雑学

世界一高いビルでは日の入りの時刻がずれる?ブルジュ・ハリファ

2026年7月公開 · 2026年10月更新 · 読了7分
世界一高いビルでは日の入りの時刻がずれる?ブルジュ・ハリファ

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同じ建物の中で、日の入りの時刻が変わります。舞台はドバイに立つ高さ828メートルのビル、ブルジュ・ハリファです。上の階ほど地平線が遠くなり、太陽が沈むのが遅く見えるからです。

このずれは、2011年に断食月の食事の時刻を決める公式の見解にまでなりました。80階より上は2分、150階より上は3分、日没後の食事を遅らせます。この記事では、読者が抱きそうな疑問を順に解いていきます。

ブルジュ・ハリファは、どれくらい高いの?

ブルジュ・ハリファは、アラブ首長国連邦のドバイに立つ超高層ビルです。建築としての高さは828メートルで、先端までは829.8メートルあります。ギネス世界記録が「世界一高い建物」として登録しています。

階の数は163です。いちばん上の154階は高さ585メートルにあり、その上の155〜163階は通信や設備のための空間です。東京スカイツリー(634メートル)より、200メートル近く高い計算になります。

設計はアメリカの建築設計事務所スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル(SOM)で、主任建築家はエイドリアン・スミスです。開発はドバイのエマール・プロパティーズが手がけ、建設費は約15億ドルでした。開業は2010年1月4日で、それまでは「ブルジュ・ドバイ」と呼ばれていました。開業式で、アラブ首長国連邦の大統領ハリファ・ビン・ザーイドにちなんだ今の名前に改められています。

どうやって、そんな高さまで建てたの?

工事が本格的に始まったのは2004年で、外装は2009年10月に仕上がりました。使われた材料の量は、次のとおりです。

構造設計の責任者は、SOMのビル・ベイカーです。建物は、中心の芯を3方向の翼が支える「Y字形」の平面です。上へ行くほど27か所で段々に細くなり、この段差の並べ方が、風による揺れを抑えるよう工夫されています。

高い所での工事で難しいのは、材料を上まで運ぶことです。このビルでは、コンクリートを地上から606メートルの高さまでポンプで送り上げました。完成した当時、コンクリートを送り上げた高さの世界記録でした。

エレベーターも記録ずくめです。建物には57基のエレベーターがあり、いちばん速い2階建てのエレベーターは秒速10メートルで上がります。1基のエレベーターが上下する距離は504メートルで、これも完成当時の世界記録です。

上から見ると、地平線はどこまで遠いの?

日の入りがずれる理由は、地球が丸いことにあります。平らな地面に立つ人の目は、地上1.7メートルほどの高さです。この高さからは、約4.7キロ先で地面が丸みの向こうに隠れます。そこが地平線です。

目の高さが上がると、地平線は遠くへ退きます。大気による光の曲がりを考えない場合、地平線までの距離は「3.57×目の高さ(メートル)の平方根」キロで求められます。この式でブルジュ・ハリファの高さを当てはめると、次のようになります。

展望台は3つあります。2010年に開いた124〜125階の「アット・ザ・トップ」(約452メートル)、2014年に開いた148階(約555メートル)、そして2019年に開いた152〜154階のラウンジ(約585メートル)です。148階からなら、地平線は約84キロ先まで遠のきます。

地上の人には地平線の下に隠れた太陽も、上の階からはまだ遠くの地平線の上に見えています。地上で夕日を見送ったあとも、上層階の窓にはしばらく光が残るわけです。

日の入りは、何分ずれるの?

ずれの大きさは、上層階と地上とで2分から3分ほどです。同じ住所に立つ1つの建物の中に、少しずつ違う日没時刻が同居していることになります。

ドバイのイスラム問題・慈善活動局は、このずれを宗教上の時刻に当てはめました。担当者が説明に使ったのは「上の階ほど見わたせる範囲が広く、太陽が沈んで見えなくなるまでに時間がかかる」という理屈です。地平線が遠くなるという、さきほどの仕組みそのものです。

断食の時刻は、どう決められたの?

イスラム教の断食月ラマダンでは、夜明けから日没まで飲食をしません。断食は、日没の礼拝の呼びかけとともに終わります。ところがこのビルでは、階によって日没の見え方が違います。

2011年8月、地元紙ザ・ナショナルは、ドバイの大ムフティー(イスラム法の最高権威者)が出したファトワ(宗教上の公式見解)を伝えました。内容は次のとおりです。

見解を説明した同局のアフマド・アル・ハッダード師は、「どこにいても、実際の日没に注意を払う必要がある」と述べています。飛行機に乗っているときも、飛んでいる地域で実際に太陽が沈んだ時刻に断食を終えるべきだ、としています。

別の地元紙ガルフ・ニュースは、80〜150階が2分、151〜160階が3分と伝えています。境目の階の数え方は記事によって少し違いますが、上ほど長く待つという中身は同じです。

61階に住むある住人は、高さで時刻が変わることに驚いたと話しています。ただし80階より下なので、断食を終える時刻は街のほかの人と同じでした。

朝の時刻も、ずれるの?

ずれます。高い所ほど、朝日も早く見えるからです。ファトワは夕方とは逆に、81〜150階では夜明けの礼拝を2分早め、150階より上では3分早めると定めました。夜の礼拝は、夕方と同じように2分または3分遅らせます。

夜明け前の食事も、同じ考え方で早めに切り上げます。断食は、夜明けから始まるからです。つまり上層階の住人は、朝に2〜3分早く断食を始め、夕方に2〜3分遅く終えます。1日の断食が、両側から数分ずつ長くなる計算です。

上と下で、ほかに違うことはあるの?

気温も違います。ブルジュ・ハリファのてっぺんは、地上より約6℃低いと考えられています。高い所ほど気温が下がるのは、山に登ると涼しくなるのと同じ理由です。

日の入りが遅く見える現象も、ビルに限りません。山の頂上や飛行機の窓から見る夕日が、ふもとより長く残るのも同じ仕組みです。違うのは、ブルジュ・ハリファならエレベーターで上下するだけで、その差を体験できる点にあります。

超高層ビルを支える構造や、高い所で起きる風・火災・避難の問題は、物語で読むと身近に感じられる話です。超高層ビルの仕組みを楽しく知りたいなら、科学漫画が入り口になります。

まとめ

ブルジュ・ハリファは高さ828メートル、163階建ての世界一高い建物です。地上で約4.7キロ先にある地平線は、展望台の高さで約76キロ先まで遠のきます。そのため上の階ほど太陽が遅く沈みます。ドバイでは80階より上で2分、150階より上で3分、断食を終える時刻を遅らせています。

高さは景色だけでなく、1日の時刻表も書き換えました。夕日を長く見たい日は、いつもより少し高い所へ登ってみてください。

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