光は1秒で地球7周半?光の速さの話
※この記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。リンク先の楽天市場で購入されると、紹介料が入ることがあります。
光は真空中を1秒間に29万9792.458キロメートル進みます。地球の赤道1周は約4万75キロなので、1秒で7.48周。「1秒で地球7周半」は、ほぼそのとおりの数字です。
しかもこの値は、測って求めたものではなく、1983年に人間が決めた値です。この記事では光の速さを数字で追いながら、300年かけて測り続けた歴史と、物の中で遅くなる理由を見ていきます。
1秒で7.48周、1ナノ秒で30センチ
真空中の光の速さは、秒速29万9792.458キロメートルです。地球の赤道1周(約4万75キロ)で割ると7.48。1周にかかる時間は、約0.13秒です。
逆に、とても短い時間で見てみます。1ナノ秒(10億分の1秒)に光が進むのは、約30センチです。1ギガヘルツで動くパソコンの部品なら、信号は1回のカチッという刻みのあいだに30センチほどしか進めません。GPSの受信機は、衛星からの電波が届くまでの時間で距離を測ります。時間が1ナノ秒ずれると、距離は約30センチずれる計算です。
距離を光の時間で言い換えると、宇宙の大きさも身近な数字になります。
- 月まで:平均38万4400キロ → 約1.28秒
- 太陽まで:約1億5000万キロ → 約8分20秒
- 1光年:光が1年に進む距離 → 約9兆4600億キロ
いま見えている太陽は、8分あまり前の姿です。NASAは光年を、約9兆キロメートル(約6万3000天文単位)と説明しています。
1983年から「測らない数字」になった
光の速さには、測定の誤差がありません。1983年の国際度量衡総会で、1メートルを「光が真空中で2億9979万2458分の1秒間に進む距離」と決めたからです。光の速さを先に決め、そこから1メートルの長さを出す順番になりました。
それまでの1メートルは、物や原子が基準でした。1889年からは白金とイリジウムでできた国際メートル原器、1960年からはクリプトン86という原子が出す光の波長です。
切り替えの直前には、光の速さはすでに非常に精密に測れていました。1972年、米国国立標準局(NBS)の研究者たちは、秒速29万9792.4562キロメートルという値を得ています。誤差は毎秒1.1メートル。値がここまで固まったので、測る対象から、決めてしまう定数に変わったのです。今の国際単位系(SI)も、光の速さを299,792,458という固定の数字にしています。
300年かけて真の値に近づいた
かつて光は、一瞬でどこへでも届くと考えられていました。速さがあることを初めて示したのは、デンマークの天文学者オーレ・レーマーです。
レーマーはパリ天文台で、木星の衛星イオが木星の影に入る時刻を調べていました。1676年9月、11月9日の食が予報より10分遅れると予言します。実際の観測は5時35分45秒で、予報の5時25分45秒より、ちょうど10分遅れました。同じ年の11月21日、レーマーは「光が地球の公転軌道の直径を横切るのに約22分かかる」と報告しています。今の値は約16分40秒なので、だいぶ長めでした。
当時、パリ天文台の台長カッシーニは、光に速さがあるという考えに反対していました。それでもレーマーの報告は1676年12月に学術誌に載り、光の速さが有限だという考えは少しずつ受け入れられていきます。
| 年 | 人物・方法 | 結果 |
|---|---|---|
| 1676年 | レーマー:木星の衛星イオの食 | 公転軌道の直径を約22分で横切る |
| 1729年 | ブラッドリー:星の位置のずれ(光行差) | 太陽から地球まで8分12秒 |
| 1849年 | フィゾー:回る歯車と8キロ先の鏡 | 秒速約31万5000キロ |
| 1862年 | フーコー:回る鏡 | 秒速約29万8000キロ |
| 1926年 | マイケルソン:回る鏡 | 秒速29万9796キロ(誤差4キロ) |
| 1972年 | 米国国立標準局:レーザー | 秒速29万9792.4562キロ(誤差0.0011キロ) |
| 1983年 | 国際度量衡総会 | 秒速29万9792.458キロと定義 |
フィゾーの1849年の実験は、空ではなく地上で測った最初の例です。歯車の歯のすき間を通した光を8キロ先の鏡で跳ね返し、戻ってきた光が次の歯に遮られる回転の速さから、往復の時間を割り出しました。誤差は約5%。1729年のブラッドリーは、地球が動いているために星の位置が最大20.5秒角ずれて見える現象(光行差)から、太陽の光が届く時間を割り出しました。1930年代のマイケルソンらは、長さ1.6キロの真空の管の中で光を10回往復させ、誤差を秒速11キロまで縮めています。こうして100年あまりで、誤差は1億分の1を下回るところまで縮みました。
物の中では遅くなる
「光より速いものはない」の上限は、あくまで真空中の光の速さです。物質の中では、光そのものが遅くなります。どれだけ遅くなるかは屈折率で決まり、真空中の速さを屈折率で割った値が、その物の中での速さです。
| 物質 | 屈折率 | 光の速さ(秒速) |
|---|---|---|
| 空気 | 1.0003 | 約29万9700キロ |
| 水(20℃) | 1.333 | 約22万4900キロ |
| 氷 | 1.31 | 約22万8800キロ |
| ガラス(クラウンガラス) | 1.50〜1.54 | 約19万5000〜20万キロ |
| ダイヤモンド | 2.417 | 約12万4000キロ |
水の中では、真空のおよそ4分の3の速さです。コップの水にストローを差すと折れて見えるのは、水と空気の境目で光の進む向きが変わるからで、その原因がこの速さの違いです。ダイヤモンドでは半分以下まで落ちます。
もっと極端な例もあります。1999年、ハーバード大学のレーネ・ハウらは絶対零度近くまで冷やしたナトリウム原子のガスの中で、光の速さを秒速17メートルまで落としました。時速にすると約61キロで、車と同じくらいの速さです。
真空中の光の速さが、なぜ物の速さの上限になるのか。これはアインシュタインが1905年に発表した特殊相対性理論の柱で、式を追うと納得しやすい話です。高校で習う数学の範囲で理論をたどれる本もあります。
よくある疑問
- 光より速く進めるものは本当にないのですか?
- 物や情報を、真空中の光より速く運ぶことはできません。物は速くなるほど加速しにくくなり、光の速さに届くには無限のエネルギーが必要になるからです。欧州合同原子核研究機関(CERN)の加速器LHCは、1周約27キロのリングで陽子を1秒に1万1245周させます。計算すると秒速約29万9780キロで、光の速さにわずかに届きません。
- 光年は時間の単位ですか?
- 距離の単位です。光が1年間に進む長さを1光年と決めたもので、約9兆4600億キロメートルにあたります。名前に「年」が入るのは、「駅から徒歩10分」と同じように、かかる時間で道のりを言い表しているからです。詳しくは光年の記事で紹介しています。
まとめ
光は真空中を秒速29万9792.458キロメートルで進み、1秒で地球を7.48周します。この値は1983年から定義で決まった数字で、1676年のレーマーの「約22分」から始まり、300年かけて測り続けた末に固定されました。水の中ではおよそ4分の3、ダイヤモンドの中では半分以下まで遅くなります。
次に夕日を見たら、8分あまり前に太陽を出た光だと思い出してください。そして星を見上げたら、その光が何年前に出発したのかを数えてみてください。
参考にした資料
- BIPM(国際度量衡局) — SI base unit: metre
- NASA Science — Cosmic Distances
- Optics & Photonics News — Ole Rømer and the Speed of Light
- Wikipedia — Speed of light(測定の歴史と物質中の速さ)
- Wikipedia — Metre(メートルの定義の移り変わり)
- Wikipedia — List of refractive indices(屈折率の一覧)
- CERN — The Large Hadron Collider
- Carlsberg Foundation — The slowest light in the world(レーネ・ハウの実験)
- NASA Science — Moon Facts
- 日本天文学会 天文学辞典 — 光年