夜になるとなぜ眠くなる?体内時計と光の関係
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夜に眠くなるのは、疲れがたまったからだけではありません。脳の奥にある体内時計が、目から入る光をもとに「夜が来た」と判断し、松果体にメラトニンというホルモンを出させているからです。
体内時計の1日は、平均すると24時間より10分ほど長く、毎日光で合わせ直されています。この記事では仕組みを押さえたうえで、自分の体内時計と部屋の明るさを家で確かめる方法を紹介します。
眠気をつくる2つの仕組み
夜の眠気には、性質の違う2つの仕組みがかかわっています。1982年、睡眠研究者のアレクサンダー・ボルベイは、この2つを組み合わせた「二過程モデル」を発表しました。
- 体内時計:時刻に合わせて、眠りやすい時間帯と起きやすい時間帯を周期的に作る
- たまる眠気:起きている時間が長くなるほど高まり、眠ると下がる
体内時計の本体は、脳の視交叉上核と呼ばれる神経細胞の集まりです。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、細胞の中にある時計遺伝子の働きで約24時間周期の神経活動が生まれ、その指令で体のリズムが作られます。睡眠だけでなく、体温や血圧、多くのホルモンの分泌にも約24時間のリズムがあります。
米国立衛生研究所(NIH)の一部門NIGMSは、体のほぼすべての組織や臓器に固有のリズムがあると説明しています。2017年のノーベル生理学・医学賞は、ショウジョウバエを使って時計の仕組みを解き明かした3人に贈られました。ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤングです。
体内時計の1日は、24時間10分
1999年、米ハーバード大学のチャールズ・ツァイスラーらは、光の条件を厳しく管理した実験で人の体内時計の周期を測りました。若い人でも年配の人でも、平均は24.18時間。24時間より約11分長い値でした。
この研究の前は、人の体内時計は約25時間と考えられていました。体の動きのリズムで測ると13〜65時間とばらつき、中央値は25.2時間とされていたのです。ツァイスラーらは、それまでの実験では部屋の光が強すぎて、測った周期が光の影響を受けていたと指摘しています。
周期には個人差があります。e-ヘルスネットによると、24時間より短い人から24時間30分以上の人までいます。周期が長い人ほど夜型、短い人ほど朝型の傾向が強いことも分かっています。洞窟のような、時刻の手がかりがない場所で暮らしても、睡眠のリズムは約24時間の周期で現れます。ただし周期は24時間丁度ではありません。時刻合わせをしなければ寝起きの時刻は毎日少しずつずれていきます。
時計を合わせるのは、目にある光のセンサー
時刻合わせの合図は光です。網膜には、ものの形を見る細胞とは別に、明るさを測る神経節細胞(ipRGC)があります。この細胞が持つメラノプシンという色素は、2013年の研究で479ナノメートル付近の青い光に最も強く反応すると報告されました。
e-ヘルスネットのメラトニンの解説によると、昼は数万〜十数万ルクスの太陽光でメラトニンの分泌が大きく下がります。夜でも、家庭照明の数百〜1,000ルクス程度の光で分泌が抑えられる場合があります。抑えられ方には個人差があります。光でメラトニンが抑えられる現象が人で初めて確かめられたのは1980年で、このときの明るさは2,500ルクスでした。
光を浴びる時刻によって、時計が動く向きも変わります。e-ヘルスネットは、深夜0時ごろに寝て朝7時ごろに起きる人の例を挙げています。明け方から昼にかけての光では時計が朝型の向きに、夕方過ぎから深夜の光では夜型の向きにずれる、という説明です。
ルクスは明るさ(照度)の単位です。身の回りの明るさは、桁が大きく違います。
| 場所・光 | 照度 |
|---|---|
| 晴天の真昼の太陽光 | 約10万ルクス |
| 曇天の真昼の太陽光 | 約3万ルクス |
| 明るいオフィス | 約400ルクス |
| 学校の教室(基準) | 300ルクス以上 |
| 夜の街灯の真下 | 10〜100ルクス |
| 月の光 | 平均約0.2ルクス |
曇りの日の屋外でも、明るいオフィスの約75倍あります。室内の照明は明るく感じても、屋外の光と比べると桁が2つほど小さいのです。
家で確かめる3つの方法
体内時計そのものは測れませんが、そのリズムが表に出たものは家でも記録できます。病気の有無を判断するものではなく、自分のリズムを知るための観察です。
- 寝た時刻と起きた時刻を2週間記録する:平日と休日を分けて、紙やスマートフォンのメモに残します。休日に目覚ましなしで起きた時刻は、自分の時計の傾きを知る手掛かりになります。
- 眠気が来た時刻を書き添える:「あくびが出た」「目が重くなった」と感じた時刻をメモします。起きてから何時間後だったかも並べると、時刻による眠気と、たまる眠気の両方が見えてきます。
- 部屋の明るさを測る:照度計を目の高さに置き、時刻ごとに数字を記録します。窓辺と部屋の中央、寝る前の机の上、曇りの日の屋外。この4か所を比べると、上の表の桁の違いを自分の家で確かめられます。
測るときは、照度計の受光部を顔と同じ向きに向けます。目に入る光に近い数字を取るためです。数日分を並べると、自分が昼にどれくらいの明るさの中で過ごし、夜に何ルクスの部屋にいるのかが数字で分かります。
記録に使える道具
3つ目の「明るさを測る」には、照度計が要ります。スマートフォンのアプリもありますが、10万ルクス近い屋外まで同じ道具で比べるなら、測定範囲の広い専用の照度計が便利です。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。
照度計:サンワサプライ デジタル照度計 CHE-LT1 約5,180円。0〜20万ルクスを測れ、精度は1万ルクス未満で±3%です。温度も表示し、最大値・最小値を記録できます。電源は単4乾電池3本です。
向いている人:室内から晴れた日の屋外まで、同じ道具で比べたい人。注意:この出品は箱に傷や汚れがある新品の扱いです。数字は光の当たる向きで大きく変わるので、毎回同じ向き・同じ高さで測ります。
よくある疑問
- 時差ボケが、東向きの旅で重くなりやすい理由は?
- 体内時計は、後ろへずらすより前へずらすほうが難しいからです。e-ヘルスネットは、西行きより東行きのフライトで時差の症状が強いのが一般的だと説明しています。日本から東へ飛ぶと、現地の朝は体内時計にとってまだ夜中です。早く寝て早く起きる向き、つまり時計を前に進める調整が必要になります。
- 体内時計の乱れが続くと、どうなりますか?
- NIGMSは、長く続く睡眠不足や繰り返す体内時計のずれが、いくつかの慢性的な病気のリスクを高めうると説明しています。e-ヘルスネットは、体内時計の調節がうまくいかず寝起きの時刻が大きくずれる状態を「概日リズム睡眠・覚醒障害」と呼んでいます。治療には専門知識が要るとして、睡眠の専門医への相談を案内しています。
まとめ
夜の眠気は、光で時刻を合わせる体内時計と、起きている間にたまる眠気の2つで作られます。体内時計の1日は平均24時間10分ほどで、目にあるメラノプシンの細胞が光を測り、毎日合わせ直しています。昼の屋外は数万ルクス、夜の室内は数百ルクスと、明るさの桁は大きく違います。
まずは2週間、寝た時刻・起きた時刻・眠くなった時刻をメモしてみてください。照度計があれば、同じ日に部屋と屋外の明るさも測っておくと、自分の時計と光の関係が数字で見えてきます。
参考にした資料
- 米国立衛生研究所 NIGMS — Circadian Rhythms(概日リズム)
- PubMed — Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker(Science, 1999)
- PMC — Human melanopsin forms a pigment maximally sensitive to blue light(λmax ≈ 479 nm)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット — 概日リズム睡眠・覚醒障害
- 厚生労働省 e-ヘルスネット — メラトニン
- PubMed — A two process model of sleep regulation(Borbély, 1982)
- 日本時間生物学会 時間生物学 — 光とヒトのメラトニン抑制(樋口重和, 2008)
- Wikipedia(日本語版) — ルクス