は食品として認められていますか?
認められています。EFSAが2021年1月に乾燥ミールワームの評価を公表し、EUは同じ2021年に、昆虫で初めての新しい食品として販売を認めました。最初に認められたのは、丸ごと乾かした物と、ほかの食品の材料に使う形です。同じ年の11月には2例目として、トノサマバッタの冷凍品・乾燥品・粉末が認められました。どちらも、アレルギーについての表示が求められています。

まとめ

昆虫食が注目されるのは、2013年のFAO報告書が、少ない餌と土地でたんぱく質を作れる点を示したからです。コオロギが同じたんぱく質を作るのに必要な餌は、牛の6分の1ほどです。一方で、甲殻類と似たアレルゲンを含むという課題も残っています。

日本にも、伊那谷のいなごや蜂の子のように長い歴史があります。店でコオロギ入りの菓子や佃煮を見かけたら、まず袋を裏返して、原材料名と栄養成分表示を読んでみてください。

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