1円玉は作るのに1円以上かかる?お金の裏話
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「1円玉は作るのに1円以上かかる」という話に、公式の答えはありません。造幣局が貨幣の製造原価を公表していないからです。世の中に出回る「1枚2円」「3円」といった数字は、どれも推計です。
それでも、公開されている数字をたどると、1円玉の置かれた状況はかなり見えてきます。重さは1グラムで、出回っている数は364億枚。作る枚数は最盛期の約5000分の1まで減り、2026年度には1億枚を超える量産が戻ってきました。この記事では、1円玉を数字で順に見ていきます。
1円玉を数字で見ると
まず、公開されている基本の数字を並べます。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 素材 | アルミニウム |
| 直径・重さ | 20ミリ・1グラム |
| 流通の始まり | 1955年(昭和30年) |
| 図案の応募数 | 2500点あまり(公募) |
| 世の中にある枚数 | 約364億枚(2024年12月) |
| 汚れや摩耗が目立つまで | およそ30年 |
「1円」という硬貨の始まりは、造幣局が創業した1871年(明治4年)です。最初の1円は金貨で、直径13.51ミリ、重さ1.67グラム。金を1.5グラム含み、江戸時代の1両と同じ値打ちとされました。いまの1円玉と比べると、直径は3分の2ほどなのに、重さは1.67倍あります。
いまのアルミニウムの1円玉は、1955年に流通が始まりました。表の図案は公募で決まり、2500点を超える応募から選ばれています。描かれた木について、造幣局は「具体的な木の名前はありません」とし、「若木」と呼んでいます。
枚数の多さは、硬貨の中で群を抜いています。日本銀行の統計をまとめた野村證券の解説によると、2024年12月時点で流通していた1円玉は364億枚です。2位の10円玉は187億枚なので、2倍近い差があります。1枚1グラムですから、全部まとめると3万6400トンになります。
硬貨は長持ちします。造幣局は、貨幣は傷んで回収されない限り「半永久的に」使われ続け、30年ほどで摩耗や汚れが目立つようになると説明しています。極端にすり減った硬貨は日本銀行から造幣局へ戻され、溶かされて、また貨幣の材料になります。
作るのに、いくらかかるのか
造幣局の「貨幣Q&A」は、製造原価を公表しない理由を2つ挙げています。国民の貨幣への信任を保つため、そして偽造を助長するおそれがあるためです。「1円以上かかる」という話は、国が認めた数字ではありません。
材料費だけなら、計算で見当がつきます。1円玉は1枚1グラムなので、地金1キログラムで1000枚分です。アルミ地金の値段が1キログラム1000円を超えない限り、材料の重さの分だけで1円に届くことはありません。
材料の値段が硬貨の運命を変えた例もあります。戦後の1948年には黄銅(真ちゅう)の1円玉が作られましたが、材料の値上がりで1950年に製造中止となりました。軽くて安いアルミニウムに替わったのは、その5年後です。
アルミニウムの1円玉で費用がかさむのは、材料より加工の手間です。造幣局の説明では、硬貨は次の順に作られます。
- 材料を電気炉で溶かし、鋳塊(インゴット)にする
- 熱いうちに延ばし、常温でさらに延ばして、硬貨の厚さの板にする
- 板を硬貨の形に打ち抜く(造幣局は「円形」と呼ぶ)
- 模様を出しやすくするため、周りに縁をつける
- 表と裏の模様を同時に打ち付け、キズのある物を除く
- 厳重に数えて、袋に詰める
炉や圧延機などの設備、検査や運搬にかかる費用は、作る枚数が少なくても大きくは減りません。製造枚数が減るほど、1枚あたりの負担は重くなります。1円玉は、まさにその状態が10年続きました。
製造枚数は、最盛期の約5000分の1に
造幣局が公表している「年銘別貨幣製造枚数」を見ると、1円玉の作られ方は大きく波打っています。年銘とは、硬貨に刻まれた年号のことです。
| 年 | 1円玉の製造枚数 | できごと |
|---|---|---|
| 1989年(平成元年) | 23億6697万枚 | 消費税3%が始まる |
| 1990年(平成2年) | 27億6895万枚 | 過去最多 |
| 2013年(平成25年) | 55万4000枚 | 最盛期の約5000分の1 |
| 2014年(平成26年) | 1億2401万枚 | 消費税が8%に |
| 2015年(平成27年) | 8200万枚 | 大量に作った最後の年 |
| 2025年(令和7年) | 59万5000枚 | 少量の製造が続く |
| 2026年度(計画) | 1億3200万枚 | 量産が戻る |
最多は1990年の27億6895万3000枚です。造幣局の学芸員は、消費税の導入とバブル景気が重なった時期だったと書いています。端数の1円が必要になる場面が、一気に増えたわけです。
その後は、電子マネーの広がりなどで製造が細りました。2013年は55万4000枚で、1990年の約5000分の1です。消費税が8%に上がった2014年には1億枚台に戻りましたが、2016年以降は、毎年44万〜85万枚ほどにとどまっています。2025年の59万5000枚は、同じ年の100円玉(1億407万枚)の約175分の1です。
2026年度、11年ぶりの量産
流れが変わったのは2026年度です。財務省の「令和8年度貨幣製造計画」では、1円玉の製造枚数が当初の2000万枚から、5月25日の改定で1億3200万枚に増えました。6倍以上の積み増しで、9月11日の改定でもこの枚数は変わっていません。
年銘でみて、1円玉が1000万枚を超えて作られたのは2015年が最後です。計画どおりに進めば、11年ぶりの量産になります。改定の文書には枚数だけが載っていて、増やした理由は書かれていません。
硬貨は30年ほど使われると傷みが目立ち、すり減った物は回収されて溶かされます。1990年前後に大量に作られた1円玉は、ちょうどその年数にさしかかっています。一方で、消費税のある買い物では、1円単位の端数が今も出ます。現金で払う人がいる限り、1円玉の出番はなくなりません。
自分の財布の1円玉が、どの年にどれだけ作られたのか。年号ごとの発行枚数は、硬貨のカタログで調べられます。製造枚数の少ない年の1円玉も、カタログを見ると見分けがつきます。
よくある疑問
- 1円玉は、何枚まで支払いに使えますか?
- 法律上、相手が受け取りを断れないのは20枚までです。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第7条は、貨幣は額面価格の20倍までに限って法貨として通用すると定めています。1円玉なら20枚、20円分です。21枚以上を出された店は断ることができます。もちろん、店が承知すれば21枚以上でも払えます。
- 貯まった1円玉は、銀行に預けられますか?
- 預けられますが、手数料に注意が必要です。ゆうちょ銀行のATMで硬貨を預ける料金は、1〜25枚で110円です。26〜50枚なら220円、51〜100枚なら330円かかります。預ける金額が料金以下だと、ATMでは取り扱えません。1円玉100枚(100円)は330円の料金を下回るので、ATMには入れられない計算です。少しずつ買い物で使うのが、いちばん損のない使い道です。
まとめ
1円玉を作るのに1円以上かかるかどうかは、造幣局が原価を公表していないため、誰にも確かめられません。確かなのは数字のほうです。364億枚が出回り、製造は1990年の27億枚から年50万枚台まで減り、2026年度に1億3200万枚の量産が計画されました。
これから手にする1円玉は、裏の年号を見てみてください。「令和8年」と刻まれた1枚は、11年ぶりの量産で生まれた硬貨です。
参考にした資料