雑学

1円玉は作るのに1円以上かかる?お金の裏話

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
1円玉は作るのに1円以上かかる?お金の裏話

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「1円玉は作るのに1円以上かかる」という話に、公式の答えはありません。造幣局が貨幣の製造原価を公表していないからです。世の中に出回る「1枚2円」「3円」といった数字は、どれも推計です。

それでも、公開されている数字をたどると、1円玉の置かれた状況はかなり見えてきます。重さは1グラムで、出回っている数は364億枚。作る枚数は最盛期の約5000分の1まで減り、2026年度には1億枚を超える量産が戻ってきました。この記事では、1円玉を数字で順に見ていきます。

1円玉を数字で見ると

まず、公開されている基本の数字を並べます。

1円玉の基本の数字(造幣局・日本銀行の資料などをもとに作成)
項目数字
素材アルミニウム
直径・重さ20ミリ・1グラム
流通の始まり1955年(昭和30年)
図案の応募数2500点あまり(公募)
世の中にある枚数約364億枚(2024年12月)
汚れや摩耗が目立つまでおよそ30年

「1円」という硬貨の始まりは、造幣局が創業した1871年(明治4年)です。最初の1円は金貨で、直径13.51ミリ、重さ1.67グラム。金を1.5グラム含み、江戸時代の1両と同じ値打ちとされました。いまの1円玉と比べると、直径は3分の2ほどなのに、重さは1.67倍あります。

いまのアルミニウムの1円玉は、1955年に流通が始まりました。表の図案は公募で決まり、2500点を超える応募から選ばれています。描かれた木について、造幣局は「具体的な木の名前はありません」とし、「若木」と呼んでいます。

枚数の多さは、硬貨の中で群を抜いています。日本銀行の統計をまとめた野村證券の解説によると、2024年12月時点で流通していた1円玉は364億枚です。2位の10円玉は187億枚なので、2倍近い差があります。1枚1グラムですから、全部まとめると3万6400トンになります。

硬貨は長持ちします。造幣局は、貨幣は傷んで回収されない限り「半永久的に」使われ続け、30年ほどで摩耗や汚れが目立つようになると説明しています。極端にすり減った硬貨は日本銀行から造幣局へ戻され、溶かされて、また貨幣の材料になります。

作るのに、いくらかかるのか

造幣局の「貨幣Q&A」は、製造原価を公表しない理由を2つ挙げています。国民の貨幣への信任を保つため、そして偽造を助長するおそれがあるためです。「1円以上かかる」という話は、国が認めた数字ではありません。

材料費だけなら、計算で見当がつきます。1円玉は1枚1グラムなので、地金1キログラムで1000枚分です。アルミ地金の値段が1キログラム1000円を超えない限り、材料の重さの分だけで1円に届くことはありません。

材料の値段が硬貨の運命を変えた例もあります。戦後の1948年には黄銅(真ちゅう)の1円玉が作られましたが、材料の値上がりで1950年に製造中止となりました。軽くて安いアルミニウムに替わったのは、その5年後です。

アルミニウムの1円玉で費用がかさむのは、材料より加工の手間です。造幣局の説明では、硬貨は次の順に作られます。

  1. 材料を電気炉で溶かし、鋳塊(インゴット)にする
  2. 熱いうちに延ばし、常温でさらに延ばして、硬貨の厚さの板にする
  3. 板を硬貨の形に打ち抜く(造幣局は「円形」と呼ぶ)
  4. 模様を出しやすくするため、周りに縁をつける
  5. 表と裏の模様を同時に打ち付け、キズのある物を除く
  6. 厳重に数えて、袋に詰める

炉や圧延機などの設備、検査や運搬にかかる費用は、作る枚数が少なくても大きくは減りません。製造枚数が減るほど、1枚あたりの負担は重くなります。1円玉は、まさにその状態が10年続きました。

製造枚数は、最盛期の約5000分の1に

造幣局が公表している「年銘別貨幣製造枚数」を見ると、1円玉の作られ方は大きく波打っています。年銘とは、硬貨に刻まれた年号のことです。

1円玉の製造枚数(造幣局「年銘別貨幣製造枚数」・財務省「令和8年度貨幣製造計画」をもとに作成)
年1円玉の製造枚数できごと
1989年(平成元年)23億6697万枚消費税3%が始まる
1990年(平成2年)27億6895万枚過去最多
2013年(平成25年)55万4000枚最盛期の約5000分の1
2014年(平成26年)1億2401万枚消費税が8%に
2015年(平成27年)8200万枚大量に作った最後の年
2025年(令和7年)59万5000枚少量の製造が続く
2026年度(計画)1億3200万枚量産が戻る

最多は1990年の27億6895万3000枚です。造幣局の学芸員は、消費税の導入とバブル景気が重なった時期だったと書いています。端数の1円が必要になる場面が、一気に増えたわけです。

その後は、電子マネーの広がりなどで製造が細りました。2013年は55万4000枚で、1990年の約5000分の1です。消費税が8%に上がった2014年には1億枚台に戻りましたが、2016年以降は、毎年44万〜85万枚ほどにとどまっています。2025年の59万5000枚は、同じ年の100円玉(1億407万枚)の約175分の1です。

2026年度、11年ぶりの量産

流れが変わったのは2026年度です。財務省の「令和8年度貨幣製造計画」では、1円玉の製造枚数が当初の2000万枚から、5月25日の改定で1億3200万枚に増えました。6倍以上の積み増しで、9月11日の改定でもこの枚数は変わっていません。

年銘でみて、1円玉が1000万枚を超えて作られたのは2015年が最後です。計画どおりに進めば、11年ぶりの量産になります。改定の文書には枚数だけが載っていて、増やした理由は書かれていません。

硬貨は30年ほど使われると傷みが目立ち、すり減った物は回収されて溶かされます。1990年前後に大量に作られた1円玉は、ちょうどその年数にさしかかっています。一方で、消費税のある買い物では、1円単位の端数が今も出ます。現金で払う人がいる限り、1円玉の出番はなくなりません。

自分の財布の1円玉が、どの年にどれだけ作られたのか。年号ごとの発行枚数は、硬貨のカタログで調べられます。製造枚数の少ない年の1円玉も、カタログを見ると見分けがつきます。

よくある疑問

1円玉は、何枚まで支払いに使えますか?
法律上、相手が受け取りを断れないのは20枚までです。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第7条は、貨幣は額面価格の20倍までに限って法貨として通用すると定めています。1円玉なら20枚、20円分です。21枚以上を出された店は断ることができます。もちろん、店が承知すれば21枚以上でも払えます。
貯まった1円玉は、銀行に預けられますか?
預けられますが、手数料に注意が必要です。ゆうちょ銀行のATMで硬貨を預ける料金は、1〜25枚で110円です。26〜50枚なら220円、51〜100枚なら330円かかります。預ける金額が料金以下だと、ATMでは取り扱えません。1円玉100枚(100円)は330円の料金を下回るので、ATMには入れられない計算です。少しずつ買い物で使うのが、いちばん損のない使い道です。

まとめ

1円玉を作るのに1円以上かかるかどうかは、造幣局が原価を公表していないため、誰にも確かめられません。確かなのは数字のほうです。364億枚が出回り、製造は1990年の27億枚から年50万枚台まで減り、2026年度に1億3200万枚の量産が計画されました。

これから手にする1円玉は、裏の年号を見てみてください。「令和8年」と刻まれた1枚は、11年ぶりの量産で生まれた硬貨です。

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