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昆虫の耳が頭ではなく意外な場所にあるって本当か

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
昆虫の耳が頭ではなく意外な場所にあるって本当か

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昆虫の耳が頭にないのは本当です。バッタの耳はお腹に、コオロギやキリギリスの耳は前あしにあり、カマキリは胸の裏側に耳が1つしかありません。

耳に必要なのは、音で震える膜とそれを感じる神経だけです。そのため昆虫の耳は、種類ごとに体のあちこちで別々に生まれました。場所の一覧から仕組み、よくある誤解、身近な虫の例まで順に見ていきます。

結論:耳は胸・腹・あしにある

昆虫の耳は、多くが「鼓膜器官」と呼ばれるつくりです。ある場所は、グループごとに大きく違います。代表的な例を表にまとめます。

昆虫の耳の場所
昆虫耳の場所ひとこと
バッタ腹部の第1節の側面後ろあしの付け根の近くに左右1つずつ
コオロギ・キリギリス前あしのすね人でいえば、ひざのすぐ下
カマキリ胸の裏側の真ん中耳は1つだけ
シャクガ腹部の第1節左右一対
クサカゲロウ翅の脈の付け根の下側昆虫の中でもほかにない場所
オルミア(寄生バエ)胸の前側の下面左右の耳の間は約0.5ミリ
蚊触角の付け根鼓膜のない「ジョンストン器官」

口の部分に耳を持つ昆虫も知られています。表のとおり耳の場所はバラバラで、「昆虫の耳はここ」と1か所には決められないのです。

仕組み:膜と神経があれば耳になる

鼓膜器官の基本は単純です。薄い膜が音で震え、その裏にある感覚細胞が震えを神経の信号に変えます。人の耳のように、頭の骨の中に耳小骨や渦巻き管を組み込む必要はありません。神経が届く場所で膜が張れれば、どこでも耳になります。

実際、昆虫の耳は進化の中で20回以上、別々のグループで生まれたと考えられています。鼓膜器官が見つかっているのは、昆虫の「目」のうち少なくとも7つ。それぞれが自分の体のつごうのよい場所に耳を作った結果が、表のばらつきです。

小さくても、つくりは驚くほど人に近いことがあります。2012年、英ブリストル大学のフェルナンド・モンテアレグレ=Z氏らは、南米のキリギリスの一種コピフォラ・ゴルゴネンシスの耳を調べました。前あしの耳は長さ1ミリに満たないのに、3つの部品がそろっていました。

音を受け取って強め、高さごとに分ける。人の耳と同じこの手順が、あしの中に収まっていたのです。ただし音を感じる毛の細胞は14〜70個で、人の1万7000〜2万4000個とは桁が違います。

コオロギでも、2019年に北海道大学の研究グループが似た仕組みを報告しました。コオロギの前あしの耳は、前と後ろの2枚の鼓膜でできています。その内側にある「上皮コア」という構造が、鼓膜の震えをリンパ液の流れに変え、音の高さを聞き分けているとみられます。祖先はまったく違うのに、人とコオロギは同じ原理にたどり着いたことになります。

小さな体で向きを聞き分ける工夫

耳の場所がバラバラなのには、体の小ささも関係しています。人は左右の耳に届く音の時間差や大きさの差で、音の来る向きを知ります。ところが体長3ミリのバッタが5キロヘルツの音を聞くと、音の波の長さは7センチ。左右の耳が1ミリしか離れていなければ、届く時間の差は約3マイクロ秒しかありません。

コオロギは、この問題を体の中の管で解いています。音は鼓膜の外側だけでなく、体の横の気門から気管を通って内側にも届きます。内と外の音のずれが、向きによって変わる仕組みです。メスは、体の向きから1〜2度ずれただけのオスの声にも向きを変えます。

さらに極端なのが、コオロギに寄生するハエのオルミア・オクラケアです。左右の耳の間は約0.5ミリ。2つの鼓膜を橋のような部品でつなぎ、わずかな差を大きく広げます。正面から90度ずれた音では、左右の差を約50マイクロ秒まで引き伸ばします。正面から約2度ずれた音を区別でき、この耳で鳴いているコオロギを探し当て、幼虫を産みつけます。幼虫はコオロギの体に潜りこんで育ち、約7日後に外へ出てきます。この耳をまねて、補聴器向けのマイクを作る研究も行われました。

よくある誤解

誤解1:触角が昆虫の耳。触角で音を聞く昆虫はいますが、一部です。蚊は触角の付け根にある「ジョンストン器官」で、空気のゆれを直接とらえます。ハチやアリの仲間は鼓膜器官を持たず、このジョンストン器官を使います。

誤解2:鳴く場所と聞く場所は同じ。コオロギやスズムシは、左右の翅をこすり合わせて鳴きます。その声を受け取るのは、相手の前あしの耳です。声を出す器官と聞く器官は、まったく別の場所にあります。

誤解3:昆虫はみな耳を持っている。鼓膜器官が見つかっている「目」は少なくとも7つで、昆虫全体から見れば一部です。ハチやアリのように、鼓膜のない器官で空気のゆれを感じる仲間もいます。

身近な例:秋の虫、カマキリ、蚊

コピフォラの耳は10〜50キロヘルツによく反応しますが、仲間の鳴き声は18〜23キロヘルツほどです。研究者は、コウモリのような天敵の声も聞いているのではないかとみています。秋の鳴く虫の耳も、仲間の声を聞くだけの道具ではないのかもしれません。

カマキリの耳は、胸の裏側、後ろあしの付け根の間の真ん中に1つだけあります。1980年代、コーネル大学の大学院生だったデイヴィッド・ヤーガーが見つけ、一つ目の巨人にちなんで「キュクロプスの耳」と名づけられました。聞いているのは、人には聞こえない2万ヘルツを超える超音波です。コウモリの声を感じると、カマキリは地面に向かってらせんを描くように急降下します。

ガも同じ相手に備えています。ヤガの仲間の耳には、感覚細胞が片耳に2個しかありません。それでも20〜50キロヘルツによく反応します。研究者ケネス・ローダーの観察では、ガは遠くのコウモリの小さな声を聞くと離れるように飛びました。近くで大きな声がすると、不規則に飛び回ってかわします。感覚細胞2個でも、コウモリとの距離に応じて逃げ方を変えられるのです。

蚊のジョンストン器官には、最大で約1万6000個の感覚細胞が集まっています。人のうずまき管に匹敵する数です。メスの羽音は弱く、オスはこの器官でその羽音をとらえてメスを見つけます。夏の夜に耳元で聞こえる「プーン」という音は、蚊どうしの合図でもあるのです。

よくある疑問

昆虫は人に聞こえない音も聞いているのですか?
はい。カマキリやガは2万ヘルツを超える超音波を聞き、コウモリから逃げるのに使っています。人の耳には聞こえない高さです。
昆虫の耳はどれくらい小さいのですか?
キリギリスの一種コピフォラの耳は長さ1ミリに満たず、動物の耳の中でも最小級です。中の部品は、人の耳の同じ部分のおよそ100分の1の大きさしかありません。
カマキリは耳が1つで困らないのですか?
カマキリの耳は1つですが、中には最大4枚の鼓膜があります。コウモリの声を聞いて急降下する逃げ方は、研究で約8割の割合で成功していました。接近を知ってすぐ逃げるには、1つの耳で十分に役立っています。

まとめ

昆虫の耳は、膜と神経さえあれば、どこにでも作れます。そのため20回以上も別々に生まれ、腹・あし・胸・翅・触角と、場所がバラバラになりました。小さな体で向きを聞き分けるために、気管や鼓膜をつなぐ橋のような独自の工夫も生まれています。

秋の夜にコオロギの声を聞いたら、その声は相手の前あしのすねで受け取られていると思い出してみてください。

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