静電気はなぜ起きる?冬のパチッの正体
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冬のパチッは、体にたまった電気が、金属に触れた瞬間に一気に流れることで起きます。冬に多いのは、乾いた空気では電気の逃げ道が減り、体にたまり続けるからです。
電気の溜まりやすさは、部屋の湿度と靴底でかなり変わります。この記事では仕組みを押さえたうえで、家で確かめる方法と痛くない逃がし方を紹介します。
パチッの正体は、一気に流れる電気
物と物が触れ合うと、その表面で電気の粒が片方からもう片方へ移ります。服を着て歩く、椅子から立ち上がる。こうした動作のたびに、体には少しずつ電気がたまっていきます。
なぜ触れたり擦れたりすると電気が動くのか。この理由は、長いあいだはっきりしていませんでした。2019年、アメリカのノースウェスタン大学の研究チームが、物理学の専門誌に1つの答えを発表しています。どんなに滑らかに見える表面も、ごく細かい目盛りで見れば小さな突起だらけです。こすれ合うと突起が曲がり、曲がったところに電圧が生まれる。それが静電気のもとになる、という説明です。
たまる電気の量も、思ったより大きいものです。大阪産業技術研究所の解説によると、人の体は電気的には60〜100ピコファラドの「コンデンサー」のようなものです。体の電圧が3キロボルトを超えると、放電のショックを感じるといわれています。
労働安全衛生総合研究所によると、ショックの正体は、100万分の1秒ほどの間に数ミリアンペアの電流が体を通ることです。反対に、0.1ミリアンペア以下でゆっくり流せば、同じ電気でもショックは感じません。痛みを決めるのは、電気の量よりも流れる速さです。金属は電気をよく通すので、指が近づいた瞬間にまとめて流れます。
冬に起きやすいのは、電気の逃げ道が減るから
電気が生まれる仕組みは、夏も冬も同じです。違うのは、たまった電気がどれだけ逃げていくかです。
大阪産業技術研究所は、和紙に電気をためて、湿度ごとに減っていく速さを測りました。湿度が下がると、和紙の電気抵抗は急に大きくなります。計算では、抵抗が109オームなら約0.5秒で電気がほぼ消えます。1010オームでは約5秒、1011オームでは約50秒かかります。乾いた冬は、電気がこの「逃げにくい」側に寄るわけです。
人の体でも同じことが起きます。同研究所の別の解説には、カーペットの上を歩いたときの体の電圧が載っています。湿度が下がるほど電圧は急に大きくなり、湿度20%では10キロボルトを超える場合もありました。ショックを感じる目安の3キロボルトを、3倍以上も上回る値です。
家で確かめる3つの方法
静電気は目に見えませんが、たまりやすさは家でも確かめられます。次の3つは、特別な道具がなくても試せる方法です。
- 湿度を記録する:部屋に湿度計を置き、パチッときた日の湿度をメモします。1〜2週間続けると、自分の家で「パチッとくる湿度」の見当がつきます。
- 靴を替えて比べる:同じ床を同じように歩き、靴だけを替えてドアノブに触れます。靴底の材質で、たまり方がはっきり変わります(下の表)。
- 電気クラゲを浮かせる:大阪市立科学館の研究報告で紹介されている、定番の静電気実験です。手順は下のとおりです。
| 靴底の材質 | 電気抵抗の目安 | ショック |
|---|---|---|
| 天然ゴム・クロロプレンゴム系 | 1012オーム超 | 受けやすい |
| 革 | 約108オーム | 中間 |
| ポリウレタンエステル・ニトリルゴム系 | 106オーム以下 | 受けにくい |
電気クラゲは、ポリエチレンの荷造りひもを使います。
- 荷造りひもを20〜30センチに切り、片方の端を縛って、反対側を細く裂く
- 裂いたひもを、ティッシュペーパーでなでて電気をためる
- 細長い風船(ロングバルーン)を、毛皮やティッシュペーパーでよくこする
- ひもを宙に放り、下から風船を近づける
どちらもマイナスにたまりやすい素材なので、反発し合って、ひもがクラゲのように浮きます。報告者は、湿度が50%を超えると、風船の片側をプラスにためる応用の実験が成功しなかった、と書いています。湿度計を横に置いて、浮き方の違いを比べてみてください。
痛くない逃がし方
やることは1つです。金属に触れる前に、電気をゆっくり通す物を経由させます。労働安全衛生総合研究所は、次の方法を挙げています。
- 革の財布や手袋を持って、金属のドアノブに一瞬触れる
- 革がなければ、コンクリートや木の壁に数秒間触れる
どちらも、体の電気を時間をかけて逃がす工夫です。セルフ式ガソリンスタンドにある静電気除去シートも、ショックなく放電できるように抵抗が調整されています。給油の前には、このシートに触れてから作業します。
靴の効果も大きいものです。同研究所によると、適切な抵抗の靴なら、静電気は0.1秒以内に消えます。冬によく履く靴の底が天然ゴムなら、それが電気をためこむ一因です。革底の靴や下駄も、帯電を防ぐとされています。
対策に使える道具
湿度を確かめる、部屋の湿度を上げる、服の静電気を抑える。3つの役割で1点ずつ選びました。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。
温湿度計:HATUSOKU デジタル温湿度計 約1,000円。手のひらサイズのデジタル表示で、スタンドとマグネットで置き場所を選べます。
向いている人:上の「湿度を記録する」を試したい人。注意:表示の誤差は商品ページで確かめてください。細かい数字より、日ごとの上がり下がりを見るのに向きます。
加湿器:山善 スチーム式加湿器 KKS1-B25E 約4,980円。水を沸かして蒸気を出す方式で、タンクは約2.5L、加湿量は1時間に250mlです。
向いている人:木造で約4畳、プレハブで約7畳までの個室や寝室。向かない人:リビングなど広い部屋を加湿したい人。湿度を上げても静電気がゼロになる訳ではないので、上の逃がし方と組み合わせます。タンクの手入れは加湿器のぬめりの記事を参考にしてください。
衣類用静電気防止スプレー:ライオン エレガード 大サイズ(160ml) 約877円。セーターやスカートにかけて、脱ぐときのパチパチやまつわりつきを抑えるスプレーです。車の布製シートにも使えます。
注意:絹やレーヨン、革など水に弱い物には使えません。着ている服には自分でスプレーします。他人がかけると、まれに静電気の火花で服を焦がすことがあると、商品の注意書きにあります。
よくある疑問
- ウールのセーターをやめれば、ドアノブのパチッは防げますか?
- あまり変わりません。大阪産業技術研究所が歩いたときの体の電圧を測ると、履物が同じなら、下着と靴下だけの場合とウールのセーターを着た場合で大きな差はありませんでした。歩いてたまる電気は、服よりも床と履物で決まります。服の素材が効くのは、脱ぐときのパチパチのほうです。
- 静電気が危険になる場面はありますか?
- ドアノブのパチッで流れる電流は1〜数ミリアンペアで、ごく短い時間なので、人命にかかわる大きさではありません。気をつけたいのは、燃えやすい物の近くです。セルフ式ガソリンスタンドでは、給油の前に静電気除去シートに触れてから作業します。
まとめ
冬のパチッは、体にたまった数キロボルトの電気が、金属へ100万分の1秒ほどで流れる現象です。冬に多いのは乾燥で電気の逃げ道が減るからで、湿度20%では体の電圧が10キロボルトを超えることもあります。
琥珀を毛皮でこすると、ほこりが吸い寄せられる。この観察は約2600年前、古代ギリシャのタレスに遡るといわれます。電気を意味するエレクトリシティも、琥珀を指すギリシャ語エレクトロンから来ています。それほど古くから知られた現象でも、防ぎ方は今も同じ「ゆっくり逃がす」です。まずは今の靴の底を確かめ、ドアノブの前に壁へ手のひらを当ててみてください。
参考にした資料
- 気象庁 — 東京(東京都)平年値(年・月ごとの値)
- 労働安全衛生総合研究所 — 静電気ショック!感じやすい人・感じにくい人
- Northwestern University — Solving the longstanding mystery of how friction leads to static electricity
- 大阪産業技術研究所 — 繊維・高分子材料の帯電性とその評価方法(技術資料 No.98006)
- 大阪産業技術研究所 — バチッと感じる静電気。湿度との関係は?(技術資料 No.10001)
- 大阪市立科学館研究報告 — 正逆電気クラゲについて
- 群馬県産業技術センター — 静電気の耐性試験
- Wikipedia — History of electromagnetic theory(タレスとこはく)