雑学

国が違えばお金も違う、為替という仕組みとは

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
国が違えばお金も違う、為替という仕組みとは

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為替とは、ある国のお金を別の国のお金に交換するときの比率のことです。1ドルが何円になるかは、国や銀行が決めているわけではありません。世界中の売り買いのバランスで決まり、平日はほぼ休みなく動き続けています。

相場が毎日動く今の仕組みは、1973年に始まった比較的新しいものです。この記事では為替の数字が決まる仕組みと、よくある誤解を見ていきます。両替の数字がニュースと違う理由も取り上げます。

為替相場は「交換の比率」

日本銀行は為替相場を、外国為替市場で異なる通貨が交換されるときの交換比率と説明しています。1ドル150円なら、1ドルと150円が同じ値打ちとして扱われるということです。

これが140円になれば、少ない円で1ドルが買えるので円高です。160円になれば、同じ1ドルに多くの円が要るので円安です。数字が大きくなるほど円の力は弱くなる、という向きに注意してください。

円安が進むと、輸入した小麦や燃料の値段は上がります。同じ量を買うのに、より多くの円が必要になるからです。一方で、海外に商品を売る企業は、同じ1ドルの売上から受け取る円が増えます。為替の動きは、誰にとっても得、誰にとっても損というものではありません。立場によって、うれしい向きが逆になります。

値段を決めているのは市場の売り買い

日本銀行の説明では、変動相場制の為替相場は誰かが一方的に決めるものではありません。市場の需要と供給のバランスで決まります。品物の値段と同じ考え方です。ドルを買いたい人が売りたい人より多ければ、ドルは高くなります。

売り買いを生むのは輸入企業の支払い、輸出企業の受け取り、海外への投資などです。株式と違って1か所の取引所はなく、銀行同士が電話や電子取引で直接やり取りします。東京の取引が細っても、ロンドンやニューヨークへ売買の中心が移ります。だから平日はほぼ24時間、相場が動き続けます。

その規模は、国際決済銀行(BIS)が3年ごとに行う調査で分かります。2025年4月の調査の数字を並べると、次のとおりです。

世界の外国為替取引(2025年4月・1日平均)
項目数字意味
取引の総額9.6兆ドル2022年の7.5兆ドルから28%増
米ドルが関わる取引89.2%ほぼすべての取引の片側がドル
円が関わる取引16.8%2022年からほぼ横ばい
スポット取引3兆ドル(31%)ニュースの「1ドル何円」はこの種類の相場
英・米・シンガポール・香港75%この4か所の拠点で売買の大半を扱う

割合の合計が100%を超えるのは、1つの取引に2つの通貨が関わるからです。ドルと円を交換すれば、ドルの取引にも円の取引にも数えられます。銀行や機関投資家のこうした売り買いが積み重なって、1ドル何円という数字ができあがります。

よくある誤解

「円高」は数字が大きくなることという覚え違いは、とても多いものです。実際は逆で、1ドル150円から140円へ数字が小さくなるのが円高です。「1ドルを手に入れるのに必要な円が減った」と言い換えると、向きを取り違えにくくなります。

次に多いのが、相場は政府が決めているという誤解です。日本政府が売り買いに加わる「為替介入」はあります。ただし日本銀行の解説によると、介入は財務大臣の権限で行い、日本銀行が代理人として実務を担います。目的は、相場の急な変動を抑えて安定させることです。1ドル何円にするかを決めて固定するものではありません。

3つ目は、円安は悪いこと、円高は良いことという見方です。先に書いたとおり、輸入に頼る家計や企業には円安がつらく、輸出する企業には円安が追い風になります。海外旅行に行く人には円高がありがたく、日本を訪れる旅行者には円安がありがたい。どちらが良いかは、誰の立場で見るかで変わります。ニュースが「円安で困る人」を取り上げる日もあれば、「円安で利益が増えた企業」を取り上げる日もあるのはこのためです。

1ドル360円の時代から変動相場制へ

相場が毎日動く今の仕組みは、戦後の日本では最初からあったものではありません。1949年、連合国軍総司令部(GHQ)の指令で1ドル360円の為替レートが決まりました。以後20年あまり、円とドルの交換比率は固定されていました。

転機は1971年です。アメリカのニクソン大統領が、ドルと金を決まった比率で交換するのをやめると発表しました。同じ年の12月には、1ドル308円の新しい固定レート(スミソニアンレート)が決まります。それも長くは続かず、1973年2月に日本は完全な変動相場制へ移りました。

その後も大きな波がありました。1985年には、日米欧の5か国がドル高を正すことで一致したプラザ合意をきっかけに、急速に円高が進みます。2011年には、海外市場で1ドル75円32銭と、円の最高値を付けました。360円の時代と比べると、同じ1ドルを手に入れるのに必要な円は5分の1あまりまで減ったことになります。

身近な例:両替の数字がニュースと違う

ニュースで報じられる「本日の円相場」は、銀行同士が大口で取引するインターバンク相場です。私たちが銀行で外貨を買うときに使うのは、それとは別の「対顧客相場」です。日本銀行も、2つの相場は異なると説明しています。

対顧客相場には、3つの数字があります。銀行がその日の基準として決める仲値(TTM)、客が外貨を買うときのTTS、客が外貨を売るときのTTBです。三井住友銀行の解説では、仲値は営業日の午前10時ごろに決まり、原則としてその日1日使われます。

三菱UFJ銀行の解説によると、米ドルの場合、窓口では片道1円の手数料がレートに含まれます。仲値が150円なら、ドルを買うときは151円、円に戻すときは149円です。インターネットで取引すると、片道の手数料は25銭まで下がります。

数字で確かめてみます。仲値150円の日に10万円をドルに替えると、151円で計算されて約662ドルです。相場が動かないまま円に戻すと、149円で計算されて約9万8,700円になります。往復で約1,300円が手数料として差し引かれる計算です。旅行の前に両替の方法ごとの手数料を比べておくと、この差を小さくできます。

為替の数字が、金利や景気、国の貿易とどう結びついて動くのか。そこまで追うと話はかなり長くなります。ニュースの円相場を自分で読み解きたい人は、為替だけを扱った入門書を1冊通して読むと見通しがよくなります。

よくある疑問

土日も為替相場は動いていますか?
主要な市場が休む土日は、ほとんど動きません。平日は東京からロンドン、ニューヨークへと取引の中心が移り、ほぼ24時間動いています。銀行の窓口の相場は、平日の仲値をもとに決まります。
空港でも街の銀行でも、レートは同じですか?
同じとは限りません。仲値も手数料も、金融機関がそれぞれ決めています。同じ日の同じ米ドルでも、店や取引の方法で受け取る金額が変わります。

まとめ

為替相場は、通貨と通貨の交換比率です。1日9.6兆ドルにのぼる世界中の売り買いで決まり、政府が数字を決めているわけではありません。1949年の1ドル360円から1973年の変動相場制へ、仕組みも大きく変わってきました。

次にニュースで「1ドル何円」と聞いたら、それが銀行同士の相場で、窓口では手数料の分だけ数字がずれることを思い出してください。外貨を買う予定があるなら、まず利用する銀行のTTSと仲値の差を確かめてみると、手数料の大きさが分かります。

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