氷はなぜ水に浮く?水の特別な性質
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氷が水に浮くのは、水が凍るときに体積が約9%増えるからです。重さは同じまま体積だけが増えるので、0℃の氷の密度は1立方センチあたり約0.917グラム。同じ温度の水(約0.9998グラム)より軽くなります。
この「凍ると膨らむ」性質は、物質としてはかなり珍しいものです。この記事では、9%・4本・4℃・1割という4つの数字で仕組みを追い、台所で確かめる方法まで紹介します。
9%:凍ると、かさが増える
たいていの物質は、液体から固体になると粒がぎゅっと詰まり、体積が小さくなります。溶かしたロウソクのロウを固めると、真ん中がへこむことがあります。あれは固まるときに縮んだ跡です。固体は自分の液体に沈むのがふつうです。
水は逆です。百科事典の値では、0℃の氷の密度は0.9167〜0.9168グラム。同じ0℃の水は0.9998グラムほどです。1リットルの水を凍らせると、約1.09リットルの氷になる計算です。
| 状態 | 密度 | 同じ重さでの体積 |
|---|---|---|
| 4℃の水(最も重い) | 約1.0000グラム | 1.000 |
| 0℃の水 | 約0.9998グラム | 1.000 |
| 0℃の氷 | 約0.917グラム | 約1.09 |
膨らむ力は小さくありません。冬に水道管が破裂するのは、管の中で凍った水が膨らみ、逃げ場のない圧力が管を内側から押すためです。凍らせた瓶の飲み物が割れるのも同じ理由です。
4本:水分子がつくる、すき間の多い骨組み
水の分子は、酸素1個に水素2個が「へ」の字についた形です。酸素は電子を強く引きつけるので、酸素の側はマイナス、水素の側はプラスに電気が偏ります。この偏りで分子どうしが引き合う弱い結びつきを、水素結合と呼びます。
水の分子1個は、最大で4本の水素結合をつくれます。氷の中では、どの分子も周りの4個と手をつなぎ、正四面体を積み重ねたような向きで並びます。この並び方では、分子の間に六角形のトンネルのようなすき間が空きます。すき間の分だけ、氷は水より場所を取ります。
地球上の氷は、ほぼすべてがこの六角形の結晶です。一方、高い圧力をかけた実験室では、並び方の違う氷が19種類も見つかっています。
液体の水では、分子が動き回って結びつく相手を絶えず取り替えています。骨組みが固定されないので、すき間に分子が入り込み、氷より詰まった状態になります。氷が溶けるときは水素結合の一部が切れて骨組みが崩れ、トンネルが埋まっていきます。
4℃:いちばん重い水が、湖の底を守る
水の密度がいちばん大きくなるのは、凍る直前の0℃ではありません。約4℃(正確には3.98℃)です。アメリカ地質調査所(USGS)の表で、温度ごとの密度を並べると次のようになります。
| 水温 | 密度 |
|---|---|
| 0℃ | 0.99987グラム |
| 4℃ | 1.00000グラム |
| 10℃ | 0.99975グラム |
| 21℃ | 0.99802グラム |
| 100℃ | 0.95865グラム |
液体のままなら、0℃から100℃まで温めても密度は4%ほどしか変わりません。ところが凍った瞬間に、約8%も軽くなります。この落差の大きさが、氷を確実に浮かせています。
冬の湖では、表面で冷やされて4℃になった水が重くなって沈み、底に4℃前後の水がたまります。4℃より冷えた水は軽いので沈めず、表面に残って凍ります。深い湖の底は、1年を通して4℃前後に保たれます。
もし氷が沈む物質だったら、湖は底から凍り上がっていきます。実際には、浮いた氷が蓋になって冷たい外気をさえぎります。その下の水は液体のまま残るので、魚も水草も冬を越せます。
海では事情が少し違います。海水は塩分のせいで、凍る温度が真水より約1.9℃低くなります。密度が最大になる温度も0℃付近まで下がるため、湖のような「底に4℃の水がたまる」層はできにくくなります。
1割:台所で確かめる方法
0.917を0.9998で割ると、約0.917になります。真水に浮かべた氷は、体積の約92%が水の中に沈み、水面から出るのは約8%です。およそ1割弱しか顔を出しません。氷山の一角という言葉どおりです。海水は真水より重いので、海の氷山は少しだけ高く浮き、USGSは水面上を約10%としています。
どれも家にある物で確かめられます。
- 浮き方を見る:透明なコップに水を入れ、氷を1個浮かべます。横から見ると、水面より上に出ている部分はごく一部です。
- 膨らみを見る:製氷皿の水面をすりきりにして凍らせます。凍ったあとは、氷の表面が皿のふちより盛り上がっています。
- 重さを比べる:水を入れた製氷皿をはかりに載せて数字を記録し、凍ったあとにもう一度量ります。かさは増えても、重さはほとんど変わりません。増えたのは分子の数ではなく、分子どうしの間のすき間です。
- あふれるか試す:コップの縁まで水を入れて氷を浮かべ、溶けるまで待ちます。溶けた氷は、水の中に沈んでいた部分とちょうど同じかさの水に戻るので、コップからはあふれません。
家で作った氷の真ん中が白く濁るのにも、理由があります。千葉県企業局の解説によると、水道水は外側から順に凍り、水に溶けていた空気やミネラル分が中央に集められます。最後に凍る中心に、それらが閉じ込められて白く見えます。
市販の氷が透明なのは、濁る部分を取り除きながら時間をかけて凍らせているためです。家でも、凍る向きを一方向にそろえ、時間をかけて凍らせれば、空気の逃げ道ができて透明に近づきます。
確かめるのに使える道具
上の「重さを比べる」と、白い芯のない氷づくりに使える2点です。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。
キッチンスケール:タニタ デジタルクッキングスケール KJ-222 約3,390円。2キロまでを0.1グラム単位で量れるはかりです。
向いている人:製氷皿の水と氷の重さを比べたい人、料理やお菓子作りでも使いたい人。向かない人:2キロを超える物を量りたい人。
透明氷メーカー:ANZZYU アイスボールメーカー(直径7cm・2個取り) 約3,450円。冷凍庫に入れて、直径7センチの丸い氷を2個つくる製氷器です。
向いている人:白い芯のない氷を家でつくって、普通の製氷皿の氷と見比べたい人。注意:販売ページのQ&Aでは、凍るまで約18〜30時間かかり、急速冷凍や扉の開け閉めが多いと白く濁りやすいとされています。一度にたくさんの氷は作れません。
よくある疑問
- 凍ると膨らむのは水だけですか?
- 水だけではありません。金属のガリウムは、液体から固体になると体積が3.10%増えます。ケイ素・ゲルマニウム・ビスマスも、固体のほうが液体より軽い仲間です。ただ、身の回りで毎日見られるのは水くらいです。
- 製氷皿の氷に、角のような突起ができる理由は何ですか?
- アイススパイクと呼ばれる現象です。水面がふちから内側へ凍り、真ん中に小さな穴だけが残ることがあります。その下で水が凍って膨らむと、行き場のない水が穴から押し出され、ふちで凍って筒のように伸びます。不純物が少ない水ほどできやすく、蒸留水で作ると見られることがあります。
まとめ
氷が浮くのは、水分子が4本の水素結合ですき間の多い骨組みをつくり、凍ると体積が約9%増えるからです。水は4℃でいちばん重くなり、その性質と浮く氷が組み合わさって、湖は上だけが凍ります。
次に飲み物に氷を入れたら、水面から出ている部分を横から見てください。見えているのは全体の1割弱です。残りの9割は、いつも水の中にあります。
参考にした資料